2013 Fiscal Year Research-status Report
Chromothripsis、その新たなるゲノム構造異常の生成機構の解明
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25640062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん / 全ゲノムシークエンス / 染色体粉砕 / chromothripsis / ゲノム不安定性 |
Research Abstract |
がんの全ゲノムシークエンス解析により新たなゲノム構造異常としてchromothripsis(染色体粉砕)が発見された。一度のeventで染色体局所領域に数十~数百ものゲノム再構成が起きる現象である。多段階のゲノム構造異常とは違った生成機構が示唆されるが詳細は不明である。今回の研究では、申請者らが詳細なゲノム・エピゲノム解析情報を収集したがん細胞株を用いてchromothripsis(染色体粉砕)生成機構の解明を目指した。Chromothripsisは局所的なゲノム領域に生じた複数箇所での切断後再構成によって惹起されると予想されている。このことから、口腔がん細胞株 (HOC313)から、「細胞文脈的」にゲノム不安定性が異なっている親株・亜株 (HOC313-LM)のペアを樹立している。遺伝的同一性(isogenic)でありながら、細胞文脈的にゲノム不安定性に差異を認めるこれら二組の親株・亜株ペアを用いて、X線による細胞全照射、ならびに(独)放射線医学総合研究所・小西輝昭博士らによりで開発されたマイクロビーム照射装置 (SPICE) による陽子線局所照射を施し、DNA二重鎖切断後にChrmothipsisで検出される複雑ゲノム再構成の出現の有無を各所のゲノム解析技術で検討した。さらに最近、他の研究グループより小核 (micronuclei)の出現とその染色体ゲノムへのreunionがChromothripsisの原因となることが示唆されており、これら照射後細胞株での小核の出現頻度を比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮口腔がん細胞株 (HOC313)から遺伝的同一性(isogenic)でありながら、細胞文脈的にゲノム不安定性に差異を認める親株(HOC313)と亜株 (HOC313-LM)のペア細胞株を解析対象に、X線全照射、SPICEによる陽子線の細胞核局所照射を施行した。照射直後の細胞において、小核の出現頻度の亢進を確認し、照射後細胞からそれぞれ複数のクローンを樹立した。引き続き、樹立クローン細胞株を対象にSNPアレイ解析によりゲノムコピー数変化を解析し、照射前細胞株には検出されていないゲノム一次構造変化が見出されている。特に、SPICEによる陽子線照射後に樹立した細胞クローンの複数において、特定の染色体に複雑なゲノム一次構造の変化が集中する傾向が見出され、chromothripsisに類似のゲノム構造変化が惹起された可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
SNPアレイ解析でゲノム一次構造変化が検出されたクローンを対象に、M-FISH法ならびに次世代型シークエンサーによる全ゲノムDNAシークエンスを施行する。M-FISH法では、照射前後の細胞・クローン間での染色体レベルでの核型を比較し、SPICEによる局所陽子線照射によって誘発されたゲノム一次構造異常の詳細を解析し、その結果からゲノム構造異常の生成機構を理解する。さらに、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析では、SNPアレイでは見出されないchromothripsis様の染色体局所領域に集中した複雑な切断・再結合による複雑なゲノム構造異常の存在の有無を調べる。chromothripsisによるDNA二重鎖切断修復機構を解明するため、候補chromothripsis領域の再構成切断点の塩基配列を決定する。再構成点周辺の塩基配列より、DNA二重鎖切断後修復が、非相同末端再結合 (Non-Homologous End-Joining: NHEJ)、微相同介在切断誘導型(microhomology-mediated break-induced replication: MMBIR)機序に起因するか、あるいは、全く別のメカニズムに拠るかなどを考察し、新しいがんゲノム構造異常であるchromothripsisの生成機構の解明へと向かう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回の研究では、遺伝的同一性(isogenic)でありながら、細胞文脈的にゲノム不安定性に差異を認めるこれら二組の親株・亜株ペアを用いて、頻回の細胞へのX線全照射と、クローンの樹立、並びに得られたクローンの詳細なゲノム解析を計画しており、これらの実施にかなりの経費を要すると計画していた。しかし、(マイクロビーム照射装置 (SPICE) による陽子線局所照射に関して、照射SPICEの開発者である独)放射線医学総合研究所・小西輝昭博士と共同研究を実施することが可能となり、平成25年度において、その関連経費支出の軽減化することができた。このために当初計画の初年度使用額を次年度に移行する研究計画とした。 平成26年度は、M-FISH法ならびに次世代型シークエンサー(NGS)法による全ゲノムDNAシークエンスを実施予定である。M-FISH法では、照射前後の細胞・クローン間での染色体レベルでの核型を比較し、SPICEによる局所陽子線照射によって誘発されたゲノム一次構造異常の詳細を解析し、その結果からゲノム構造異常の生成機構を理解する。さらに、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析では、SNPアレイでは見出されないchromothripsis様の染色体局所領域に集中した複雑な切断・再結合による複雑なゲノム構造異常の存在の有無を調べる。M-FISH法ならびにNGS法によるゲノム解析には、いずれも比較的高額な経費を要するために、これら研究に充当する。
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Research Products
(36 results)