2013 Fiscal Year Research-status Report
Co基ホイスラー合金における冷却誘起逆マルテンサイト変態
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25630260
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
貝沼 亮介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20202004)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルテンサイト変態 / 形状記憶合金 / 状態図 |
Research Abstract |
(1)結晶構造およびミクロ組織の調査:a) 高温母相と低温母相の構造の確認:X線回折や電子回折を用いて、高温と低温で現れる母相の結晶構造の差異を詳細に調査した。b) M相の結晶構造と内部欠陥組織の観察:X線回折や透過電子顕微鏡を利用してM相の構造と内部組織(ナノ双晶や長周期構造の有無)を明らかにした。 (2)諸物性の調査と冷却誘起逆変態の起源解明:a) 諸物性の測定:変態温度の決定にはDSC と電気抵抗装置を用いた。また、比熱の測定には、測定温度域に応じて高性能DSC およびPPMS を用いた。磁化特性の評価にはSQUID 磁力計およびVSM を利用した。超弾性特性は、約600Kからヘリウム温度までの温度で既設の機械試験機やDSCを用いて行った。b) 熱力学的考察と変態起源の解明:特にa)で測定した比熱や変態臨界応力、変態臨界磁場の情報を利用して、変態エントロピーや自由エネルギーを評価した。 (3)変態挙動の組成および時効熱処理依存性の調査:種々のCr, Ga, Si濃度を持つ合金を作製して、マルテンサイト変態温度やキュリー温度を調査し、相図を作成した。また、合金の加工性や延性等材料学的特性についての組成依存性も調査した。 以上のような調査、分析の結果、CoCrGa合金に出現するマルテンサイト相及び母相の結晶構造を電子顕微鏡によって確認することが出来、さらに変態温度の組成依存性なども決定し、大まかな状態図も作成することが出来た。また単結晶を作製し、圧縮試験による超弾性効果の実験により、室温以下の温度では誘起変態応力が温度の低下と共に上昇することが判明した。この現象は、通常の超弾性合金では現れない異常現象であり、変態エントロピー変化の符号が逆転することを意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CoCrGa合金に出現するマルテンサイト相及び母相の結晶構造を電子顕微鏡によって確認することが出来た。また変態温度の組成依存性なども予定通り決定し、大まかな状態図も作成できた。さらには、単結晶の作製、低温圧縮試験の実施とその解析にも成功し、熱変態ばかりでなく応力誘起変態によっても、変態の異常を証明することに成功した。以上のことから予定していた項目はほぼ80%以上達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)諸物性の調査と冷却誘起逆変態の起源解明:a)諸物性の測定:平成25年度に引き続き比熱を中心に調査すると共にホール効果についても新たに測定する。b)変態起源の解明:a)の結果を用いて比熱における格子、電子、磁性各要素について明確にし、異常変態をもたらす熱力学的背景を明らかにする。 (2)変態挙動の組成および時効熱処理依存性の調査:a) 組成依存性の調査:種々のCr, Ga, Si濃度を持つ合金を作製して、マルテンサイト変態温度やキュリー温度を調査し、引き続き精度の高い相図を作成する。また、合金の加工性や延性等材料学的特性についての組成依存性も引き続き調査する。b) 時効熱処理依存性の調査:本合金のM変態温度は、300℃程度における時効により大きく変化することが分かっている。そこで、200~500℃の温度域で所定の時間熱処理を行い、組織観察による析出相の有無を調査すると共に、変態温度の時効熱処理温度依存性を明らかにする。c)以上の高温域における安定性を評価し、高温形状記憶の可能性を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画していた海外出張は、時間の都合がつかず中止された。また当初予定していた消耗品の量を減らすことが出来たため、次年度使用額が生じた。 Co基ホイスラー合金における冷却誘起逆マルテンサイト変態に関する情報収集のための旅費として支出予定である。また本年度は近年高騰しているヘリウムガスを多量に利用する実験を計画しており、その用途に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)