2014 Fiscal Year Research-status Report
海底熱水鉱床探査に革命を起こす新しい探査手法の確立
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25630417
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 謙太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40512083)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海底熱水鉱床 / 船上音響探査 / 周波数 / 中部沖縄トラフ / 観測条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中部沖縄トラフの伊平屋北および伊是名熱水フィールドを含む海域において、海洋調査船「よこすか」によるEM122を用いた熱水調査を行った。この調査によって、以下の結果を得ることができた。 (1)既知の熱水サイトである「伊平屋北熱水フィールド」において、周波数による見え方の違いを検証するために昨年度のSEABAT 8160による測線と同じ測線で観測を行った。その結果、12kHzのEM122によっても、50kHzのSEABAT8160で観測した場合と全く同じ場所で熱水プルームを捉えられることを明らかにした。 (2)プルーム検知の船速依存を確認するために、船速10ノット、7ノット、5ノットで調査を行った。その結果、10ノットの場合には、測線から遠く、かつ強度の小さいプルームの一部を見逃す場合があることがわかった。そのため、より低速で観測した方が、より弱いプルームまで捉えられると考えられる。現実的には、10ノット未満で行うのが望ましいと考えられる。 (3)ウォーターカラムの観測においては、海底面からの反射がノイズとなるために、有効なプルーム検知幅は両舷合わせて水深と同程度までであることが明らかとなった。したがって、熱水調査のための測線間隔は調査海域の水深に依存し、深い場所で比較的広くとれるが(それでも一般的な地形調査と比べると1/3~1/5)、浅い場所ではさらに狭くする必要がある。 (4)本手法を応用し、中部沖縄トラフにおいて広域探査を実施した。その結果、すべての既知サイトを含む11の熱水サイトを検出することに成功し、手法の有効性を示すことができた。 これらの成果によって、沖縄トラフにおける海底熱水鉱床探査に、調査船搭載のマルチビーム音響測深装置が周波数によらず極めて有効であることと、実際の広域調査を行う際の観測条件について最適化することができ、実際の広域探査によってその有効性の実証にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた「既知熱水域での有効性の確認と探査条件の決定」について、新たな考察を加え探査条件の最適化を果たすことができた。さらに、確立された手法を用いて初めての広域探査を行い、わずか数日の調査で中部沖縄トラフの伊平屋北および伊是名フィールドを含む海盆全体のサーベイを完遂し、すべての既知サイトを含む11の熱水サイトを検出することに成功した。研究の進展については、計画以上に極めて順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初計画に則って以下の2つの研究を進めるとともに、成果の公表に努める。 (1)調査船なつしまに搭載されたSEABAT 8160および同じくよこすかに搭載されたEM122を用いて、沖縄本島北西方の海域で広域調査を実施する。この海域は、昨年度に巨大な熱水サイトが一つ見つかっているものの、伊平屋北ー伊是名海域に比べ従来の科学調査が少なく、本手法の有効性検証の総仕上げに好適なエリアと言える。 (2)新規に採取されるデータおよびこれまでに採取されたデータを解析することにより、MBESで熱水を捉える機構の解明を行う。 (3)研究の結果を論文化し、成果の公表を行う。
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Causes of Carryover |
次年度に当初計画に無かった航海に参加できることが決まったことから、研究成果の最大化を図るために費用の再配分を行ったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、すべて次年度航海の参加のための交通費および航海消耗品の購入費用に充てる計画である。
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