2013 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質提示金ナノ粒子の大腸菌細胞質内調製法の開発
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25630385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神谷 典穂 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50302766)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 金ナノ粒子 / 生体触媒 / 補酵素 / ナノバイオ |
Research Abstract |
本研究では、目的タンパク質が適当な配向を持って提示された金ナノ粒子を細胞質内で一段階で合成する技術を開発することを最終目標として研究を行っている。具体的には、金親和性ペプチドを付加した組換えタンパク質の発現と生体触媒による金ナノ粒子合成とを連動させ、目的タンパク質の金ナノ粒子表面提示と、金ナノ粒子異方成長の促進の新たな可能性を探索する。この目標に向け、本年度は生体外での詳細な評価を先行して実施した。 まず、大腸菌由来グリセロールデヒドロゲナーゼが触媒する酸化還元補酵素再生系に、金に親和性を有するタグを付加した機能性タンパク質を導入して、金ナノ粒子の調製と目的タンパク質による表面修飾を一段階で行う新規プロセスの構築を試みた。進化工学的手法により取得された既報の金結合ペプチドをモデルとして選択し、これをプロテインGのB1部位に融合させたモデルタンパク質を調製した。プロテインGは由来の異なる様々なIgG抗体のFcドメイン特異的に結合する性質を有することから、この人工タンパク質が金結合ペプチドを介して金ナノ粒子上に提示されれば、粒子上にIgG抗体を固定化可能な金ナノ粒子として利用できる。そこで実際にモデル融合タンパク質の発現・精製を行い、試験管内で酸化還元酵素が触媒する補酵素再生系と共存させたところ、融合タンパク質提示金ナノ粒子が得られた。得られたナノ粒子について、透過型電子顕微鏡観察および動的光散乱による粒径測定、表面電荷、粒径分布、IgG結合能等の評価結果を実施したところ、プロテインGが活性を保った状態で金ナノ粒子上に提示されていること、また、金親和性ペプチドタグとしてヒスチジンタグが有効であることを明らかとした。これらの成果を学術論文2編ならびに特許出願1件として纏めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に掲げた目標は概ね達成できた。 まず、3つの異なる機能(精製用タグとしてヘキサヒスチジンタグ (His-tag) およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ (GST)、抗体結合ドメインとしてプロテインGおよびプロテインA、金結合ペプチドとしてA3ペプチド)を有する機能性タンパク質をデザインした。また、各ドメインが金ナノ粒子の形成や結合に与える影響を評価するために、A3ペプチドを欠損させたタンパク質および精製用タグを欠損させたタンパク質も調製し、総勢6種類の組換えタンパク質を精製し、E. coli グリセロールデヒドロゲナーゼ (GLD) による金ナノ粒子調製に供した。その結果、汎用的に利用されているヒスチジンタグが、既報の金結合性ペプチドよりも、金ナノ粒子表面に対して高い親和性を有していることを明らかにできたことから、今後の分子設計に重要な知見が得られたと考えている。さらに、次年度の検討に向けて、新たにBacillus stearothermophilius由来GLD (BsGLD) を選択し、プロテインGとの融合タンパク質を調製することで、タンパク質修飾金ナノ粒子合成における、1ポット・1タンパク質成分系の構築に向けた基礎検討を実施した。BsGLDは結晶構造が明らかとなっている点で、大腸菌由来GLDと比べてより合理的な融合タンパク質の設計が可能である。 上述の基礎研究で得られたデータを基に、論文投稿2編、特許出願1件を実施できたことから、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究実績を踏まえ、異なる由来のグリセロールデヒドロゲナーゼを利用した1ポット金ナノ粒子合成系を、大腸菌の細胞質内で構築することを試みる。具体的には、BsGLDの高次構造情報を基に、機能性タンパク質と金結合ペプチドの双方を遺伝子工学的手法により融合させた新規キメラタンパク質を調製することで、単一タンパク質成分によるタンパク質修飾金ナノ粒子の一段階合成の深化を図る。さらには、共存イオン種と還元条件を変えることで、金属ナノ粒子の種類に幅を持たせると共に、例えばレアメタル廃液からの金ナノ粒子構築等、産業応用上意義深い系への適用に関する試みも実施する。一方、特異な性質を有するタンパク質が金ナノ粒子異方成長の促進に与える影響ついても検討したい。 前者においては、グリセロールデヒドロゲナーゼ酵素反応速度が金ナノ粒子の成長に与える影響と、細胞質内のタンパク質発現量やタンパク質提示金ナノ粒子の調製に与える影響を総合的に評価し、目的タンパク質が安定且つ確実に金ナノ粒子に提示される新たな方法論を確立する。一方、後者においては、不凍タンパク質等、これまで金属ナノ粒子の調製に用いられた例がないタンパク質を用いて、生体外での詳細評価を先行し、金ナノ粒子の異方成長とタンパク質提示の基礎データを得ることを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は共同研究企業からの研究費が当初予想よりも多く配分されたため、最低限の必要経費としての消耗品ならびに論文添削費を執行した。 当該共同研究は昨年度で終了したため、今年度は全ての経費を有効に執行する。
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Research Products
(7 results)