2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25640008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 聖 金沢大学, 医学系, 教授 (10019614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉谷 加代 金沢大学, 保健学系, 助教 (20162258)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 運動神経 / 感覚神経 / 神経軸索再生 / ゼブラフィッシュ |
Research Abstract |
サカナの脊髄は損傷を受けても再生することが知られているが、その分子機構や運動神経,感覚神経に区分して詳細に検討した報告は皆無である。そこで、我々はゼブラフィッシュの脊髄を完全に切断する損傷モデルを作製し、運動神経と感覚神経に区別して生存シグナルや行動学的再生のタイムスケジュールを決定することを実行した。平成25年度の実績は以下に要約される。 まず、運動神経系については、脳幹中の上位運動神経と脊髄にある下位運動神経に区分した。上位運動神経は脳幹NMLFやIMRFに存在し、脊髄切断部位からのニューロトレーサーにより容易にマーキングできた。数としては各核中に40~50個の上位運動ニューロンが確認された。また、下位運動ニューロンはマーカーHC5抗体陽性として脊髄前根に確認できた。脊髄切断後の運動ニューロンの応答として、上位運動ニューロンでは切断後IGF-1(インシュリン様成長因子-1)が上昇し、その後p-Akt(抗アポトーシス分子)やS6蛋白の活性化が見られた。上位運動ニューロンでは細胞体がそのまま生存し、IGF-1, PI3K, mTOR系シグナルの活性化により、生存軸索再伸長を起こしているものと示唆された。脊髄内の神経の切断の変化として、中心管周囲に切断後急激にsox2陽性の幹細胞様前駆細胞が出現することが判明した。この前駆細胞からの前根運動ニューロンへの分化移動について検討を加えているところである。 次に、感覚神経については、脊髄切断部位の下位において、トレーサー陽性となる神経細胞体がDRGと脊髄に見られた。ただし、脊髄中にある感覚性投射ニューロンの数は、脊髄切片の3~4枚に1~2個と極めて少なかった。DRGの逆行性トレーサー陽性細胞は、各DRGに4~5個確実に認められた。しかしながら、脊髄切断後IGF-1/PI3K/mTOR系の活性化は感覚神経細胞では認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動神経系においては、上位運動ニューロンはPI3K/Aktの生存シグナルの活性化により、脊髄切断後も生存し続け、更に軸索も再伸長することが分かった。また、PI3K/Aktの上流シグナルとしてはIGF-1の、下流シグナルとしてはmTOR系のS6蛋白の活性化が見られた。また、下位運動ニューロンでは、生存シグナルよりは、中心管周囲に神経前駆細胞(sox2陽性,PCNA陽性)が背髄損傷後速やかに出現することより、新たな幹細胞からの分化,再生が強く示唆された。また、脳幹の上位運動ニューロンの培養系も何とか確立でき今後in vitro系の実験を計画中である。 一方、感覚神経細胞については、脊髄切断後もトレーサー陽性細胞が存在することより、感覚細胞も長期生存することが証明された。しかしながら、IGF-1の活性化は見られず、それ以外のシグナル系路について現在検討中である。 行動再生の評価システムとして、遊泳軌跡を3次元に捉えるコンピューター画像処理装置は完成しており、この装置に種々の電気的刺激や感覚刺激装置を組み込み、脊髄損傷後のサカナの行動を精査することで、運動神経系と感覚神経系とを区別して評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
上位運動神経系に関しては、サカナ脳幹をあらかじめ脊髄切断後のニューロトレーサーにより上行性神経細胞を標識し、脳幹神経細胞の分離培養を行い、トレーサー陽性細胞の生存と軸策伸長についてIGF-1→p-Akt→S6蛋白系のgain of functionとloss of functionの実験を実施し。再生の分子機構を明らかにする。 下位運動ニューロンについては、中心管周囲の前駆細胞からの分化,移動について成熟運動神経マーカーHC5を用いて継続的に精査し、本仮説(前駆細胞からの分化再生説)を確認したい。 感覚神経細胞については、引き続き生存シグナルの検索、IGF-1やsox2等の関与を切断後から細かく精査する。更にアポトーシスシグナルBaxやカスペース3等の活性化やTUNEL法等を駆使し、運動神経と感覚神経の差異について詳細に検討する。また、脊髄内の感覚神経細胞をトレーサーラベルした後、培養系に移し、単離細胞レベルで実施する。更に種々の再生分子を遺伝子導入し、感覚神経細胞の生存,軸索伸長を促進させ、感覚神経の再生ポテンシャルを確認する。 行動実験より、運動神経,感覚神経再生の評価について、切断後からのタイムスケジュールを追跡確認する。特に種々の刺激からの逃避行動を目安として、遊泳軌跡を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に繰り越した額は約40万円である。これは、ゼブラフィッシュ脳幹の単離培養技術を確立することに時間を要し、本格的な培養実験のための特殊試薬や抗体類の購入を断念したことによる。 更に、脊髄内の感覚神経細胞の数が少なくその確認のため時間を要したことによる。 次年度はこの2点が解決できたため各種特殊対策,インヒビター,抗体類,siRNAのためのオリゴヌクレオチドの購入を予定している。
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Research Products
(6 results)