2013 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ電気化学セルによる鋼への水素侵入経路の解明と耐水素バリア層形成技術の研究
Project/Area Number |
25630319
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武藤 泉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20400278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 信義 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40111257)
菅原 優 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40599057)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 材料加工・処理 / 腐食防食 |
Research Abstract |
高分解能リアルタイムin situ観察機能付きのマイクロ電気化学システムを開発すると共に、ピコアンペアオーダーの水素透過電流を計測可能な特殊なデュアルポテンショスタットを試作した。マイクロ電気化学システムにおいては、特殊な樹脂を探し出し、金属試験片の表面の狙った部分を100μm×100μmほどの試料面とし、被覆する手法を確立した。樹脂の特性により、気泡を残さずに電解液をマイクロメートルオーダーの試験面に接触させることが可能である。この電極面を水浸対物レンズを使用し、約1000倍の光学顕微鏡観察を行いながら、電気化学計測を行える装置を作製した。特に、ビデオ画像と電気化学シグナルの時間同期を確保するため、ソフトウエアーを開発し、ミリ秒の精度で両者を一致させることに成功した。試作したシステムで、ステンレス鋼中のMnSの溶解と孔食発生の挙動を観察した。また、MnS溶解と孔食発生に及ぼす浸炭と窒化処理の影響を解析した。浸炭、窒化ともにMnSの溶解を抑制すると共に、鋼の腐食を抑制する作用があることが分かった。 鋼への水素侵入は、局部腐食を起点としているため今年度開発した電気化学計測システムは、水素侵入挙動を詳細に解明できる新しいツールとして大いに期待される。今後、水素エネルギー社会を実現するために不可欠な、安価な耐水素脆化型高強度鋼開発の基盤技術を確立するため、鋼への水素侵入経路を解明し、それを塞ぐ「耐水素バリア層(相)の形成技術」の研究を行う。そのため、マイクロ電気化学セルを用い、結晶粒、粒界、加工変形帯、非金属介在物などの鋼表面のミクロンオーダーの特定の微細組織を狙って水素を注入し、試験片の裏側で水素透過電流を計測することで、水素侵入起点を解明する。水素と同じく侵入型の固溶元素であるN、C、O、B を表面濃化させた鋼材を作製し、耐水素バリア層(相)としての可能性を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、高分解能リアルタイムin situ観察機能付きの水素透過計測用のマイクロ電気化学システムを開発することに成功した。併せて、水素透過のバリヤ層として、浸炭と窒化処理の可能性を探索することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ電気化学セルを用い、結晶粒、粒界、加工変形帯、非金属介在物などの鋼表面のミクロンオーダーの特定の微細組織を狙って水素を注入し、試験片の裏側で水素透過電流を計測することで、水素侵入起点を解明する。水素と同じく侵入型の固溶元素であるN、C、O、B を表面濃化させた鋼材を作製し、耐水素バリア層(相)としての可能性を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、平成26年度に予定していた水素透過のバリヤ層としての浸炭と窒化処理の可能性を探索する研究を、試作したマイクロ電気化学計測用ポテンショスタットの動作確認を兼ねて実施し、その代わりに、平成25年度に実施を予定していた粒界と水素侵入との関係解明の研究の一部を次年度に実施することにしたため。 粒界と水素侵入との関係解明の研究、特に結晶粒粗大化試験片などの作製に使用する。
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