2013 Fiscal Year Research-status Report
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25650006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武田 俊一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60188191)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | DNA組換え / 標的組換え / DT40 / ニワトリBリンパ細胞 / プロテオーム解析 |
Research Abstract |
(1)BRCA1複合体を作る分子を精製 BRCA1は、停止した複製フォークや2重鎖DNA切断に集合して、シャペロンとして、相同DNA組換えを促進する。2重鎖切断をおこす抗がん治療薬(カンプトテシンおよびエトポシド)で細胞を処理前後に、BRCA1複合体を精製し、複合体の構成因子を質量分析にて同定した。既知の構成因子は、すべて同定できた。その中には、Abraxa, BRCA1, BRCC36, CtIP, Merit40, Rad51, RAP80 が含まれる。したがって、BRCA1複合体精製⇒ 質量分析の実験手法は、最適化できた。カンプトテシンによる2重鎖切断(エトポシドによる2重鎖切断ではなく)は相同組換えによって修復される。よって、カンプトテシン処後の場合の複合体のみに含まれる分子には、新規の相同組換え因子が含まれている可能性がある。そのような分子が、複数個同定でき、その中にはプロテオソーム構成因子があった。 (2)MRE11複合体を作る分子を精製 H25年に実施していない。既知の複合体構成因子(DNA2ヌクレアーゼ)の機能解析を実施した。 (3)A procedure to isolate proteins on nascent DNA(iPOND)をDT40用に最適化 iPONDとは、複製フォークに存在する分子を濃縮精製する手法である。DNA複製を抑制する2mM Hydroxyurea 処理条件下に細胞を培養し、iPONDを野生型細胞とRNF8-/-細胞を比較しながら実施した。野生型細胞のみに濃縮されたタンパク分子は、ATRX, FANCD2-I, NCAPD2, NUSAP1があった。これらの分子は、RNF8ユビキチン化酵素によって制御されながら、 停止した複製フォークの崩壊を防止している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「平成25年度の研究実施計画」の中の「(1-1) BRCA1複合体を作る分子を精製する方法を最適化」は、完成した。具体的には、2重鎖切断をおこす抗がん治療薬(カンプトテシンおよびエトポシド)で細胞を処理前後に、BRCA1複合体を精製し、複合体の構成因子を質量分析にて同定した。その結果、既知の構成因子(Abraxa, BRCA1, BRCC36, CtIP, Merit40, Rad51, RAP80)がすべて同定できた。 (2)「平成25年度の研究実施計画」の中の「(1-2) MRE11複合体を作る分子を精製する方法を最適化」は未だ開始できていない。 (3)平成25年度の研究実施計画」の中の「(1-3) iPOND(A procedure to isolate proteins on nascent DNA)をDT40用に最適化」も実施した。この実験でも、当初予想された分子が、iPONDによって精製できるのが確認できた。 以上まとめると、当初計画した2つの実験:(i) 抗体を使ったタンパク複合体精製とその質量分析。 (ii) iPONDによってタンパクを精製し、それを質量分析する。 は、それぞれの実験条件を最適化できた。よって「おおむね順調に進展している」と結論する。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPRやTALENの出現により様々な生物(病原微生物、植物、魚類、家畜など)において遺伝子破壊ができるようになった。しかし、相同組換えによる遺伝子改変、例えば、塩基配列に特定の点変異を相同組換えによって挿入することは、現在のところ困難である。この困難を乗越える方策の1つが、ニワトリDT40細胞の相同組換えの分子機構を解明することである。なぜならば、DT40細胞は、いかなる動物細胞に比べて、その相同組換え効率が3桁以上高いからである。この高い原因は未解明である。本研究課題の最終目標は、この未解明な分子機構を解明することである。 H25年度の研究によって、DT40細胞の相同組換えに関与する分子を、抗体およびiPOND法によって精製→質量分析による同定ができるようになった。しかし、質量分析によってたくさんの種類の分子が同定されてくるので、次に、たくさんの種類の分子のうちのどれが重要かを絞り込む作業が必要である。この絞り込みには、以下のように優先順位をつける: (1)カンプトテシン処理前に精製されるタンパク分子より、カンプトテシン処理後に精製度が増加するタンパクを優先 (2)野生型DT40と相同組換えの効率よく開始できないミュータントDT40細胞を比べる。カンプトテシン処理後において、ミュータントにおいて精製されるタンパク分子より、野生型においてその精製度が増加するタンパクを優先 以上の2つのカテゴリーを満足するタンパク分子が相同組換えに関与しているか否かを調べる。タンパク分子がDT40にのみ発現していれば、最優先で解析する。DT40のmRNA deep sequencingが実施済みである。解析手法は、そのタンパク分子をコードする遺伝子をDT40細胞で遺伝子破壊することによる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初平成25年度に予定していた「MRE11複合体を作る分子を精製する方法を最適化」が、実験計画の変更で、まだ開始できていないため。 カンプトテシン処理前に精製されるBRCA1複合体に関して、野生型DT40と相同組換えの効率よく開始できないミュータントDT40細胞を比べる。相同組換えの効率よく開始できないミュータントとして、CtIP遺伝子破壊株を選ぶ。CtIPは、BRCA1複合体に含まれ、相同組換えの開始に必須である。抗がん治療薬、カンプトテシンか、同様の損傷を作るPARP阻害剤を使って、それらの薬剤の処理前後で精製されるBRCA1複合体の構成因子を定量解析する。この実験によりDT40細胞特異的に機能している相同組換え因子の候補を絞り込む。
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