2013 Fiscal Year Research-status Report
液中レーザープロセスを利用した非相溶性合金粒子の創製
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25630341
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
越崎 直人 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40344197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 貴宏 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50400429)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液中レーザー溶融法 / パルス加熱 / 局所加熱 / 非相溶性合金 / 2成分コロイド溶液 / レーザー照射 / 非集光 / Au-Fe |
Research Abstract |
これまでにわれわれのグループが開発してきた新規なサブミクロン球状粒子合成法である「液中レーザー溶融法」は、液体中にナノ粒子を分散したコロイド溶液にレーザー光を照射するだけのシンプルな手法である。この手法により、金属・酸化物・半導体などのさまざまな材料のサブミクロン球状粒子を作製することが可能である。 2成分のナノ粒子を液体中に混合分散してレーザー光を照射すると、合金を形成しやすい2成分系のみならず、合金を形成しないと言われる組み合わせの系でも合金を形成することがわかってきた。しかしその詳細なメカニズムはまだよくわかっていない。そこで、初年度は比較的分析がしやすい相溶性合金の組み合わせであるAu-Feをまず取りあげ、その生成メカニズムについて検討した。 Au-Feでは光の吸収係数が比較的近くなるように、355nmのNd:YAGレーザー3倍波を用いて実験を行った。原料は液中レーザーアブレーション法により作製したAuナノ粒子と酸化鉄ナノ粒子を用い、エタノール中でレーザー照射を行った。この時の混合重量比率を1:9~9:1までの9段階変化させて、どのような形態と組成や結晶構造をもつ粒子が得られるかについて検討を行った。合金相の生成の様子と得られた粒子の形態、酸処理による生成粒子の形態などが、熱力学的な相図を用いてある程度説明できることがわかった。 一方、フェムト秒レーザー光を照射した場合、そのパルス幅はナノ秒レーザーと比較してフェムト秒レーザーが百万分の1程度であり、クーロン爆破という現象が起こる点が、従来のナノ秒レーザーと大きく異なる点である。この現象が引き起こす生成物の形態変化やクーロン爆発の発生メカニズムなどの詳細はまだよくわかっていないことから、生成粒子形態のフルーエンス依存性を検討し、これを説明できるモデルの構築を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、液中レーザー溶融法による相溶性合金粒子生成機構とその最適条件探索をナノ秒レーザーを使ってAu-Fe系について検討した。Auナノ粒子と酸化鉄ナノ粒子をエタノール中に分散してレーザー光を照射するとエタノールの還元雰囲気下で酸化鉄がFeOやFeまで還元され、AuとFeからなる合金粒子が生成する。原料粒子のゼータ電位を測定したところ異符号であり、混合コロイド溶液を生成したときに異符号の電荷を持つ粒子同士が凝集し、これにレーザー光が当たることで、溶融・合金化が起こると考えられた。また、レーザー照射時間を長くするあるいは撹拌を十分行わせるようにすると、得られる球状粒子のTEM撮影で観測される粒子内の組成不均一性が徐々に低下していくこともわかった。すなわち溶融履歴が均一合金粒子の生成に有効であると考えることができる。相図と生成物との対応関係は比較的良好だった。 フェムト秒レーザー照射の場合では、液中レーザー溶融法における最も重要なプロセスである溶融現象とクーロン爆発という現象が競合するものと考えられた。そこでまず、典型的な単一金属である、Au, Pt, Agなどの貴金属ナノ粒子がクーロン爆発を起こす条件を理論的に予測して、その条件で実際クーロン爆発が起こるかどうかを実験的に検証した。フルーエンスを変化させてそれぞれのナノ粒子原料溶液にレーザー光を照射し、生成物の形態を観察した結果、ある程度の対応関係があることを見出した。今後、この条件と溶融現象が起こる条件との対応関係の検討から合金球状粒子の作製を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は前年度の実験結果の統一的な解釈を進めるために必要な実験を行うとともに、これに加えて、他の合金系への適用、他のレーザーの利用、シミュレーション解析結果との比較、などにも可能であれば取り組んで行きたい。 ナノ秒レーザー利用液中レーザー溶融法では、非相溶性合金の新規組み合わせ合金粒子の創製方法について検討を進めていく。他の非相溶性合金系(例えばAu-Pt系、Au-Cu系、Fe-Cu系)に液中レーザー溶融法を適用し、固溶体生成領域がどの程度拡大するか、この拡大の様子が合金系で異なるとすれば、その原因は何かについて実験的に検討する。 ナノ秒レーザーのパルス幅の違いが非相溶性合金粒子生成に及ぼす効果についても検討したい。同じナノ秒レーザーでもそのパルス幅の長短によって粒子の形態が異なり、長パルスのレーザー光の方が形態はより球状に近いことが酸化亜鉛の場合で観測されている。すなわちこの程度のレーザーパルスの違いによって粒子の加熱・冷却過程に影響を与えていることが示唆される。そこで、形態と合金化領域との関係やナノ秒レーザーの中でのパルス幅の違いが合金化領域に及ぼす影響について検討する。 フェムト秒レーザーを使って非相溶合金球状粒子を作製する実験を試み、ナノ秒レーザーとの違いについて検討を行い、その原因を解明する。 レーザー照射による高速加熱・急冷プロセスのシミュレーション実験をシミュレーションプログラムを利用して、液相レーザー溶融法における急速加熱・冷却過程をモデル化し、パルス幅(=加熱時間)がプロセスに及ぼす影響について、実験データと対比させながら、検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を予定していた分析試料作成用凍結乾燥装置の仕様決定に手間取り、納入期間が長いことがわかったためH26年度購入に変更したため。 新年度に入り至急仕様のためのテスト実験を行い、仕様を確定し購入を進めたい。
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[Presentation] 液中レーザー溶融法の2 成分ナノ粒子原料系への適用2013
Author(s)
越崎 直人, Xiangyou Li, Zaneta Swiatkowska, 石川 善恵
Organizer
第5回日本化学会新領域研究グループ「液相高密度エネルギーナノ反応場」研究会 「液相中へのレーザー光照射による粒子合成の新展開-その基礎から応用-」
Place of Presentation
産業技術総合研究所 臨海副都心センター(東京都江東区)
Year and Date
20130809-20130809
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