2014 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子のde novo誕生の機序に迫るバイオインフォマティクス研究
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25640112
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢田 哲士 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10322728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子 / de novo誕生 / バイオインフォマティクス / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子の転写や翻訳の実体が詳らかになると、多くの遺伝子がde novoに生み出されていることが明らかになった。ここでは、遺伝子のde novo誕生の機序に迫るバイオインフォマティクス研究を展開する。そこで、de novoに誕生した遺伝子がゲノムワイドに同定されているモデル生物に着目し、近縁生物種とのゲノム比較を行ない、遺伝子がde novoに誕生した前後の共通祖先のゲノム配列を推定し、続いて、de novoに誕生した遺伝子の相同領域をそれらのゲノム中に同定する。そして、遺伝子がde novoに誕生する前後にそれらの相同領域に蓄積した突然変異やそれらの相同領域の塩基配列に観察される統計的な性質を調べる。こうして、遺伝子がde novoに誕生したゲノム領域を特徴付けるとともに、特徴間の因果関係を推定する。そして、それらの特徴をさまざまなモデル生物の間で比較し、遺伝子をde novoに生み出すゲノム領域の種を越えた共通性と種に依存した特異性を明らかにする。さらに、それらの特徴に基づいた遺伝子のde novo誕生の予測が可能かどうかを検証する。
今年度の大きな発見は、Saccharomyces cerevisiaeゲノムにおいて、de novoに遺伝子が誕生した領域は、誕生の前から、高いGC含量が保たれていたことである。すなわち、一般に、遺伝子はGC含量の高い領域に存在する傾向があるが、それは、このような領域から遺伝子が生まれやすい傾向を反映したものであると考えられる。このことは、GC含量の高い塩基配列は弱いながらもプロモーター活性を持つという観察と合わせると、興味深いde novo遺伝子誕生のシナリオを考えることができる(後述)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の発見により描くことができる遺伝子のde novo誕生のシナリオは、以下の通りである。GC圧にさらされているゲノム領域では、高いGC含量が維持される。また、限定された領域に蓄積した中立な突然変異は、偶然、高いGC含量をもたらす場合がある。これらの領域は、弱いながらもプロモーター活性を持つので、転写される。そして、転写された領域中にある翻訳開始のシグナル配列を持つORFが翻訳され、翻訳されたORFの中で淘汰圧がかかったものが遺伝子へと進化する。
ゲノム配列のGC含量と遺伝子のde novo誕生の関係については、以下のことも明らかになった。遺伝子間領域のGC含量に比べ、de novoに誕生した遺伝子のコドンの3文字目は有意に高いGC含量を示した。そして、その値は、誕生してからの時間に関わらず、ほぼ同じ値を示した。このことは、遺伝子がde novoに誕生した領域は、絶えず一定のGC圧にさらされていることを示している。一方、de novoに誕生した遺伝子全域のGC含量は、誕生してからの時間に従って増加する。これは、コドンの適合を反映したものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、Saccharomyces cerevisiaeゲノムにおいて、遺伝子がde novoに誕生する前後に、その共通祖先ゲノムの相同領域に蓄積した突然変異の頻度分布も明らかにしたが、他の遺伝子間領域と比べ、統計的に有意な頻度分布の違いを観察することができなかった。今後は、共通祖先のゲノム配列の推定精度を指標にしてデータを精査し、再度、蓄積した突然変異の頻度分布を調べる。また、遺伝子がde novoに誕生する前後に蓄積した突然変異により、最長のORF長がどのように変化したか、翻訳のシグナル配列が生成されたか、プロモーター領域の塩基組成はどのように変化したか、などについても調べる。
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Causes of Carryover |
端数が出たため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に適切に使用する。
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