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2013 Fiscal Year Research-status Report

高圧高温環境を利用した新規な透明強磁性強弾性体フッ化物の創製と新物性開拓

Research Project

Project/Area Number 25630263
Research Category

Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research

Research InstitutionNagoya University

Principal Investigator

長谷川 正  名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20218457)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 草場 啓治  名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60186385)
Project Period (FY) 2013-04-01 – 2015-03-31
Keywords機能性金属フッ化物 / 高圧合成 / 3d遷移金属二フッ化物 / 磁性体フッ化物 / 新物性開拓
Research Abstract

コバルトドープの酸化チタンの強磁性発現に代表される機能性金属酸化物の新物質探査および新物性開拓が精力的に行われているのに対し,金属フッ化物に関する同種の研究は全くと言ってよいほど進んでおらず,まさに萌芽的研究領域である.その最大の要因は,従来の大気圧下でのフッ化物合成には,毒性・腐食性の強いフッ化水素ガス雰囲気が必要なことである.そこで,今年度ではこの問題を克服するために,フッ化水素ガスを用いず,なおかつ高温で金属フッ化物の分解が抑制できる従来法とは全く異なる金属フッ化物高圧高温合成法の開発に挑戦し,以下のようにその手法を確立した. 具体的には,名古屋大学に設置されているプレス装置を用いる高温高圧実験を進めて確立した.まず,1cm3程度の空間サイズの小型の使い捨て電気炉を作製し,これにアルゴン雰囲気中で原料充填する.次に,この電気炉をプレス装置で加圧した状態で,外部から電力を供給し電気炉中の試料を加熱し,1~4 時間程度高温条件を保持する.その後,室温に戻し減圧後試料を回収する.ここで,材料合成に必要な温度条件に見合う電力の安定供給法が問題となったため,この高温条件を安定して実現するために,直流安定化電源のプロセス条件を確定した.これにより,金属フッ化物の新物質探査が格段に容易になった.そこで,これまで見出されていない3d遷移金属二フッ化物の新物質の創製と新物性の開拓に挑戦した.その結果,ルチル型(Mg1-xMnx)F2 (0≦x≦0.50および0.95≦x≦1) を単相で合成することに成功した.合成圧力をあげるとルチル型(Mg1-xMnx)F2を単相で合成できるxの範囲が狭まることがわかった.これはMnF2の準安定相であるα-PbO2型構造相が出現するためである.また,ルチル型(Mg1-xMnx)F2の磁気相図を明らかにした.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

金属フッ化物の新物質探査および新物性開拓の研究が全くと言ってよいほど進んでいない最大の原因である毒性・腐食性の強いフッ化水素ガス雰囲気を用いるという問題を克服するために,今年度は,フッ化水素ガスを用いず,なおかつ高温で金属フッ化物の分解が抑制できる従来法とは全く異なる金属フッ化物高圧高温合成法の開発に成功した.これは,上記毒性のみならず,フッ化物が大気圧下で加熱すると大気中の水分などと反応し分解してしまう場合が多い一方で,高圧下にすることにより,大気を遮断した密閉系を得ることができ,フッ化物固溶体合成に有利となる点にも着目した当初の計画が1年で達成できたことになり,金属フッ化物の新物質探査および新物性開拓の研究にとって大きな一歩である.さらに,この確立した合成手法を用いて,3d遷移金属二フッ化物の新物質の創製と新物性の開拓に挑戦した結果,実際にルチル型(Mg1-xMnx)F2(0≦x≦0.50および0.95≦x≦1) という新しい固溶体を単相で合成することに成功したことは,当初の計画とおり成果が挙げられたと考えられる.特に,本研究では,名古屋大学に設置されている DIA-6 型装置を用いて直径2mm・長さ4mm程度の小さな円柱状試料を合成し,この小さな試料サイズで相の同定および磁化率の測定に必要十分な大きさであることを想定して計画を立てたが,相の同定と磁性の評価ともに十分に可能であったため,当初の計画とおり研究を推進することが可能となった.一方で,試料合成における温度と圧力の二つのパラメータの最適化には,放射光を用いた合成過程の直接観察が非常に有用で,本研究でもこの手法を積極的に取り入れる予定であったが,上記のように,実験室レベルでのクエンチ実験で十分に目的を達成することができた.

Strategy for Future Research Activity

前年度の成果を受けて,研究対象を複フッ化物およびオキソフッ化物に拡張し,新規機能性材料の創製をめざす.そして,これまでの合成結果を基に,研究結果を総括し,酸化物,フッ化物,オキソフッ化物を含めたイオン性機能性材料設計に対する指針を提案する.なお,「高圧合成」,「相の同定および磁化率の測定」,「放射光実験」の三つの実験プロセスについては,前年度と同様の計画と手法で行う.研究体制は,高圧材料工学と高圧結晶化学を専門とする研究代表者に,名古屋大学工学研究科結晶材料工学専攻の大学院生が研究協力者として本計画に参加する.また,必要に応じて構造解析を専門とする研究者の助言・援助を依頼する.具体的な対象物質は,高温高圧合成対象を原料と合成物中の陽イオンの価数変化を伴う可能性のある ABF3型などの複フッ化物に拡張する.例えば,ペロブスカイト型構造を有する化合物群も候補となり,これらを創製し,磁性などの材料特性評価を行う.これまでの研究計画で合成できたフッ化物および複フッ化物に関して,同形の酸化物との固溶体であるオキソフッ化物群の合成の可能性に関しての予備的な実験を行い,本合成手法のオキソフッ化物群合成への応用の可能性を明らかにする.放射光実験に関しては,研究対象を陽イオンの価数変化を伴う可能性のある複フッ化物に拡張するために,放射光実験施設での実験の際にアルゴン雰囲気下で電気炉に出発原料を充填することが必須となる.これに対応するために,ポータブルの簡易型グローボックスを設計する.最終的には,得られた研究成果をまとめ,それを基にフッ化物群の構造や物性を酸化物の場合と比較する.そして,フッ化物および酸化物,さらにはオキソフッ化物を含めたイオン性化合物に関する固体化学分野の考察を行い,これらの物質群に関する新規材料設計の提案を行う.

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

今年度において前述のように,これまで金属フッ化物の新物質探査および新物性開拓の研究が進まない最大の原因である毒性・腐食性の強いフッ化水素ガス雰囲気を用いるという問題とフッ化物が大気圧下で加熱すると大気中の水分などと反応し分解してしまう問題の2つを克服した新しい金属フッ化物高圧高温合成法の開発に成功した.当初はまったく新しい合成法の開発であるため多くの課題に直面して試行錯誤を繰り返す必要があると考えていたが,比較的スムースに問題を克服することができ,合成法の確立に至ったため,使用予算を抑えることができた.また,この成果を踏まえ,次年度に多くの合成実験とそれに伴う評価・測定実験を推進することが可能となったため,その実験費用を見越して次年度に予算を繰り越すこととした.
上述のように,金属フッ化物の新しい合成法の開発・確立に成功し新物質探査および新物性開拓の研究を格段に推進することが可能となったため,次年度に多くの合成実験とそれに伴う評価・測定実験を推進する.そのため,繰り越し予算はその実験費用に充当する.具体的には,前年度の成果を受けて,研究対象を複フッ化物およびオキソフッ化物に拡張し,新規機能性材料の創製をめざすし,高温高圧合成対象を原料と合成物中の陽イオンの価数変化を伴う可能性のあるABF3型などの複フッ化物に拡張する.例えば,ペロブスカイト型構造を有する化合物群も候補となる.これらを創製し,磁性などの材料特性評価を行うためには,多くの消耗的物品が必要となるため,予算は主にこれに使用する.また,様々な物質系を扱うための情報収集や研究成果の発表の必要性もあり,これらを念頭において予算を使用する計画である.

  • Research Products

    (11 results)

All 2014 2013

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (9 results)

  • [Journal Article] 新規Aサイト秩序型ペロブスカイト複酸化物BiMn3(Fe0.25Ti0.75)4O12の高圧高温合成及び評価2013

    • Author(s)
      志村元,宮脇哲也,草場啓治,丹羽健,浅野秀文,長谷川正
    • Journal Title

      高圧力の科学と技術

      Volume: 23 Pages: 5-5

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] パイライト型Ni1-xCuxS2固溶体の高圧合成と電子構造2013

    • Author(s)
      岩崎純也,臼井健介,草場啓治,丹羽健,加藤政彦,曽田一雄,長谷川正
    • Journal Title

      高圧力の科学と技術

      Volume: 23 Pages: 89-89

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] BiMn3(Fe0.25Ti0.75)4O12の高圧高温合成と特性評価2014

    • Author(s)
      志村元, 丹羽健, 武藤俊介, 坂本渉, 白子雄一, 長谷川正
    • Organizer
      日本セラミックス協会2014年年会
    • Place of Presentation
      横浜
    • Year and Date
      20140317-20140319
  • [Presentation] Marcasite型白金族多窒化物の高圧高温合成と評価2014

    • Author(s)
      丹羽健, 鈴木健太郎, 武藤俊介, 巽一厳, 長谷川正
    • Organizer
      日本セラミックス協会2014年年会
    • Place of Presentation
      横浜
    • Year and Date
      20140317-20140319
  • [Presentation] Mg2Si高圧相の合成と相安定性および熱電能2014

    • Author(s)
      能丸大器, 草場啓治, 丹羽健, ※長谷川正, 後藤弘匡, 亀卦川卓美
    • Organizer
      日本セラミックス協会2014年年会
    • Place of Presentation
      横浜
    • Year and Date
      20140317-20140319
  • [Presentation] 新規Aサイト秩序型ペロブスカイト複酸化物BiMn3(Fe0.25Ti0.75)4O12の高圧高温合成及び評価2013

    • Author(s)
      志村元,宮脇哲也,草場啓治,丹羽健,浅野秀文,長谷川正
    • Organizer
      第54回高圧討論会
    • Place of Presentation
      新潟
    • Year and Date
      20131114-20131116
  • [Presentation] パイライト型Ni1-xCuxS2固溶体の高圧合成と電子構造2013

    • Author(s)
      岩崎純也,臼井健介,草場啓治,丹羽健,加藤政彦,曽田一雄,長谷川正
    • Organizer
      第54回高圧討論会
    • Place of Presentation
      新潟
    • Year and Date
      20131114-20131116
  • [Presentation] BiFeO3-BiAlO3,BiFeO3-MnTiO3系固溶体の高圧合成2013

    • Author(s)
      志村元,草場啓治,宮脇哲也,丹羽健,浅野秀文,長谷川正
    • Organizer
      第23回学生による材料フォーラム
    • Place of Presentation
      名古屋
    • Year and Date
      20131101-20131101
  • [Presentation] パイライト型Ni1-xCuxS2固溶体の高圧合成と電子構造2013

    • Author(s)
      岩崎純也,臼井健介,草場啓治,丹羽健,加藤政彦,曽田一雄,長谷川正
    • Organizer
      第23回学生による材料フォーラム
    • Place of Presentation
      名古屋
    • Year and Date
      20131101-20131101
  • [Presentation] BiFeO3-MnTiO3における新規化合物の高圧高温合成及び特性評価2013

    • Author(s)
      志村元,草場啓治,宮脇哲也,丹羽健,浅野秀文,長谷川正
    • Organizer
      日本セラミックス協会第26回秋季シンポジウム
    • Place of Presentation
      長野
    • Year and Date
      20130904-20130906
  • [Presentation] パイライト型Ni1-xCuxS2固溶体の高圧合成と電子構造2013

    • Author(s)
      岩崎純也,臼井健介,草場啓治,丹羽健,加藤政彦,曽田一雄,長谷川正
    • Organizer
      日本セラミックス協会第26回秋季シンポジウム
    • Place of Presentation
      長野
    • Year and Date
      20130904-20130906

URL: 

Published: 2015-05-28  

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