2015 Fiscal Year Research-status Report
地方長官トゥルニによる18世紀ボルドーの都市整備に関する研究
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25630258
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土居 義岳 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00227696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ボルドー / ラ・ファサード / トゥルニ / ムリニエ / ボンファン |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀中葉のボルドー都市整備事業を対象とし、その出資者に着目し、彼らの家系、宗教、経済活動をしらべ、それとの相関性をみることで、都市整備をささえた社会的背景を明らかにした。資料としては、ジロンド県公文書館の資料を活用し、都市整備地区「ラ・ファサード」の画地分譲事業の入札者リストを作成し、彼らの購買地所、出資額、家系、宗派、経済活動を、公文書や地域史文献などにより調べた。 前年度はとくに有力商人ルイ・バルゲリ、ピエール・ペレは、大西洋貿易で資産を形成したのち、その資産を不動産業に投資し、その投資先がこの都市整備であった経緯を詳細に明らかにした。今年度は、小口投資家たちの社会層を明らかにするための調査をおこなった。その結果、ムリニエ(Moulinie)は建築家であり、テネ(Tenet)は大西洋貿易を展開した他商人と提携関係のあった商人であり、デルメストル(Delmestre)は大西洋貿易を専門とする商人であり、デルペシュ(Delpech)は高等法院書記官であり、ボンファン(Bonfin)は建設事業のためにパリからボルドーに定着していた建築家であり、トマ(Thomas)はジャン・ペレと提携関係にあった商人であり、ルー(Roux)は高等法院検察官であり、ギローム・シュヴェイ(Guillaume Chevay)はこの開発事業の一部を請け負った建設請負業者であることを確認した。 これら出資者は商人だけとは限らず、建築家や役人、貴族らが含まれる。また出資者どうしは社会的に結び付いており、とりわけ商人らは同一の、もしくは隣接した商人社会に属していると考えられる。また地方長官トゥルニと仕事をした者が出資者に含まれる。トゥルニを取り巻く人間もプロジェクトの出資者であったことを想定した。 このような知見をとりまとめ、日本建築学会大会で研究発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18世紀フランス地方都市の整備事業における土地購買者のほぼ完全なリストを作成し、そのなかで有力商人について、地方誌文献での記載を発見して詳細を明らかにし、都市開発事業の具体的側面を明らかにし、プロテスタント系商人の役割などの社会的側面を明らかにしたという前年度の成果をふまえ、今年度は、商人以外の土地購買者の職業などの社会的なありかたを明らかにし、とくに地方長官トゥルニの協力者などの人脈がかかわっていたことなどを発見できたので。
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Strategy for Future Research Activity |
ラ・ファサード地区整備事業の土地購入者の分析から、商人が多数派ではあったが、そのほかに建設業、法曹界の人びとがいたことを明らかにしたが、今後は、積極的には土地を購入しなかった階層、集団の特性を明らかにすることで、購買者集団の特性をあきらかにしてゆく。具体的には、商業会議所、高等法院のメンバーたちの存在はここでは薄いので、その背景を考察してゆく。
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Causes of Carryover |
パリにおける同時テロ事件が発生し、渡航注意が喚起されたため、非常事態宣言の期間は渡航を自粛しようとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パリ、ボルドーに渡航し、各種アーカイブにおいて18世紀ボルドーのラ・ファサード整備事業関連の資料を収集する。
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