2013 Fiscal Year Research-status Report
ダクタイルイオン結晶における特異な局所化学結合発現の理論的検証
Project/Area Number |
25630279
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松永 克志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20334310)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / すべり系 / パイエルス応力 |
Research Abstract |
本研究では、室温付近の低温で特異な延性を示すダクタイルイオン結晶に着目し、結晶変形時の特異な局所化学結合発現の観点から、その延性の起源解明に挑む。 具体的には、ダクタイルイオン結晶であるAgClとSrTiO3を対象とし、第一原理計算を用いて、特定のすべり面・方向に対するパイエルス・ナバロ応力を算出する。さらに、すべり変形時の電子状態密度を詳細に解析し、すべり面近傍の局所化学結合状態の特徴を明らかにし、延性の起源を電子レベルで解明する。本研究により、イオン性を持つ脆性セラミックス材料への延性付与を目指した、電子論からの設計指針を得ることが期待できる。 本年度研究では、岩塩型結晶構造のAgClとNaClについて、すべり変形抵抗力を第一原理計算とパイエルス・ナバロ理論を用いて求めた。パイエルス・ナバロ応力計算については、転位コアの直接計算ではない別の手法として、VitekらがGeneralized Stacking Fault(GSF)エネルギーを使った手法を提案している。この手法では、(a)特定のすべり面に沿って上下の結晶を微小に相対的に剛体変位させ、(b)すべり面上下の原子を緩和させて全エネルギー値を求める。その後、さらに微小変位させて(a)→(b)のステップを繰り返し計算することでGSFエネルギーのマップを得る。このGSFエネルギーのマップを用い、特定のすべり方向のエネルギー変化を正弦波で近似して、パイエルス・ナバロ応力を計算することができる。この手法を用い、AgClとNaClにおけるすべり系{110}<1-10>や{001}<1-10>の活動の難易、{001}面でのへき開の難易などを解析したところ、実験結果を合理的に説明する結果が得られた。さらには、すべり変形時の中間状態の電子状態を調べたところ、すべり変形しやすいAgClでは、Ag-Ag間に共有結合的相互作用が働いていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NaClとAgClについての解析は終了し、予定通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ダクタイルセラミックスとして知られるSrTiO3に適用し、同物質の変形機構を電子論的に考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請段階では計算機クラスターの購入を検討していたが、既存設備で研究が進み、購入しなかったため。 消耗品および旅費に使用予定。
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Research Products
(1 results)