2014 Fiscal Year Research-status Report
新規酵素群による食品製造工程のTAB汚染解決手法の開発―極限環境適応能力の活用―
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25630386
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
森 梢 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 技術副主事 (80463090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦田 勇二 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, グループリーダー (20399562)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微生物による変敗 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度(平成25年度)に報告した通り、TABの濁度低下を指標としたTABの溶菌活性による簡易スクリーニングを行った。それにより培養上清を溶菌物質としてTABに作用させた場合でさえも、TABに対する溶解作用が非常に高い酵素を生産するStreptomyces sp. MBE22株を取得した。 本年度はMBE22株が生産する溶菌酵素のN末端アミノ酸配列を決定した。その得られた配列をNCBIデータベースを用いて相同性検索を行った。そのMBE22溶菌酵素は、N‐アセチルムラミン酸とN‐グルコサミンの間のβ-1,4-グリコシド結合を切断することによって細菌の細胞壁を分解する酵素である、ムラミダーゼの保存された触媒ドメインを含む複数のタンパクと一致した。この相同性検索結果により、MBE22株溶菌酵素のTABへの作用点は細胞壁であることが配列からも推測された。また、昨年度の末から開始した顕微鏡観察によるTAB溶菌の経時的観察も継続して行い、MBE22株の溶菌酵素を作用させた際のTAB細胞の形態的な変化を詳細に観察した。更にMBE22株が生産する溶菌酵素は、TABを溶菌する一方で、大腸菌は溶菌せず、その溶菌対象について選択性があることが明らかとなった。このMBE22株溶菌酵素の溶菌の対象の選択性は、溶菌酵素として広く汎用されていて、大腸菌にも作用するリゾチームのそれとは異なる結果が得られた。この溶菌対象の選択性は非常に興味深く、TAB汚染対策に加え、これまでリゾチームでは溶菌効果が見られなかった異なる用途での使用も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
N末端アミノ酸配列の相同性検索結果から、取得したMBE22株の溶菌酵素はTABの細胞壁に作用することが推測され、これまでの顕微鏡による溶菌酵素による溶菌時の形態変化の観察からもそれを裏付ける観察結果が得られた。またリゾチームと比較したTABに対する溶菌活性は約60倍高く、大腸菌やその他複数のグラム陽性細菌にも作用が認められなかったため、MBE22株の溶菌酵素は非常にTABに特異性が高い酵素と言える。本年度はこれら試験を優先したため、TABの対処が必要な実際の使用条件での溶菌酵素の試験は来年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
TABの対処が必要な実際の使用条件である、果汁あるいは果汁飲料を含む条件での溶菌酵素のTABへの作用を評価する。次いで同条件において、入手可能なペプチドグリカン分解酵素やリパーゼを併用した際のMBE22株の溶菌酵素のTAB溶菌についても検討を行う。また、TABの細胞壁を抽出し、それを基質とした溶菌酵素の活性測定も検討している。
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Causes of Carryover |
酵素分解産物分析および電子顕微鏡によるTAB溶菌観察の外部委託費は、所属機関での観察が可能となったことにより予定していた費用の使用を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
溶菌酵素の反応生成物の分子構造解析のための試薬および実験用消耗品費にあてる。
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