2014 Fiscal Year Research-status Report
難治性乳癌を克服するためのDNA修復因子の発現量制御機構の解明
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25640086
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 奈津子 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50361192)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗がん剤感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性乳がん原因遺伝子BRCA1はその生殖細胞系列変異により、乳がん、卵巣がんを引き起こすがん抑制遺伝子で、近年は難治性乳がんのTriple negative乳がんとの関わりが注目されている。BRCA1変異による家族性乳がんやBRCA1の発現量が低い散発性がんは、DNA架橋剤である白金製剤や分子標的治療薬であるPoly(ADP-Ribose) Polymerase (PARP)阻害剤に高感受性であるが、タキサン系薬剤には抵抗性で、BRCA1の発現量により抗がん剤感受性が異なる。我々は、BRCA1の新規結合分子を同定し、本分子がDNA損傷応答に関与し、BRCA1の発現量を制御することを発見した。本研究はこの分子によるBRCA1の発現量制御機構を解明し、この機構に関与する分子の治療のバイオマーカーや分子標的としての有用性を検討し、難治性のTriple negative乳がんを克服する個別化医療を開発することを目的としている。 BRCA1はBARD1とヘテロダイマーを形成し、DNA修復や中心体制御に関与することが明らかになっているが、本年度の研究により、このがBRCA1だけでなく、BARD1の発現量も制御することが明らかになった。また、昨年度の解析により、RNF43によるBRCA1の発現量の制御には、BRCA1のN末端の領域が重要であることが明らかになっていたが、BARD1と結合能が消失する変異体では本分子によるBRCA1の発現量の変化がなくなり、本分子によるBRCA1の発現量制御にはBARD1が重要な役割を果たすことが明らかになった。一方、本分子によるBARD1の発現量の変化には、BRCA1との結合領域が欠失しても生じ、BRCA1には非依存的であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本分子がBRCA1だけでなく、BARD1の発現量も制御することが明らかになった。また、本分子によるBRCA1の発現量制御にはBARD1が重要な役割を果たすことが明らかになった。BRCA1とBARD1の発現量の制御機構が複雑であることが明らかになるとともに、BRCA1とBARD1は、ヘテロダイマーを形成し、DNA修復に関与することから、本分子が、抗がん剤感受性に大きく関与することを示すことができた。よって、本分子が抗がん剤感受性を予測するバイオマーカーとして有用である可能性が高まったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本分子のBRCA1の発現量の制御メカニズムの解明に加えて、BARD1の発現量の制御メカニズムの解明も合わせて行う。本分子の、BRCA1 とBARD1の発現量の制御におけるユビキチン化修飾について、精製タンパク質を用いて生化学的にさらに詳細に検討していく。また、BRCA1の発現量制御に働くUBE2Tが、BARD1の発現量の制御には関与するかどうかも検討する。また、プロテオミクス解析により、本分子の新規結合分子を同定も進める。 さらに、Triple negative乳がんとその他のがんの細胞株や臨床検体で、本分子、UBE2T、本分子の新規結合分子とBRCA1とBARD1の発現量との関連を解析する。培養細胞については、抗がん剤感受性との関連についても検討し、これらの分子の抗がん剤感受性を予測するバイオマーカーとしての有用性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
学会発表の旅費や人件費を他の経費でまかなうことができ、また物品費も予定額より少ない金額でまかなうことが出来たため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究成果より、本分子が、BRCA1に加えて、BARD1の発現量の制御にも重要であることが明らかになった。さらなる解析のための細胞学的、生化学的な実験のための試薬を購入する。また、本分子の新規結合分子を同定したので、その抗体を購入する。そのため、昨年度より、物品費に多くの経費を要する予定である。また、次年度は本研究の最終年度であることから、これまでの研究成果のための学会発表のための旅費や論文発表のための英文校正に多く使用する。
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