2014 Fiscal Year Annual Research Report
素粒子を用いた歴史的組積造建造物の内部構造探査に基づく耐震調査
Project/Area Number |
25630232
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
花里 利一 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60134285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歴史的建造物 / 組積造 / 耐震 / 非破壊調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙線が大気に衝突して発生する素粒子(ミューオン)は、厚い岩盤も透過するが、吸収率が密度に比例する性質をもつ。この性質を利用して、従来、火山の内部構造探査等に素粒子探査技術が適用されてきた。本研究は、この技術が歴史的組積造建造物の非破壊調査に適用できるとともに、その結果を用いて、耐震解析を行うことにより、建造物の耐震性を評価することを目的としたものである。 研究の経過と成果は下記のとおりである。まず、具体的な調査対象として、2006年ジャワ島中部地震で被災したインドネシア・世界遺産プランバナン寺院のうち、最も規模が大きなシヴァ祠堂を選び、2013年10月中旬から約4か月間、祠堂の中央室内部に素粒子検出器を設置して観測を実施した。シヴァ祠堂は20世紀半ばに鉄筋コンクリート技術を導入して再建されたものであるが、正確な設計図書が残っておらず、建物上部の空間構造が不明確なままであったが、素粒子探査によって、隠れていた上部空洞の確からしい寸法がわかった。この結果に基づいて、3次元有限要素法による解析モデルを作成し、2014年度に地盤-構造物系の地震応答解析を行った。解析の結果、2006年ジャワ島中部地震でシヴァ祠堂の内部構造が損傷した可能性は小さいことを明らかにした。この結論は、シヴァ祠堂の今後の保存修理計画上に極めて有用な知見を与えるものであり、インドネシアとの文化遺産国際協力に寄与したと思われる。今後、歴史的組積造建造物の内部構造を調べるための非破壊調査法として、素粒子探査法が有力な方法のひとつになることが期待される。
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