2013 Fiscal Year Research-status Report
液晶のランダムテクスチャを用いた光セキュリティタグ認証システムの構築
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25630309
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中山 敬三 近畿大学, 理工学部, 講師 (80324333)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液晶 / セキュリティ / 指紋状組織 / ランダム |
Research Abstract |
研究実績を1.実験、2.コンピュータ解析の分類で以下に報告する。 1.本研究では紫外線硬化型液晶を用いて液晶のランダムテクスチャの固定化およびパターニングを実現するアイディアに基づいている。まず、光重合条件が固定化された液晶テクスチャにどのような影響が生じるかを調べるため、照射強度、照射時間および重合時の温度制御が可能な露光光学系を作製した。紫外線強度および各種マスクパターンで実験を行い、紫外線が照射されていない部分への意図しない重合領域の浸みだしの照射強度依存性および書き込みパターンの形状にも依存するなどの基礎的知見が得られた。また、これまでは主にカイラルネマチック液晶の指紋状組織をランダムテクスチャとして用いて実験を行ってきたが、ネマチック液晶材料での素子作製も行った。指紋状組織よりもシュリーレン組織の方がテクスチャがシンプルであるが、異なる素子ではシュリーレン組織のパターンも異なる事が確認できた。この結果から、ネマチック液晶も光セキュリティタグへ用いることも可能であることが分かった。 2.液晶のテクスチャは偏光顕微鏡で観察するため、偏光子とサンプルの配置により同一素子で得られるパターンでも明暗が変化することがある。同一素子から得られるこれらの画像同士を輝度情報のみで比較すると相関値は低くなってしまう。そこで、画像の輝度情報ではなくカイラルネマチック液晶で観察される指紋状組織の縞方向抽出のプログラム開発を行った。縞の方向抽出としてはフーリエ変換による平均的な縞方向の抽出も可能であるが、単独の各縞の長さなどの幾何学的情報も重要なことから、二値化により縞を抽出し、その後、各縞の角度を評価するプログラムを開発した。その結果、指紋状組織の角度分布などを定量的に評価することが可能となった。これは、ランダム性の評価手法の開発および認証アルゴリズムの基礎となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎となる紫外線露光用の光学系は、申請予算で購入したスポットUV照射装置、温度コントローラおよび光学レンズ等を組合せ、基本的なものが作製できた。照射強度、照射時間の調整が正確に出来るようになり、フォトマスクのパターンに合わせた最適な条件の探索の効率が改善され、今後の実験効率の改善が期待できる。 材料面では、ネマチック液晶のシュリーレン組織を用いた素子を作製した。指紋状組織に比べてテクスチャがシンプルなためランダム性の詳細な検討が今後必要になるが、幅広い照射強度条件下で、ランダムなシュリーレン組織の固定化が出来た。 指紋状組織パターンのランダム性の評価実験として大量のサンプルを作製して素子間のパターンを比較する実験は行えなかったが、この実験の基礎となる指紋状組織パターン間の比較アルゴリズム開発では、「研究実績の概要」で詳説したように進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に得られた基礎的・系統的な知見を元にし、平成26年度はより応用に向けた実験を行う。 カイラルネマチック液晶の指紋状組織での縞方向の抽出の基本的知見は25年度の実験で得られているため、更なるプログラムの改良を行う。本プログラムは本研究課題におけるマッチング部分への応用と複雑な指紋状組織の定量的解析という新しい基礎科学的研究手法の開発の両面に貢献する。マッチングのアルゴリズムとしては、角度情報における相関のみならず角度情報から角度の急変箇所などの特徴点抽出方式等も検討を行う計画である。更に、ネマチック液晶のシュリーレン組織でのアルゴリズムの検討も行う。指紋状組織とシュリーレン組織は全く様相が異なるため、異なる画像処理アルゴリズムが必要となる。シュリーレン組織はシンプルな帯と複数の帯が連結する結び目で構成されるため、輝度情報によるデータ処理を基本とした処理になると予想している。開発した照合方式の検討は、各素子パターンの識別性能、処理速度、照合精度を保つために必要な画像情報量(画素数、カラー情報の有無)や読み取り光学系の設計精度などの視点で評価を行う。 素子に書き込める人工パターンとして、ロゴなどユーザーへの情報のみならず、バーコードなど機械やカメラ等による読み込みを前提とした二次元シンボルパターンが利用できれば、更なるタグの応用範囲が広がる。そこで、同一の二次元シンボルを有するフィルムを作製し、二次元シンボルの書き込み・読み取り精度および液晶のミクロなテクスチャを用いた個々のフィルムの弁別性能などの評価を試みる。また、色素添加による書き込みパターンのコントラストの増強を試みる。
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Research Products
(5 results)