2014 Fiscal Year Research-status Report
プロトン伝導性ガラスファイバーのナノ先鋭化による局所H+注入技術の開発
Project/Area Number |
25630286
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
大幸 裕介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70514404)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロトン伝導 / イオン電流 / イオン銃 / ガラスファイバー / リン酸ガラス / 燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、プロトン輸率tH=1のガラスを溶融法で作製し、500℃程度で動作する燃料電池電解質などへの応用を検討してきた。本研究では、このガラスをファイバー化、さらに先鋭化したのちに電界印加することで、ガラスファイバーからのプロトン放出について検討している。ペレットなど平板試料と比較して、先鋭化することで電界が先端により集中し、より低い電圧でのイオン放出や電流密度の増大が期待される。初年度は、プロトン伝導性ガラスのファイバー化およびメニスカスエッチング法による先鋭化(先端曲率径 1マイクロメートル以下)を達成するとともに、イオン電流評価装置を設計・設置した。本年度は、当該ガラスファイバーを用いたプロトン放出について検討した。電界を印加することで、ガラスファイバーの終端でH2 → 2H + 2e-の反応が生じ、ここで生じたH+が反対側の先鋭化先端に伝導・放出される。ガラス転移温度以上の温度で電界印加することで、プロトンと思われるカチオン電流を初めて観測した。ガラスファイバーの加熱に伴い放出されたイオンの電流密度は増大し、またより低い印加電界でのイオン放出を確認した。イオン放出に関する活性化エネルギーは60 kJ/mol程度と推定された。プロトンが実際に注入されれば、OH基濃度の増加による親水化などが確認できると考えられ、次年度はプロトン注入による物性変化について多角的に詳しく調べる予定である。H+は電子殻を持たないむき出しの原子核であり、溶液中のH3O+などと比べて高活性である。被照射体のプロトン伝導性向上やブレンステッド酸点生成による固体酸触媒活性向上、新たな水素結合形成やプロトン付加反応など、様々な新しい機能付与などに関する成果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガラスファイバーの先鋭化について、初年度は先端断面積はおよそ1平方マイクロメートルであったが、エッチング条件の改善などにより1マイクロメートル以下の先鋭化先端を得た。申請書計画において、最もチャレンジ性の高い要素としてガラスファイバーからのH+放出の実証を挙げており、計画通りに電界印加によるイオン放出を初めて確認した。シリコン基板に対してプロトン照射を行ったところ、接触角の上昇が見られ、イオン注入の効果についても検証を初めている。 使用しているガラスファイバーはプロトン輸率tH=1であり、燃料電池において1.0 V以上の起電力を発生する。しかしながらガラス組成中にはアルカリ金属元素も含まれ、高電界印加時にこれらのイオンが放出されず、観測されるイオン電流がプロトンのみであることを多角的に調べる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン電流密度を上昇させるために、ガラス作製手法や組成、ガラスの先端形状などを検討する。ガラスの導電率や先端形状、引抜電極等の配置によるイオン電流値は有限要素法によるシミュレーションも可能であり、これらの理論値を手がかりに実験値の検証を進めることで、0.5マイクロアンペア/cm2のイオン電流値を得ることを目標とする。リン酸塩ガラス(MO・P2O5, Mはアルカリ土類金属)にイオン加速器を用いてプロトン注入すると、OH基濃度は上昇する。この結果を参考に、本実験系で被照射体にリン酸塩ガラスを用いてプロトン注入を行い、OH基濃度の上昇を確認することで、ガラスファイバーからどの程度のプロトンが放出されるか定量的に調べる。
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