2014 Fiscal Year Research-status Report
熱攻法シミュレータを用いた地下微生物利用技術の汎用シミュレータの開発
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25630415
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菅井 裕一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70333862)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 資源開発 / 石油 / EOR / 微生物 / 熱攻法 / シミュレーション / 数値モデル / アレニウスの式 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱攻法シミュレータを基盤とした微生物攻法の数値シミュレータを構築するために、微生物の増殖および代謝挙動をアレニウスの式を用いて表現するための基礎的検討を実施した。本研究において供試微生物として取り扱っている嫌気性油分解微生物について、前年度に実施した各種培養実験結果を基に、その増殖速度と栄養源(酵母エキス)濃度との関係を、アレニウスの式で表現した。すなわち、アレニウスの式における温度の変数Tを本培養実験における栄養源濃度で表現し、反応速度定数kを本培養実験において得られた比増殖速度で表現した。実験結果とアレニウスの式とをよくマッチングさせるために、同式中の活性化エネルギーならびに頻度因子を調整し、最終的に実験結果をよく表現しうるアレニウスの式を導出することができた。 導出されたアレニウスの式を本研究において取り扱っている熱攻法シミュレータに導入して微生物攻法を再現する際に、その妥当性を検討するための室内採油増進実験を実施した。べレア砂岩コア(φ1.5インチ、L75 mm)を用いて模擬油層を作製し、これに供試微生物と栄養源を圧入して数週間シャットインした後、油層水による後押しを行ない、培養液と石油を一定時間間隔で回収して、排油挙動ならびに最終的な油回収率を明らかにした。供試微生物を圧入しない場合についても同様の実験を実施した。その結果、供試微生物を圧入した場合においては、培養後に回収された油の粘度が初期の油の粘度の60 %程度にまで低下し、初期のコア内油量の3 %の油が後押し開始初期段階において増進回収された。同微生物による油の分解による粘度低下によって増進回収が得られることを示すとともに、次年度の数値シミュレータとのマッチングに必要な実験データを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の供試微生物の培養実験結果を基に、供試微生物の増殖挙動や代謝挙動をアレニウスの式を用いて表現することが当該年度の達成目標であった。微生物の増殖挙動や代謝挙動を数式で表現する場合、通常はミカエリス・メンテンの式を基としたMonodの式が用いられるが、本研究で取り扱っている熱攻法シミュレータには同式が導入できない。そのため、熱攻法に関連する油層内における化学反応の反応速度を計算するためのアレニウスの式で微生物の挙動を表現する必要があり、この課題が本研究課題の一つの重要な要素であった。当該年度においては、前年度の研究において十分量の実験データが蓄積されていたため、比較的順調にアレニウスの式によって微生物挙動を表現することができた。また、次年度の課題である本開発数値シミュレータと実験結果のマッチングにおいて必要な実験結果についても、供試微生物を用いた室内採油増進実験を、複数の栄養源濃度によって実施することができ、栄養源濃度と石油増進回収効果の関係も見出すことができた。これらの進捗状況は、交付申請書に記載した「研究の目的」における達成目標に沿っており、概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は導出されたアレニウスの式を熱攻法シミュレータに導入して、室内採油増進実験の数値計算を実施する。その計算結果と当該年度に実施された室内採油増進実験の結果を比較検討し、熱攻法シミュレータを用いて微生物攻法を再現するために必要な各種パラメータのの調整を行なう。供試微生物の増殖挙動や代謝挙動についてはすでに実験結果とのマッチングがなされており、ここでは相対浸透率、毛管圧力、岩石濡れ性などの油層パラメータを調整し、室内採油増進実験とのマッチングを実施する予定である。 このようにして構築された数値シミュレータによる計算対象をフィールドレベルにスケールアップし、微生物攻法のフィールドテスト結果とのヒストリマッチングを実施して、その実用性を評価する。これまで、油分解微生物による油粘度低下を狙った微生物攻法のフィールドテストは数件実施されており、それらの結果を報告した文献に記載のフィールドデータを本シミュレータに入力して計算し、その結果とフィールドテストの結果をマッチンッグして、本数値シミュレータがフィールドスケールでの地下微生物利用技術の評価に適用可能であることを実証する。
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