2013 Fiscal Year Research-status Report
熱攻法シミュレータを用いた地下微生物利用技術の汎用シミュレータの開発
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25630415
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菅井 裕一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70333862)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微生物攻法 / MEOR / シミュレーション / 油分解 / 粘度 / Petrotoga / 比増殖速度 / 酵母エキス |
Research Abstract |
本研究の研究対象である嫌気性油分解微生物Petrotoga属AR80株について、同微生物を用いた石油の増進回収(Microbial Enhanced Oil Recovery, MEOR)を想定した場合に、その増殖および代謝に影響を及ぼすと考えられる塩濃度、酵母エキス濃度、栄養剤の種類およびそれらの濃度を変化させた培養実験を実施した。その結果、塩濃度4%程度であれば同微生物は良好に増殖し、油の粘度を初期粘度の約7割程度にまで低減させることが明らかになった。また、酵母エキスの1/100程度の価格の安価な農業用肥料を培地に添加した場合において、酵母エキスを添加した場合と同等の増殖活性化効果が認められた。 これらの実験結果に基づいて、塩濃度ならびに酵母エキス濃度をパラメータとした同微生物の増殖速度式をMonodの式に従って導出した。さらに、同微生物の増殖に伴なう油粘度の低減についても、実験結果に基づいて数式化した。これらの数式を研究代表者が自ら開発したMEORシミュレータに導入し、同微生物による石油増進回収効果を定量的に評価した。その結果によれば、10%程度の高塩濃度油層においても、塩濃度4%程度の海水を培養液ならびに圧入水として用いることにより、同微生物を油層内において増殖させることが可能であり、それによる油粘度の低下により、約5~10%程度の石油増進回収が期待できることが示された。また、同微生物の栄養剤として酵母エキスを用いた場合、酵母エキス1kgにつき約0.1bblの石油を増進回収可能であることが示され、これを安価な農業用肥料で代用することにより、本MEORが経済性の高いEORとなることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3ヶ年にわたる研究の初年度として、研究対象としている嫌気性油分解微生物について、同微生物を用いたMEORを実施するにあたり、同微生物の増殖に影響を及ぼすと考えられる塩濃度、酵母エキス濃度、栄養剤の種類およびそれらの濃度等を変化させた培養実験を実施し、それらをパラメータとした同微生物の増殖速度式ならびに油粘度低減式を、各種培養実験結果から導くことができた。さらにこれらをMEORシミュレータに導入して、同微生物を用いた場合のMEORに関するシミュレータが構築された。同シミュレータは次年度以降に予定されている商用熱攻法シミュレータを基本として開発されるMEORシミュレータの妥当性を検証するための比較対象となるものであり、本研究の基礎となる。その開発が初年度に完了したことは、次年度以降の研究を予定通り進めるうえで極めて重要である。また、次年度以降のMEORシミュレータ開発においては、同微生物を砂岩コア内において培養し、その増殖速度式ならびに油粘度低減式を導出する予定である。その際に、初年度に実施したバイアル瓶内における培養実験結果を参照して、コア内培養実験条件を設定できる。 このように、次年度以降の研究の進捗を想定した場合に必要な実験結果ならびにシミュレーション結果がすべて初年度の研究により収集できており、今後の研究展開を想定して、これまでは概ね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降、研究対象微生物を砂岩コア内培養に供し、多孔質体内の微小孔隙環境における同微生物の増殖速度ならびに油粘度低減効果の定式化を図る。一般に、微小孔隙環境においては、栄養源や老廃物などの物質拡散が制限されるため、微生物の増殖や代謝は負の影響を受けると言われており、前年度のバイアル瓶内培養実験結果と比較しながら、コア内培養実験の定式化を進める。前年度と同様に塩濃度ならびに栄養剤濃度をパラメータとして、微小孔隙環境における同微生物の増殖ならびに油粘度低減を定式化するため、種々の条件下において同微生物の培養実験を実施する。コア内培養実験のためのコアホルダーを2体現有しており、次年度以降にさらに2体程度追加購入し、一度の実験において培養条件を多段階に変化させてより効率よく培養実験を進められるように、実験環境を整備する予定である。 一方、シミュレーション研究においては、商用の熱攻法シミュレータ(STARS、CMG社、カナダ)の火攻法オプションに入力するパラメータを検討し、油分解微生物を用いたMEORのシミュレーションが可能となるように改良する。同シミュレータの火攻法オプションに用いられているアレニウスの式を、微生物の増殖速度式として表現できるように、同式中の各パラメータを検討し、改良する。これにより構築されたMEORシミュレータによる計算結果と、前年度に構築した自作のMEORシミュレータによる計算結果とを比較検討し、熱攻法シミュレータを基にして構築したMEORシミュレータにおける入力パラメータの微調整を行ない、商用MEORシミュレータを構築する。 また、構築された商用MEORシミュレータの妥当性を検討するためのMEORフィールドデータに関する文献調査等の情報収集を実施する。
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