2015 Fiscal Year Research-status Report
GPCR立体構造特異的モノクローナル抗体の革新的作製技術の創製とその応用
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25630376
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
冨田 昌弘 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20183494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湊元 幹太 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362359)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 生体分子 / 生体機能利用 / 免疫学 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、モノクローナル抗体は、次世代の医薬品として注目されており、世界中でその研究が展開している。しかし、モノクローナル抗体の大多数は、抗原タンパク質の一次構造を認識している。そこで、本研究では、新たなハイブリドーマテクノロジーに基づく高次構造認識モノクローナル抗体の創製を目的とした。 GPCR(Gタンパク質共役受容体)の1つであり、ストレス応答に関与することが報告されているhCRHR1 (human corticotropin-releasing hormone receptor 1; 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体 1) に着目した。hCRHR1遺伝子を用いてDNA免疫を行った後、hCRHR1発現ミエローマ細胞によって目的の感作B細胞を選択した。この原理は、感作B細胞表面の抗原レセプター(抗hCRHR1抗体)を介した抗原抗体反応を利用して、hCRHR1発現ミエローマ細胞が結合することに基づいている。両細胞を電気パルスによって選択融合を行った結果、多くのハイブリドーマが認められた。hCRHR1発現CHO細胞を用いたCell-ELISA法に基づきスクリーニングを行ったところ、複数の陽性ハイブリドーマを確認することができた。高次構造特異的モノクローナル抗体 (ssmAb) 作製の可能性が示された。 さらに、目的のssmAb産生ハイブリドーマを限界希釈法に基づきクロ―ニングした結果、IgGタイプのモノクローナル抗体を得ることに成功した。これと並行して、他のGPCRに対する本新規法の有効性も検討した。その結果、LGR4 (Leucine-rich repeat-containing G protein-coupled receptor 4) に対するssmAb を作製することができ、本革新的作製技術の汎用性を証明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不活性化センダイウイルスを用いることによって、ミエローマ細胞への遺伝子導入効率が格段に促進された。その結果、最も重要なステップの1つである目的の感作B細胞を選択するために必要となる、hCRHR1発現ミエローマ細胞上でのhCRHR1の発現が高められ、hCRHR1発現ミエローマ細胞による感作B細胞の選択効率が改善された。 また、hCRHR1遺伝子導入組換えプラスミドベクターを利用してDNA免疫を行った後、さらに、hCRHR1発現CHO細胞を用いた腹腔内免疫を行ったところ、目的の感作B細胞の免疫化効率が高められた。DNA免疫法において、高次構造を保持した状態でhCRHR1がマウス体内で発現された後、免疫システムによって認識され、目的のB細胞が感作される。複数回DNA免疫を行うことによって、目的のB細胞の成熟度が促進される。さらに、立体構造を保持した状態で発現されているhCRHR1をマウス腹腔内に直接投与することによって、効率的に免疫系が賦活化されたと思われる。その結果、抗原の高次構造に対して高親和性・高特異性をもつ抗体産生B細胞へと分化し、hCRHR1発現ミエローマ細胞と感作B細胞を融合して得られる高次構造特異的モノクローナル抗体 (ssmAb) 産生ハイブリドーマの作製効率が高まったと考えられる。また、Cell-ELISA法後、限界希釈法よるクローニングの際、抗IgG抗体を用いたELISA法を並行して行い、IgGタイプの抗体産生ハイブリドーマを選択的に得ることを試みたところ、目的のIgGタイプのssmAbの取得に成功した。さらに、hCRHR1とは異なるGPCRであるLGR4に対する本革新的新規法の有用性も確認することができた。しかし、プロテオリポソームを用いたモノクローナル抗体の立体構造認識能の解析が次年度への検討項目となった。
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Strategy for Future Research Activity |
可視化解析によって目的のB細胞-ミエローマ細胞複合体形成が明らかとなり、さらに、両細胞の電気パルス融合によってCell-ELISA陽性ハイブリドーマを得ることができた。このことは、抗原発現ミエローマ細胞を用いたB細胞選択に基づく「革新的ハイブリドーマテクノロジー」の実現性を強く支持する結果であった。 さらに、IgGタイプの立体構造特異的モノクローナル抗体 (ssmAb) の作製にも成功した。また、他のGPCRであるLGR4に対しても、本新規法によってssmAbの作製が可能となり、「革新的ハイブリドーマテクノロジー」の汎用性を示すことができた。今後は、次のポイントに的を絞り、さらに、推進する予定である。 ○ 作製されたモノクローナル抗体の立体構造認識能の解析 この目的のためにhCRHR1を組み込んだプロテオリポソームの作製を考えている。プロテオリポソームは、目的のタンパク質を発現する組換えバキュロウイルスとリポソームとを酸性条件下で融合することによって、目的のタンパク質の方向性を保った状態でリポソームに組み込むことができる。さらに、目的のタンパク質のみをリポソーム上で提示することができ、組換えCHO細胞を用いたCell-ELISA法とは別の側面からモノクローナル抗体の立体構造認識を確かめることができる。そこで、hCRHR1を組み込んだバキュロウイルスを作製し、酸性条件下でリポソームとの融合を試みた。この時、より生体内の細胞に近い大きさのプロテオリポソームを構築するため、細胞サイズの巨大リポソーム (10 マイクロメートル以上) を用いた。しかし、酸性条件下において融合した場合、目的のhCRHR1を提示するプロテオリポソームの作製効率が低かった。そのため、酸性条件下による融合とは異なる条件における融合方法を用いて、目的のプロテオリポソームを作製する予定でいる。
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Causes of Carryover |
平成27年度に、GPCR(Gタンパク質共役受容体)に対するモノクローナル抗体の立体構造認識に関する解析を行い、学会発表する予定でいたが、解析方法を再検討する必要が生じたため、計画を変更し、平成28年度にその解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
GPCRに対するモノクローナル抗体の立体構造認識の実験を行う際の可視化解析およびプロテオリポソーム作製の費用として使用する。目的の受容体hCRHR1発現組換えバキュロウイルスと巨大リポソームを酸性条件下で融合することを改善する。具体的には、よりマイルドな条件である中性条件下における融合を惹起する方法を開発して、目的のプロテオリポソームを作製し、立体構造特異的モノクローナル抗体 (ssmAb) の立体構造認識能を可視的に明らかにする予定でいる。
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