2013 Fiscal Year Research-status Report
固体反応大気吸入イオンエンジンの超低軌道運用に関するフィージビリティースタディー
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25630392
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田川 雅人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10216806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 久美子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (20252794)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電気推進 / 原子状酸素 / イオンエンジン / 大気吸入 / ABIE / マイクロ波 |
Research Abstract |
超低軌道の大気を推進剤とする日本オリジナルのアイデアである大気吸入イオンエンジン(Air Breathing Ion Engine, ABIE)について、ABIEへの分子流入速度を地上で再現できるレーザーデトネーション法を用いた実験的研究方法を確立する。あわせて、排気イオンの質量数増加による推力増強法として、反応室内で原子状酸素の化学反応を積極的に利用する反応型大気吸入イオンエンジン(Reactive Air Breathing Ion Engine, RABIE)コンセプトについて、その実現可能性を探ることを目的としている。 本研究では神戸大学に設置されているレーザーデトネーション型原子状酸素発生装置を用いて、マイクロ波プラズマ型ABIE試作機の実験的評価を行う方法論を確立するため、平成25年度にはABIE試作機の設計・製作とパルスビームに対応したプラズマ過渡特性計測系の整備を行う。また、実験と並行して数値計算によりプラズマ形成に関する最適条件の探索を実施する。平成26年度には、これらを用いてABIEならびに反応型ABIEシステムの成立条件や性能についての検討を行う計画である。 上記研究計画に従い、平成25年度にはマイクロ波、磁場、衝突イオン化プロセスを含んだ計算機シミュレーションコードをほぼ確立することに成功し、プラズマ反応室最適設計に向けての指針を得ることが出来た。さらに計算機アプローチに加えて、実験用機器の導入を進め、次年度での実機プラズマ実験に向けての基盤整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算機アプローチ マイクロ波によるプラズマ形成効率の向上はABIEの運用軌道を広域化するためには非常に重要である。そのため本研究ではABIE内部の電極や磁石配置を最適化するためのコンピュータシミュレーションを実施した。計算コードとしては京都大学生存圏研究所で作成されたEMSESを利用し、マイクロ波アンテナ近傍におけるプラズマ生成効率の高効率化を図った。シミュレーション計算の結果、プラズマ生成効率はマイクロ波周波数と反応室直径に依存することが確認され、磁石配置の最適化に向けての指針が得られた。 実験的アプローチ 本実験に用いる原子状酸素発生装置は8 km/sという軌道上におけるABIEへの原子状酸素の流入速度を再現できる反面、パルス動作でありABIE内部で圧力変動が生じる。マイクロ波型ABIEではプラズマ状態が変動すればマッチングがずれエネルギーロス(加熱)が発生する。この点からは実験にはパルスビームではなく連続ビームが適しているが、現在の技術では8 km/sの流速の高純度原子状酸素連続流を形成することができないという問題がある。そこで本研究ではレーザーデトネーション法で形成される単発の原子状酸素パルスでのプラズマ計測を可能とする計測系を構成することを目標とした。平成25年度にはパルスアンプとデジタルオシロの組み合わせによる高応答微小電流計測システムを構築し、これによりマイクロ秒の時間オーダーで流入する原子状酸素パルスで発生するプラズマ過渡特性を測定し、ABIEの放電特性を評価できるシステムを完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には前年度に整備した計算コードによりABIE最適設計を行うと共に、計算結果に基づき製作したABIE試作機と計測システムを用いて原子状酸素発生装置を用いた評価を行う予定である。実施項目としては、 ①プラズマ計算によるABIE内部最適配置の検討:EMSESによるマイクロ波アンテナ近傍におけるプラズマ生成効率について計算を継続し、最適なABIE内部配置を決定する。 ②ビーム流入条件とプラズマ形成条件の明確化:ABIE試作機を用いてその基本的な動作特性を明らかにする。分子流入密度が小さい領域でも放電を維持するための条件探索や、限界分子流量の見積もりを行う。さらにマイクロ波プラズマの過渡応答からABIEの性能を推定する実験的方法を確立する。 ③反応型ABIEシステムの評価:原子状酸素リフレクターにカーボン系材料をコーティングし、原子状酸素との反応により二酸化炭素を発生させ、排気イオン種の分子量が増大するか、推力が改善されるかを確認する。またABIEの排気を原子状酸素発生装置に具備されたビーム評価装置を用いて質量分析し、二酸化炭素の生成と並進速度分布などの測定を試みる。(RABIE動作モードの確認) 万一、何らかの理由により上記項目①-③のうち、全てを実施できない可能性がある場合には、項目①および②を優先的に実施し、ABIE開発に関わる最も基本的な特性の把握を優先する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
セキュリティーの観点から中国開催の国際会議への参加を見合わせたため。 研究自体は順調に進展しているため、平成26年度後半以降に開催される他の国際会議での成果発表を検討している。
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