2014 Fiscal Year Research-status Report
水飲み鳥の揺動原理に基づく熱機関からの利用可能な余剰エネルギー回収システムの開発
Project/Area Number |
25630442
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
小作 敏晴 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (90295840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 学 大阪学院大学, 情報学部, 教授 (10092785)
厚海 慶太 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (80453207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 静電誘導式発電機 / 蓄積電荷観測 / 3DCAD設計 / 3Dプリンタ造形 / 非接触計測 / 余剰動力推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,「水飲み鳥」と呼ばれるガラス製玩具の揺動運動を工学的な観点から定量的に解析し,エネルギープラントとしての実現可能性を検証することを目的としている.当該年度は3年計画の2年目であり,(1)初年度未達成の課題の遂行,(2)動作原理に基づく熱機関モデルの設計と製作,(3)余剰エネルギー回収のための発電機構の設計と製作,をそれぞれ実施した. (1)は,数理モデルの構成を目的として,市販の水飲み鳥の運動を非接触計測する装置を構成し,データを解析して余剰動力の推定値を得た.今後,長時間連続計測のための実験装置の改良とデータ処理の自動化・高速化を実施し,より多くのデータ収集と解析を進める. (2)は,将来の実用プラントへの展開を考えたとき,ガラス以外の材料による構成が望ましいため,市販の水飲み鳥の原形状・寸法を基準として,銅やステンレス等の金属材料による熱機関モデルの設計と製作を検討した.最初に,3DCADで原型を設計し,容易に形状構成が可能な3Dプリンタを用いて樹脂製の原型を部分的に試作した.今後,この樹脂製原型をもとに金属製の熱機関モデルを作成する.この過程は既設の3Dプリンタでは作製不可能であるので,専門メーカに外注依頼する. (3)は,水飲み鳥の揺動の振幅・周期は常に変動する,周波数は数Hz程度である,余剰エネルギーが非常に小さい,などの特性から機械的変速機構を付加することが困難であることを踏まえ,Wimshurst起電機,Kelvin発電機,電気盆(起電盆)等からヒントを得て,新しい静電誘導式の発電機構を提案し,原理模型を製作するとともに,発電動作を検証した.モータを用いて原理模型を動作させた結果,主コンデンサに電荷が蓄積され,徐々に電圧が上昇していく様子をリアルタイムに直接観測することに成功し,電極形状や整流子の接触タイミングの最適化のための有用な知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度は3年計画の2年目であり,研究実績の概要で述べた(1)初年度未達成の課題の遂行,(2)動作原理に基づく熱機関モデルの設計と製作,(3)余剰エネルギー回収のための発電機構の設計と製作,のうち,(2)と(3)が交付申請時の2年目の研究計画である. (1)は,先行研究調査に時間を要したため,初年度の課題を継続して実施することにした.実験装置を構成し,計測と解析を実施して,数理モデルの出力となる余剰動力の推定値を得ることができた.しかし,使用機器の機能上の制約により,長時間連続計測ができない,画像解析を1コマずつ手作業で行う必要がある等の問題が解決できず,数理モデルを構成して成果をまとめるために必要なデータの収集と解析を完了するに到らなかった. (2)は,金属製熱機関モデルの金型製作に必要となる原型製作のための3DCAD製図の図面については作成を終えている.その後の計画が遅れている理由としては,現有の3Dプリンタの造形可能な材料が樹脂のみ対応であるため,樹脂製原型で動作確認を行う必要があるが,作動液剤と原型材質の長期の非親和性が確認できていないことにある.また,液剤を充填・密封する際の注入方法,注入口の設置位置およびシーリング方法について,動作可能性を確保しながら実効的に決定しなければならないため,最終決定できていないことにある. (3)は,初年度から実施し,発電原理および模型による発電の実証は完了している.当該年度は,より詳細に発電の様子を直接観察できる環境を整備した.実験の結果,単に電極の実効面積を増大させるのみでは期待するような発電効率の向上は見込めないこと,コンデンサを形成する1対の電極(固定・可動)のギャップを適切に維持するための何らかの工夫を要すること,などの知見を得た.不完全ながら比較的容易に発電動作中の波形を捕捉できたことは特筆すべき成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(3年計画の最終年度)は,「熱機関モデル機の複合システムから得られるエネルギーの平準化・集約化の方法を検討し,エネルギープラントとしての可能性を考察する」としていた.しかし,当該年度までの研究が遅れていることから,複合システムの開発は中止し,数理モデルの構成,単体の熱機関モデルの製作,発電機構との統合による単体エネルギープラントの構成と性能評価,および成果の公表を課題として研究を推進する. 数理モデルの構成では,現在,画像認識システムの導入による実験装置の改良と,データ処理の自動化・高速化について検討している.これらが実現できれば,統計的に十分な量のデータ収集と解析結果が期待できる. 単体の熱機関モデルの製作では,まず樹脂製原型を3Dプリンタで造形し,これに作動液剤を充填・密封した後,その他の構成要素を含めて樹脂製単体モデルを完成させる.そして,数理モデルとの比較から単体モデルの熱機関としての動作可能性について検証し,形状寸法を最適化する.その後専門メーカに外注依頼して金属製の単体モデルを製作し,発電機構と統合する. 本研究で提案する発電機構で得られる電気は静電誘導に基づく直流であり,電源インピーダンスが非常に高い(高電圧・低電流).そのため,耐圧や漏れ電流などの要求が特殊となり,半導体を用いた一般的な電子整流回路を適用することが難しく,機械式整流機構の形状および材質の最適化が必要である.得られた電力を無駄なく消費するためには,何らかのインピーダンス変換回路が必要となるが,その最適設計は対象とする負荷に依存するので,負荷に応じたインピーダンス変換回路を考察する.さらに,金属製単体モデルと統合して単体のエネルギープラントを構成する.この発電性能を評価し,エネルギープラントとしての可能性を検討する.以上の研究課題をまとめ,成果公表を実施する.
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Causes of Carryover |
当該年度は3年計画の2年目であり,物品費については,水飲み鳥の動作原理に基づく熱機関モデルと余剰エネルギー回収のための発電機構の製作費として執行を計画していた.熱機関モデルの製作では,始めに樹脂製の原型を製作し,その動作確認と検証の後,金属製熱機関モデルの製作を専門メーカに外注依頼する予定であったが,原型の製作が遅れており,原型製作の段階では既設の機器と材料で研究を遂行した.また,発電機構の製作については,提案する静電誘導式原理模型の製作段階で必要な材料を購入した.これと熱機関モデルとの統合の段階でさらに必要な材料を購入する予定であったが,熱機関モデルの製作が遅れているため,当該年度では購入しなかった.旅費については,実施計画に遅れがあり,金属製熱機関モデルを外注する際の打ち合わせ,および成果発表のための出張費を執行することができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費については,金属製熱機関モデルを専門メーカに外注する際の製作費,熱機関モデルと発電機構を統合し単体のエネルギープラントを構成する際に必要な材料購入費として使用する.旅費については,金属製熱機関モデルを外注する際の出張費,研究代表者と研究分担者の打ち合わせのための出張費,および成果発表のための出張費として執行する.
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