2013 Fiscal Year Research-status Report
分光放射束に基づく建築照明設計法の開発に関する基礎的研究
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25630237
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上谷 芳昭 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00258302)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 昼光 / 分光分布 / 全天空画像 / 分光放射輝度 / 主成分分析 / 波長別相互反射計算 / 演色性 / 色の見え |
Research Abstract |
昼光と人工光の分光分布を一元的に扱う「分光放射束に基づく建築照明設計法」の新開発に必要な以下の要素技術を開発した。 (a)魚眼レンズ付きデジタルカメラによる全天空分光放射輝度分布の測定法の開発: ビデオ測色法を用いて魚眼レンズ付きデジタルカメラによる全天空XYZ三刺激値分布の測定を行い、XYZ三刺激値から分光放射輝度を算出することで、全天空画像の各画素に相当する微小な天空要素毎に分光放射輝度を測定する方法を開発した。先ず、暗室にてキセノンランプと分光放射計により魚眼レンズ付きデジタルカメラを色彩較正し、RGB信号値から三刺激値XYZの絶対値(Y[cd/m2]など)を算出する色彩較正関数を求める。次に、様々な天気や太陽高度の時に、分光放射計を様々な高度・方位に向け、天空の分光放射輝度を測定し、主成分分析を適用して固有ベクトルを求める。さらに、防水対策をした魚眼レンズ付きデジタルカメラをPCによる制御で15分毎に自動撮影させる。撮影した全天空画像の各画素に色彩較正関数を適用してXYZ三刺激値の絶対値を求め、XYZから主成分スコアを算出して、固有ベクトルにより各画素の分光放射輝度を算出する。 (b)様々な天気、時刻、季節における全天空分光放射輝度分布のデータベースの開発: 魚眼レンズ付きデジタルカメラにより約1年の自動測定を行って、全天空画像と全天空分光放射輝度分布を蓄積し、同時に連続測定していた各種昼光気象観測データを合わせてデータベースを構築した。 (c)昼光と人工光の分光分布を考慮した建築空間の分光放射束分布の予測法と可視化手法の開発: 任意の全天空分光放射輝度分布と直達分光放射照度及び人工光源の分光分布から、任意形状の建築空間の分光放射照度分布及び分光放射輝度分布を波長別相互反射計算により精度良く予測する方法を開発し、視対象の演色性や色の見えの可視化手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年4月の交付申請書に記した研究実施計画では、平成25年度に(a)魚眼レンズ付きデジタルカメラによる全天空分光放射輝度分布の測定法の開発と(b)様々な天気、時刻、季節における全天空分光放射輝度分布のデータベースの開発を行い、平成26年度に(c)昼光と人工光の分光分布を考慮した建築空間の分光放射束分布の予測法と可視化手法の開発を行う予定予定であった。 (a)はほぼ終了している。(b)は1年のうち数週間のデータを用いたデータベースの試作を終えている。(c)は実施計画の(1)昼光光源として全天空分光放射輝度分布と直達分光放射照度を用い、人工光源は各メーカーが公開している相対分光分布と配光を分光放射強度と配光に変換して、任意形状の建築空間の分光放射照度分布及び分光放射輝度分布を波長別相互反射計算により精度良く予測する方法を開発し、(2)建築構成材料の分光反射率と分光透過率の整備は予定通り平成26年度に行うが、(3)演色性や色の見えの可視化手法は開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、残された以下の研究を行う。 (b)全天空分光放射輝度分布と昼光気象観測を継続して約1年の観測データを蓄積する。直達分光放射照度は、昼光気象観測要素のうち、気温、湿度、気圧をパラメータとして既存のモデルにより推定し、分光放射計を太陽追尾装置に取り付けて測定したデータにより精度を検証する。 様々な天気、時刻、季節、昼光気象観測項目により検索可能な全天空分光放射輝度分布および直達分光放射照度のデータベースを開発する。 (c)様々な建築構成材料を収集し、暗室でキセノンランプ光源、変角光度計、分光放射計を用いて分光反射率と分光透過率を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分光放射計の選定にあたり、数社に「太陽周辺の明るい天空や夕方の暗い天空の分光放射輝度及び直達日射分光放射照度を絶対値([W/cm2/nm/sr]及び[W/cm2/nm])で測定可能であること」という仕様を示した。各社と交渉の結果、(株)東京インスツルメンツの「米国StellarNet社 BLACK Comet-XR-SR」を6月3日に発注し、7月3日に納品を受け、動作確認を行った。その後、数ヶ月をかけて自動雲台、デジタルカメラなどで測定装置を組み立て、全機器の同時制御プログラムを作成し、測定を始めた。膨大なデータ処理と解析の末、当機は絶対値ではなく単なる相対値しか測定されていないことが12月に判明した。1月から2月にかけて代理店と交渉したが改善されなかった。3月になって(株)東京インスツルメンツから購入代金693,000円全額を返金したいとの申し出があったので、当機器を返品した。 他社の分光放射計を購入する。
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