2013 Fiscal Year Research-status Report
概日リズムをモデル系に新規ポリA鎖長決定法を用いた翻訳制御プラットフォームの構築
Project/Area Number |
25640100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
程 肇 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (00242115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 概日リズム / 時計遺伝子 / 視交叉上核 / Poly(A) / 翻訳制御 / Lark |
Research Abstract |
遺伝子発現制御は殆どの生物の営みの重要な基盤をなす。この制御機構は大きく転写制御と転写後制御機構(翻訳やタンパク質分解)に分けられる。最近転写制御だけでは説明できないタンパク質発現制御の具体例が集積されつつあるが、今まで主に転写制御に焦点が当てられてきたため、翻訳制御についての解明は殆どなされていない。ましてや翻訳制御の重要な一端を担うmRNA ポリA 鎖長を包括的に解析する研究は今までない。一般にmRNA のポリA 鎖長は、同一遺伝子由来でも不均一な分布をもち、その長さ(平均値と分散)を簡便にかつ厳密に決定できる方法は今のところない。そこで従来のAnchored RT-PCR 法を改良して、ポリA 鎖を簡便に決定できるPACHINCO(Poly(A) Capture by Hairpin Chimeric Oligonucleotide)-RT-PCR 法を考案した。本研究では、新規に開発したハイスループットなmRNA ポリA 鎖長決定法を用いて検索した、細胞内mRNA ポリA 鎖長が概日性時刻依存的制御を受ける遺伝子が示す、翻訳の制御ダイナミクスを明らかにする。それにより生命科学の重要な主題である概日リズムにおいて、ポリA 鎖長と翻訳の両制御の関係が示す意義の解明を目的とする。本年度はPACHINCO-RT-PCR 法のハイスループット化さらに進めるために、まず蛍光プライマーを導入しDNA シークエンサに対応させた改変PACHINCO-RT-PCR 法を構築する。この方法を用いてポリA 鎖長に概日リズムを有するmRNA の検索をゲノムワイドに展開することを試みた。そして、その結果をプロテオーム解析により得られた、発現リズムを有するタンパク質との比較参照を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画は以下である。 [1] 視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたプロテオーム解析の実施。 [2] 視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCRの実施。 [3] ポリA 鎖長のデータ比較解析ツール及び発現統合データベースの構築。 [3]-①ポリ A 鎖長に概日リズムが見られるmRNAの配列解析 [3]-②トランスクリプトーム、プロテオームとPACHINCO-RT-PCRの3者の結果を組み合わせた発現統合データベースの構築[3]-③ Lark によりポリA 鎖長が制御されているmRNA の検索とその解析 [4] シークエンサに対応させたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCR 法の開発。 この中で、[2]、[3]-①、[3]-②、及び[4]については概ね順調に終了させることができた。特に、[4] シークエンサに対応させたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCR法の開発を、プライマーの開発、及びその反応と解析の条件の決定により、終えたことが大きい。その結果、この方法を応用することで、ラット視交叉上核由来細胞において、多数のポリA 鎖長に概日リズムが見られるmRNAを集積することができた。しかし、[1] 視交叉上核(SCN)及びSCN由来細胞を用いたプロテオーム解析の実施、及び[3]-③LarkによりポリA 鎖長が制御されているmRNAの検索に、特に前者の技術的な問題から本来予想していた以上の期間が必要となった。そのため、平成25年度中に、[3]ポリA 鎖長のデータ比較解析ツール及び発現統合データベースの構築までいたらなかった。従って、これらの計画をを平成26年度内に完成させ、ポリA 鎖長のデータ比較解析ツール及び発現統合データベースの構築を同年度内に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の推進方策は以下である。 [1] 視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたプロテオーム解析の実施。 ①マウスSCN からの粗タンパク質溶液の抽出。実験用マウスを明暗(12時間明:12時間暗)及び恒暗(24 時間暗)条件下で飼育し、4時間おきに1 サイクル分(計6点)、脳SCNをサンプリングし、それより粗タンパク質溶液を抽出する。②マウスSCNを用いたプロテオーム解析の実施。抽出したマウスSCNのRNA を試料にして、プロテオーム解析を実施する。③ラットSCN由来細胞からの粗タンパク質溶液の抽出。以前研究代表者が作製したラットSCN由来細胞(RS182細胞)を用いて、4時間おきに1 サイクル分(計6点)、脳SCN をサンプリングし、それより粗タンパク質溶液を抽出する。④ラットSCN 由来細胞を用いたプロテオーム解析の実施。抽出したラットSCN 由来細胞のRNAを試料にして、プロテオーム解析を実施する。 [2]ポリA鎖長のデータ比較解析ツール及び発現統合データベースの構築。 ①LarkによりポリA 鎖長が制御されているmRNA の検索とその解析。すでに構築した全mRNAポリA 鎖長の経時的変化を取り込んだゲノムワイドなデータベースに基づき、ポリA 鎖長に概日リズムがみられるmRNAについて位相差に基づいたクラスタリングを行い、各位相で特異的な伸縮を示すmRNAに共通な配列を抽出し、それらの間の相同性あるいは相違性について詳細に解析する。特にLarkによりそのポリA鎖が制御されているmRNAを同定する。その中から概日時計遺伝子を抽出して、その遺伝子産物発現とポリA鎖伸縮の位相関係、そしてそれが概日リズム形成に果たす生物学的意義について解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の計画は以下である。 [1] 視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたプロテオーム解析の実施。[2] 視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCRの実施。[3] ポリA 鎖長のデータ比較解析ツール及び発現統合データベースの構築。[3]-①ポリ A 鎖長に概日リズムが見られるmRNAの配列解析 [3]-②トランスクリプトーム、プロテオームとPACHINCO-RT-PCRの3者の結果を組み合わせた発現統合データベースの構築 [3]-③ Lark によりポリA 鎖長が制御されているmRNA の検索とその解析 [4] シークエンサに対応させたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCR 法の開発。この計画中[1] 及び[3]-③の実施に予想していた以上の期間が必要となった。従ってこれらの計画をを平成26年度内に完成させることとした。 以下の推進に次年度使用をする。 [1] 視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたプロテオーム解析の実施。[2]ポリA鎖長のデータ比較解析ツール及び発現統合データベースの構築。[2]-①LarkによりポリA 鎖長が制御されているmRNA の検索とその解析。すでに構築した全mRNAポリA 鎖長の経時的変化を取り込んだゲノムワイドなデータベースに基づき、ポリA 鎖長に概日リズムがみられるmRNAについて位相差に基づいたクラスタリングを行い、各位相で特異的な伸縮を示すmRNAに共通な配列を抽出し、それらの間の相同性あるいは相違性について詳細に解析する。特にLarkによりそのポリA鎖が制御されているmRNAを同定する。その中から概日時計遺伝子を抽出して、その遺伝子産物発現とポリA鎖伸縮の位相関係、そしてそれが概日リズム形成に果たす生物学的意義について解析する。
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