2014 Fiscal Year Research-status Report
建築物と設備機器の最適配置に基づく屋上の省エネデザイン手法
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25630238
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
甲谷 寿史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20243173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相良 和伸 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30109285)
桃井 良尚 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40506870)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 屋上 / 空調機 / ショートサーキット / 風洞実験 / CFD解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)PIV測定の精度検討 前年度に続き風洞実験により、非接触で高精度測定を行うことが出来る時系列PIV(Particle Image Velocimetry)測定による屋上剥離気流の平均風速、乱流統計量、羅流スペクトルを把握した。継続して精度検討が課題であったが、非接触測定であるLDV(Laser Doppler Velocimetry)およびI型熱線風速計での風速測定との比較により、乱流スペクトルまでの精緻な精度検討を行った。結果、PIVでは解析アルゴリズムにより高周波域での誤ベクトル算出に起因する誤差が大きくなる可能性があることがわかったが、近年少なからず用いられる再帰的相互相関手法を用いることで十分な精度を保つことがわかった。 2)建物屋上気流の詳細把握のための風洞実験 時系列PIV測定と併せて、既往研究で風圧や平均気流場のデータを有する単純矩形建物、ペントハウスを設置した矩形建物、空調室外機を設置した矩形建物の屋上気流場を対象として、2種の縮小模型において屋上及び空調室外機周辺気流性状を把握した。ペントハウスと目隠し壁の有無の組み合わせにより、空調室外機周辺気流場が大きく変化することを確認した。 3)空調室外機周辺気流のCFD解析 前年度に続き、低Re数型k-epsilonモデルやSST-k-omegaモデル等、提案されている数種の乱流モデルでの検討を行ったが、精度の飛躍的な向上は見られなかった。よって、建物剥離領域の再現精度は高く無いと言われながらも実用性の高い標準k-epsilonモデルを用いることを前提として、低風速となる空調室外機周辺気流の再現精度向上のため、壁関数の改良やメッシュ品質が気流性状に及ぼす影響を検討した。その後、ペントハウスと目隠し壁の有無をパラメータとしたCFD解析を行い、風洞実験による精度検証を行い、実用的な精度での平均風速場の一致を見た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で以下の4ステップの検討を3カ年で実施予定とし、前年度から本年度に(1)(2)を実施予定としていた。(1)屋上周辺のミクロな風環境を把握するための風洞実験を行い、次いで(2)CFD解析の精度検証と(3) 非等温排気を設定した条件でのCFD解析により空調機の吸込み温度、太陽光発電パネルの周辺温度、自然換気装置の排気口温度等を把握する。最後に(4)外部風向・風速、外気温度の気象データを入力した年間計算により効率を向上させる最適配置を探る。 (1)に関しては、高精度測定が実施でき、(2)の精度検証に用いるための種々のデータ蓄積を行うことが出来た。(2)に関しては、高次の乱流モデルであるLES(Large Eddy Simulation)に着手できていないものの、実用性を重視した標準k-epsilonモデルの使用を前提とした種々の検討により、精度保証のための手法を把握した。ただし、高精度測定により時系列データでの精度検証が可能となったことで、標準k-epsilonモデルによる検討と並行して、乱流スペクトル等の時系列性状を再現可能な乱流モデルにも着目した検討も進めている。よって、今後CFD解析でのパラメトリックな解析を実施することが可能となっていること、また高精度なCFD解析の可能性へ展開してきたことから、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験データにより精度検証も行いつつ、以下のCFD解析を中心とした検討を継続する。また最終年度であることから、成果の取りまとめと学会発表等による公開も行う。 1)実物サイズを想定したCFD解析 これまでの風洞実験の再現CFD解析から、実物サイズを想定したCFD解析へ展開する。空調機室外機及び換気口(給排気口)からの非等温排気を設定した条件でのCFD解析を行い、外部風向・風速、建物条件、屋上条件、室外機・換気口配置の典型的な組み合わせに対して、空調室外機の吸込み温度等を把握する。空調機室外機及び換気口(給排気口)での境界条件の与え方に関する検討も同時に行う。 2)乱流スペクトルを考慮したCFD解析の検討 屋上設置の設備機器の、例えば乱流エネルギーの詳細な空間分布まで高精度で再現する必要はなく、平均風速の空間分布と、大きな気流場の時間変動が再現できること、例えば剥離領域の再付着点距離が再現できれば良いと考え、その再現において支配的なスペクトル成分に関して検討する。例えば再付着点距離への影響が小さい周波数(渦のスケール)成分をカットする等で、LESを実用的な計算負荷で使用できるレベルまで簡易化する検討を行う。 3)最適配置に関する検討 例題計算的ではあるものの、実用に有する資料提供を目指して、外部風向・風速、外気温度の気象データを入力した年間計算により設備機器の効率を向上させる最適配置を探る。
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Causes of Carryover |
旅費および風洞実験における消耗品(模型、トレーサ発生用煙等)を計上していたものの、別研究と同一日程の出張とすることで別予算を援用、また実験における消耗品は別予算での購入物品を援用することができたことで、次年度使用額が生じた。ただし、研究計画に変更はなく、当初予定通りの研究を進めていく。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CFD解析に用いるための少額物品(PC等)及び、必要に応じて実施する追加風洞実験における消耗品として使用予定である。
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