2013 Fiscal Year Research-status Report
病原性細菌による水環境汚染の実態解明に資する病原性細菌の網羅的定量解析手法の開発
Project/Area Number |
25630226
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井上 大介 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (70448091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
岩下 正人 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (00137895)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 病原性細菌 / 水環境 / 網羅的定量解析 / DNAマイクロアレイ法 / DNAインターカレーター処理 |
Research Abstract |
本研究では、900種余の病原性細菌(生菌)を一度に定量解析する新規解析手法の開発と、それを活用した水環境の病原性細菌汚染の実態解明を目標とし、①DNAインターカレーター処理を用いた水中の生菌DNA選択的検出法の開発、②DNAマイクロアレイを用いた900種余の病原性細菌の一斉定量解析法の開発、③国内外の水環境における病原性細菌汚染のデータ基盤の整備の3つの研究課題の達成を目指している。 平成25年度は、主に課題①に取り組んだ。Escherichia coli、Pseudomonas putida、Bacillus subtilis subsp. subtilis、Enterococcus faecalis、Rhodococcus equiを対象病原性細菌として選定し、エチジウムモノアザイド(EMA)とプロピジウムモノアザイド(PMA)をDNAインターカレーターとして用いた。添加するEMA/PMAの濃度とEMA/PMA添加後の光照射時間を検討し、EMA/PMAがDNAと強固に結合しPCRを阻害するには15分の光照射が必要であること、また、1μg/mlのEMA/PMAで細菌種によらず死菌の98%以上を排除できることを明らかにした。しかし、決定したDNAインターカレーター処理条件の環境水試料への適用性について検討した結果、一部の菌種では生菌DNAの選択的検出ができず、さらなる検討の必要性が見出された。 また、課題②に関して、文献調査等により、定量のために使用する内部標準プローブ(16S rRNA遺伝子ユニバーサルプローブ)の選定を行うとともに、標的細菌の16S rRNA遺伝子コピー数の一部を明らかにした。また、文献調査により、各標的細菌プローブと内部標準プローブとのハイブリダイゼーション効率の差異を実験的に評価し外挿することが必要であることを明らかにし、その評価にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の主要な検討課題として設定した課題①『DNAインターカレーター処理を用いた水中の生菌DNA選択的検出法の開発』に関して、細胞構造の異なる系統分類学的に多様な病原性細菌の生菌DNA選択的検出に適したDNAインターカレーター処理条件を明らかにすることができた。しかし、その環境水試料への適用において新たな課題が見出されたことから、平成26年度にも課題①を継続することが必要になった。 他方、課題②『DNAマイクロアレイを用いた900種余の病原性細菌の一斉定量解析法の開発』については、平成25年度に予定していた内容を概ね達成することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題①『DNAインターカレーター処理を用いた水中の生菌DNA選択的検出法の開発』において、平成25年度の検討で決定したDNAインターカレーター処理条件の環境水試料への適用性を再評価するため、生菌DNAの選択的検出が困難であった病原性細菌種に対するDNAテンプレート調製法を最適化することが必要であると考えられた。そこで、今後速やかにDNAテンプレート調製法を最適化し、DNAインターカレーター処理条件の有用性の再評価を試みる。その結果でも有用性に問題があることが明らかになった場合には、DNAインターカレーター処理条件の変更を行う。平成25年度の検討で多様な病原性細菌の生菌DNA選択的検出に有効なEMA/PMA濃度の範囲を明らかにしていることから、本条件検討では、その成果に基づき、EMA/PMA濃度を変更する。これらの検討を速やかに進めることにより、課題①の早期達成を目指す。 課題②『DNAマイクロアレイを用いた900種余の病原性細菌の一斉定量解析法の開発』に関しては、各標的細菌の16S rRNA遺伝子コピー数の調査の他、平成25年度の調査で新たに必要性が見出された、標的細菌プローブと内部標準プローブとのハイブリダイゼーション効率の差異の評価を進める。これらにより、当初計画の通り、DNAマイクロアレイ定量解析の結果から環境水試料中の病原性細菌レベルを評価する方法論を確立するとともに、DNAマイクロアレイ解析方法(実験方法)を最適化する。 また、課題①、②が完了し次第、課題③『国内外の水環境における病原性細菌汚染のデータ基盤の整備』に取り組む。平成26年度は、国内(特に相模川水系)でのモニタリング調査を予定している。課題③を円滑に進めるため、課題①、②と並行して、相模川水系の水質や土地利用等の情報収集と予備調査を行い、予め採水地点を決定しておく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多様な病原性細菌の生菌DNA選択的検出に必要なDNAインターカレーター濃度が当初想定していたよりも低いことが明らかになった。そのため、DNAインターカレーター試薬の購入費を当初計画よりも削減することができたため、当該年度の所要額と実支出額に差異が生じた。 平成26年度の研究では、当初予定していた研究内容に加えて、平成25年度に達成できなかったDNAインターカレーター処理法の環境水試料への適用性の検討を継続して行うことを予定しており、その中でDNAテンプレート調製法の最適化を行うことを考えている。そこで、DNAテンプレート調製法の最適化に必要な試薬・器具類の購入に平成25年度の余剰額を充てることにより、平成26年度の請求額と合わせて、平成26年度に予定しているすべての研究内容を遅滞なく進めていく予定である。
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[Presentation] DNA microarray analysis of bacterial pathogens in shallow well groundwater in the Kathmandu Valley, Nepal2013
Author(s)
Kazunari Sei, Takuji Hinoura, Kaori Miyauchi, Saroj K. Chapagain, Hiroaki Matsuzawa, Takashi Nakamura, Yasuhiro Tanaka, Daisuke Inoue, Kei Nishida
Organizer
17th International Symposium on Health-Related Water Microbiology
Place of Presentation
Majestic Palace Hotel (Florianopolis, Brazil)
Year and Date
20130915-20130920
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[Presentation] Comprehensive detection of pathogenic bacteria in shallow groundwater in Kathmandu Valley, Nepal, using DNA microarray2013
Author(s)
Takuji Hinoura, Noriko Suzuki, Junqin Pang, Rabin Malla, Shrestha Malla, Saroj K. Chapagain, Hiroaki Matsuzawa, Yasuhiro Tanaka, Daisuke Inoue, Michihiko Ike, Kei Nishida, Kazunari Sei
Organizer
6th Advanced Engineering Technology for Environment and Energy-Environment, Energy and Sustainable Development
Place of Presentation
大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)
Year and Date
20130804-20130806