2014 Fiscal Year Research-status Report
地方長官トゥルニによる18世紀ボルドーの都市整備に関する研究
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25630258
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土居 義岳 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00227696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地方長官 / トゥルニ / ボルドー / ラ・ファサード / 大西洋貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀中葉のボルドー都市整備事業を対象とし、当時の地方長官トゥルニ(Tourny)による具体的な都市整備事業をとりあげ、その出資者に着目し、彼らの家系、宗教、経済活動を調べることで、都市整備を支えた社会的背景を明らかにした。1740年以降、彼は都市を取り囲む城壁の土地を活用して、そこに住宅を建設するが、ちょうど都市の外構となることから彼はそれを「ファサード」と読んだ。「西ファサード」「南ファサード」そして東面となる「ラ・ファサード」である。 本研究では、ジロンド県公文書館の資料を活用し、「ラ・ファサード」における画地分譲事業への入札者のリストを作成し、彼らの購買地所、出資額、家系、宗教、経済活動などを公文書や地方誌文献などにより調べた。 ルイ・バルゲリ(Louis Balguerie)は卸商人であり、宅地四筆を購入している。バルゲリ家はもともとアジュネ(Agenais)のプロテスタント系家族であり、一家は1685 年のナントの王令廃止の時に離散した。幾人かは海外に移住し、幾人かはボルドーに残り、商業などに従事した。18 世紀には彼らはボルドーの商業エリートの一員として数えられるようになった。 ピエール・ペレ(Pierre Pellet)ジャン・ペレ(Jean Pellet)のペレ兄弟は7筆購入した。ペレ家は父エティエンヌのときプロテスタントであったが、1685年に二度目の洗礼をした。大西洋貿易で繁栄し、マルティニク(Martinique)に居を構えたが、1718 日にボルドーにもどり、兄弟でジャンとピエール・ペレ商社を設立した。 このようにトゥルニのラ・ファサード事業は、都市を開き美装するとともに、政治的には不利な立場であったプロテスタントの卸商人の経済活力を利用するものであったことを解明し、学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ひとつの都市整備事業について出資者全員の氏名をわりだし、そのなかで有力商人については地方誌文献での記載を発見して詳細にしらべるなど、都市開発事業の具体的側面を明らかにした。 またプロテスタント商人の役割の大きさなども明らかにした。これらから都市開発事業の、社会的な側面をかなり解明したという成果が理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの都市整備事業への有力出資者たちの家系、宗教、職種などをさらにくわしくしらべる。またそれと平行して、ボルドーの都市経営を動かしていた、高等法院、参事会、商業会議所などの構成員がいかなる社会的階層の人間たちであったかを明らかにする。そうすることで複数のいわゆる社団が、利害関係を調節しながら、国際貿易都市ボルドーを経営していったかを明らかにする。またそうした地元勢力との関係を、中央から派遣された地方長官トゥルニがどい統制していったかを、中央と地方の権力関係という視点から読み解いてゆく。
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Causes of Carryover |
海外出張の日数が、本務の関係から、若干少なかったこと。さらに発注した海外文献のうち、絶版などで購入できなかったものがあったこと、による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外出張日数も余裕を持ってとり、海外文献も出版年の古いものはそれを勘案して発注するなど、注意する。また最終年度は資料整理のための謝金が多いことが予想させるので、それに活用したい。
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