2013 Fiscal Year Research-status Report
水飲み鳥の揺動原理に基づく熱機関からの利用可能な余剰エネルギー回収システムの開発
Project/Area Number |
25630442
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
小作 敏晴 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (90295840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 学 大阪学院大学, 情報学部, 教授 (10092785)
厚海 慶太 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (80453207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水飲み鳥 / 揺動運動 / 数理モデル / 非定常熱伝導 / 静電誘導 / 余剰エネルギー |
Research Abstract |
本研究は,「水飲み鳥」と呼ばれるガラス製玩具の揺動運動について,熱力学と振動工学の観点から定量的に解析し,最終的にエネルギープラントとしての実現可能性を検証することを目的としている.当該年度は初年度であり,これまでの研究成果,および詳細な運動計測とデータ解析によって数理モデルを構成することを目的とし,(1)実験装置の構成と運動計測,(2)有限要素法による外部温度場の非定常解析,(3)数理モデルの構成,を実施して研究を遂行することとした. (1)に先立って,先行研究調査を実施したところ,実験式と理論式を組み合わせた数理モデルを提案する文献が1件見つかった.この文献に掲載されている数値計算の結果は,我々の予備研究によって得られた計測結果と類似していたため,(1)を実施する前に,このモデルの有効性を検証して,(3)で構成するモデルとの差別化を図ることが必須となった.この文献に基づく揺動運動波形の数値計算プログラムを作成して評価を行った結果,一部の特性が単純化されていることが原因で,実際の波形より単調な波形しか生成できなかった.したがって,この点を改良し,より高精度な数理モデルを構成することによって,本研究の新規性を確保できることが明らかとなった. 上記の先行研究調査に予定以上の時間を要したため,当該年度では(1)の機材は準備したものの実施に到らず,(3)に到達することができなかった.ただし,(2)については予備研究で計測されたデータを用いて,非定常熱伝導モデルを導入した外部温度場解析を実施した.その結果,頭部表面の移動熱量が定常モデルより1桁大きく推定され,非定常効果の重要性が明らかとなった. また,次年度実施計画で予定していた余剰エネルギー回収機構の開発を先行して実施し,静電誘導式発電機構による水飲み鳥の余剰エネルギー回収機構の原理模型を製作して,その動作を検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記したように,先行研究調査において,本研究課題の初年度目標とした研究対象の数理モデルを提案する文献が見つかり,その内容に関する精査に予定以上の時間を要したため,実施計画に基づいて研究を遂行できず,成果をまとめて国内発表することができなかった.ただし,上記の調査は,実施を予定していた数理モデルについて既成の内容と未解決の問題を明確に分類することができ,計画を肯定的に修正する上で重要かつ有意義な調査であったと捉えている.また,次年度の実施計画として予定していた水飲み鳥の余剰エネルギー回収機構の開発を初年度から実施して,発電動作と蓄電を確認することができた点については,計画以上に進展している.さらに,先行研究調査の過程で作成したプログラムは,次年度に開発予定であったプログラムとして再利用することが可能である.したがって,実験装置の構成と計測を迅速に実施し,収集した計測データを解析することによって,初年度の最終目標とした数理モデルの構成および成果の公表を,次年度の到達目標も含めて達成することは十分可能であると考えている.以上が,「やや遅れている」とした理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(3年計画の2年目)の当初の実施計画では,(1)数理モデルを利用して水飲み鳥の動作原理に基づいた熱機関モデルを設計,製作する,(2)余剰エネルギーの回収機構を設計,製作する,としていた.しかし,(1)については,初年度の成果として得られている数理モデルの構成が,先行研究調査に起因する研究の遅れによって実現できていないため,まずは,初年度の実施計画である実験装置の構成と計測を実施し,収集した計測データを解析することによって,数理モデルの構成を実現することが最優先課題となる. (1)で数理モデルを利用するために必要な数値計算プログラムについては,先行研究調査の過程で作成したプログラムの大部分を再利用することが可能であることから,熱機関モデルの設計,製作期間の短縮が期待できる.また,(2)については,初年度に先行して原理模型を開発し,水飲み鳥の揺動間欠運動から電気エネルギーを蓄積する基礎技術についての知見を得ていることから,熱機関モデルに導入する余剰エネルギー回収機構の設計,製作の短縮化が期待できる.以上から,次年度は,初年度の成果を最大限に活用して,当初の実施計画の到達目標を変更せずに達成できるよう,迅速かつ正確に研究を推進し,2件以上の国内発表を目標とする. 現時点では,次年度が予定した実施計画どおりに進むとしているので,最終年度(3年計画の3年目)については,当初の実施計画の内容に変更はない.ただし,次年度に製作される単体の熱機関モデルとその余剰エネルギー回収機構の性能を評価した結果,設計の見直しの余地がある場合は,最終年度に予定している複合システムの開発は中止し,単体機の性能改善する方向に研究計画を変更する可能性がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については,購入を予定していたサーモグラフィ装置が予定より低い価格で購入でき,その残額を用いて研究の遂行に必要な物品を追加購入したが,品切れで年度内に購入できなかった物品があったため.旅費については,当該年度の実施計画に遅れがあり,研究代表者と研究分担者の打ち合わせ用として用意していた国内旅費を執行することができなかったため. 物品費については,当該年度に実施できなかった実験装置の構成に必要な消耗品の購入に使用する.旅費については,当該年度の分担額で次年度の旅費に追加し,研究代表者と研究分担者の打ち合わせ,および国内での成果発表のための国内旅費として使用する.
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