2013 Fiscal Year Research-status Report
太陽電池モジュール加速試験における蛍光色素修飾ナノ構造による酸性水分子の検出
Project/Area Number |
25630438
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梅田 倫弘 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60111803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩見 健太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80514710)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 太陽電池モジュール / 寿命 / 加速試験 / ダンプヒート試験 / EVA / 酢酸 / pH感受性色素 / pH計測 |
Research Abstract |
太陽光発電コストの縮減は、我が国の電力エネルギー確保の点からも喫緊の課題である。その解決策として、太陽電池セルの変換効率上昇の努力とともに太陽電池モジュール(以下、PVモジュール)の長寿命化が試みられている。そのため、長期暴露および加速試験によるPVモジュール内への水分浸透の研究が重点的に行われている中で、最近、PVモジュール内の封止剤と浸透水分の化学反応による酢酸の発生が指摘されているが、現状ではその酸性度を評価する手段が全くない。そこで、本研究では、PVモジュール内の酸性水分を、高感度にかつ簡易に検出するために、生物分野で使われているpH感受性色素を表面修飾したナノ構造pHセンサを開発し、PVモジュール加速試験への適用可能性の実証を目的とし, 以下の成果が得られた。 1)乾燥状態にある蛍光色素の微量酸性水分に対する蛍光スペクトル特性を調査し、乾燥状態でもスペクトルが変化することが明らかとなった。さらに、乾燥状態の程度、滴下水分量、色素濃度、周囲環境温度等のペラメータを変えてpH検出特性を明らかにした。特に、耐温度特性については最高200℃まで調査し、pH検出特性を有していることを明らかにした。 また、乾燥蛍光色素ガラス基板の酸性水蒸気に対するスペクトル変化特性から20分弱で酸性状態に変化することを実験的に明らかにし、本手法の有効性を確認した。 2)PVモジュール内で発生した酸性微量水分は、飽和蒸気圧以下では水分凝縮が生じないため、蛍光色素ではpH応答を検出できない。そこで、毛細管現象を利用して水分を凝縮させてpH感受性蛍光色素によりpH検出を試みた。このため、ポリスチレンナノ粒子の自己組織化膜やメンブレンフィルターによるナノ構造水分凝縮特性を試験し、その中から最適な構造パラメータを決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成目標は、PVモジュール内への浸透水分と封止剤の化学反応により発生する微量酢酸を高感度に検出できるナノ構造pHセンサを開発して、PVモジュールの長寿命化に資することである。このために、1)pH感受性蛍光色素の乾燥状態における検出特性を明らかにすること、2)低水蒸気圧下における水分凝縮が生じるナノ構造の最適化、3)最適化ナノ構造の蛍光色素修飾技術の確立の達成目標に対して、以下のような研究成果が得られた。 1)pH感受性蛍光色素の乾燥状態における検出特性および酸性水蒸気の検出:乾燥状態にある蛍光色素の微量酸性水分に対する蛍光スペクトル特性を調査し、乾燥状態でもスペクトルが変化することが明らかとなった。さらに、乾燥状態の程度、滴下水分量、色素濃度、周囲環境温度等のペラメータを変えてpH検出特性を明らかにした。特に、耐温度特性については最高200℃まで調査し、pH検出特性を有していることを明らかにした。また、乾燥蛍光色素ガラス基板の酸性水蒸気に対するスペクトル変化特性から20分弱で酸性状態に変化することを実験的に明らかにし、本手法の有効性を確認した。 2)低水蒸気圧下における水分凝縮を起こすナノ構造の最適化:PVモジュール内で発生した酸性微量水分は、飽和蒸気圧以下では水分凝縮が生じないため、蛍光色素ではpH応答を検出できない。そこで、毛細管現象を利用して水分を凝縮させてpH感受性蛍光色素によりpH検出を試みた。このため、ポリスチレンナノ粒子の自己組織化膜やメンブレンフィルターによるナノ構造水分凝縮特性を試験し、その中から最適な構造パラメータを決定した。 3)最適化ナノ構造の蛍光色素修飾技術の確立:ポリスチレンラッテクス粒子に対しては、蛍光色素とラッテクス粒子の混合物によるスピンコート法および乾燥蛍光色素表面へのナノ粒子インデント法などを試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ナノ構造表面への蛍光色素を表面修飾する技術の確立:H25年度に引き続き、得られた最適なナノ構造表面に蛍光色素を表面修飾させるための技術を確立する。酸素プラズマ処理による濡れ性の向上、界面活性剤による表面張力の低下技術の導入して蛍光色素を吸着させる技術などを試みて、最終的にナノ構造表面に蛍光色素を安定に定着できる技術を確立する。 2)微量酸性水分の検出特性:開発したナノ構造pHセンサ基板の酸性微量水分のpH検出が可能であることを確認するために、分流式酸性蒸気発生装置を製作する。空気ポンプから酢酸水溶液に空気を送り込んでバブリングにより飽和水蒸気を試験槽送り込む。試験槽には、ナノ構造pHセンサ基板を設置し、532nmYAGレーザーによって蛍光励起し、蛍光反射光を分光器で検出して蛍光スペクトルを測定する。 3)模擬PVモジュールへの実装とpH検出特性の確認:開発したナノ構造pHセンサ基板を、シリコーン樹脂で封止した模擬PVモジュール内に実装し、試験槽内に設置して、飽和酸性水蒸気を送り込み、センサ基板の反射蛍光分光スペクトルを測定することで、模擬モジュールに浸透した酸性水分を検出できることを示す。 4)PVセルおよび封止剤(EVA)をガラス基板とバックシートで挟み込むと同時にガラス基板サイドに、開発したナノ構造pHセンサ基板を数カ所設置して、ラミネータにより加圧融着させてPVモジュールを製作する。製作したモジュールを、ダンプヒート試験(温度85℃、湿度85%、4000 時間)を行うために、恒温恒湿試験装置に設置する。また、加速試験を行いながらセンサ基板の蛍光スペクトルを測定するため、分光器用測定ファイバーをセンサ基板上部に設置する。この実験によって加速試験を行いながら、反射蛍光スペクトルデータを蓄積していくとともに、pH変化を算出する。
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