2013 Fiscal Year Research-status Report
組織型特異的がん遺伝子THG1の腫瘍形成能に関する研究
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25640059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 光保 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20194855)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | THG-1 / 扁平上皮癌 / Keap-1 / Nrf2 |
Research Abstract |
THG-1の免疫沈降で得られた共沈タンパク質をTOF/MS解析で網羅的に解析して、THG-1との結合が確認された分子の中から、細胞増殖促進ならびに腫瘍形成に関わる分子としてKeap-1を同定した。THG-1は、Keap-1に結合し、Nrf2のユビキチン化ならびに分解を抑制した。THG-1の発現は、Nrf2の転写活性のKeap-1による抑制を解除されることも示された。また、THG-1のKeap-1結合部位を同定し、ここに変異を入れたTHG-1では、腫瘍形成促進能が消失していた。THG-1ノックアウトマウスの皮膚においてNrf2の標的遺伝子の発現が低下していることも見いだした。この他にもTHG-1の腫瘍形成促進能に関与することが示唆される結合タンパク質が同定されており今後の解析課題となっている。 RAS/ERK経路によってリン酸化されることを同定したTHG1のリン酸化部位に対する抗体を作製した。正常な重層扁平上皮では、THG-1の発現は基底細胞のみに限局していたが、8割以上の扁平上皮癌(食道癌、子宮頸癌)では、がん細胞集団全体にTHG-1が陽性で、がん細胞では、THG-1発現の停止あるいはTHG-1の分解に何らかの異常が共通に起こっていることが示唆された。また、THG-1の発現部位では、症例により程度の差はある程度あるが、多くの場合、THG-1のリン酸化も確認された。 THG-1の腫瘍形成能を亢進する点変異あるいは多型があることも示唆された。今後、健常部とがん、がんの原発巣と転移などでゲノム解析を行い、その詳細を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
THG-1が扁平上皮癌の腫瘍形成能を亢進していることを示し、その作用機序としてKeap-1に結合し、生理的にNrf2の活性制御を行っていることを発見したことは画期的な研究成果であり、現在論文投稿中である。変異体の検索を含め、臨床病理学研究は予定より進んでおらず、バイオバンクとの共同研究を模索する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
最初の計画に変更はない。 今後も、THG-1の腫瘍形成促進作用の分子機序について中心的に解析する。同時に扁平上皮癌組織では、THG-1の発現が、がん細胞集団全体に拡がっている機序についても検討する。変異体あるいは多型体については、症例を増やすように検討を続けるとともに抗体を作製して、より簡便な変異体検出方法を確立する。 さらに、THG-1変異マウスの表現型を詳細に解析するとともに、皮膚化学発がん実験を行って、THG-1が、がんの発生に及ぼす影響について解析する。また、移植腫瘍を形成した後にTHG-1をノックダウンすることで、腫瘍軽視絵に及ぼす影響について検討し、THG-1を標的とした扁平上皮癌の治療法の効果について検証する。
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Research Products
(2 results)