2013 Fiscal Year Research-status Report
クロマチン介在性抗がん剤耐性機構に基づく新たな分子標的治療の試み
Project/Area Number |
25640093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
水上 民夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (80367896)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子標的治療 / 抗がん剤耐性 |
Research Abstract |
本研究では、JARID1Aを標的とする全く新規な作用機構を持つ耐性克服剤の開発を目指す。本年度は、第一関門となる、抗がん剤耐性克服剤のPOC (Proof of Concept)評価系の構築を試みた。 分子標的抗がん剤であるGefitinibに高い感受性を示すヒト肺がん細胞株PC9にFLAG タグ付JARID1Aの発現ベクターを導入し、薬剤耐性株を樹立した。PC9に対するGefitinibの細胞増殖抑制の50%細胞増殖阻害濃度(IC50)は0.092μMであるが、JARID1A発現ベクターを導入し得られた細胞株の多くはGefitinibに対して耐性を示し、最高283倍の耐性を示すクローンもあった。抗FLAG抗体を用いるウエスタンブロット法により、薬剤耐性化したがん細胞中のJARID1Aの発現量の増加と薬剤耐性化が相関していることを確認し、POC評価用細胞株として選択した。 次にJARID1A発現ベクターをHEK293細胞に一過的に導入・発現し、ヒストンH3の4番目のメチル化リシンの脱メチル化を免疫細胞染色で検出できる、細胞レベルの酵素アッセイ系を構築した。JARID1A酵素阻害のリード化合物NCDM81bが、本評価系においてもJARID1Aの脱メチル化活性を阻害できることを確認した。 NCDM81bはJARID1Aの過剰発現により誘導した上記のGefitinib耐性細胞に対して耐性を見かけ上解除する活性を示したが、単剤でも本細胞の増殖を阻害した。本結果は、JARID1Aが耐性原因分子としてだけでなく、細胞がん化の原因分子としても働いている可能性を示唆しており、次年度以降も引き続き検討の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の主要な目的であり、抗がん剤耐性克服剤のPOC評価系構築の中核的な課題である、JARID1A過剰発現による抗がん剤耐性株を取得することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の2課題に取り組む。 (1)抗がん剤耐性解除の薬効バイオマーカーとしてのJARID1A標的遺伝子の同定 抗がん剤耐性克服剤のPOC評価系の構築研究の一環として、JARID1A過剰発現により惹起された抗がん剤耐性株において、親株に比べて発現が亢進または低下する遺伝子をマイクロアレイ法によりゲノムワイドに同定する。耐性株において、発現亢進遺伝子の場合はRNA干渉により、また発現低下遺伝子の場合は過剰発現させることにより、耐性の軽減作用を確認できた遺伝子を、薬効バイオマーカーとして選択する。 (2)あらたな阻害構造ファルマコフォアをもつJARID1A酵素阻害剤の探索 化合物ライブラリーをソースとするランダムスクリーニングを実施し、あらたな阻害構造ファルマコフォアを探索する。
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