2013 Fiscal Year Research-status Report
サブユニット特異的部分同位体ラベル化による巨大膜蛋白質の構造解析
Project/Area Number |
25650016
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石森 浩一郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20192487)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 毅 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30343742)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | NMR / 安定同位体 / ナノディスク / シトクロム酸化酵素 / 呼吸鎖電子伝達系 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績の概要は以下のとおりである. バクテリア由来シトクロム酸化酵素(CcO)の発現精製系の構築 これまで本研究者らはウシのCcOを用いて,その電子供与体であるシトクロムcとの相互作用を分光学的手法で検討し,その電子伝達反応の制御機構を検討してきたが,ウシのCcOはサブユニット数13,分子量42万の二量体構造を有するため,CcO側の相互作用部位についての知見は極めて限られていた.特に,アミノ酸置換体が作成できないことは,相互作用を検討する上でCcO側から直接検討できないことを意味している.そこで本年度では,アミノ酸置換が可能で,サブユニット数が3個からなる分子量の小さな紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)のCcOの単離,精製を試みた.このCcOの発現系はイリノイ大学のGennis教授の研究室で作成された発現ベクターを利用した系で,現状では発現効率が低く,十分な収量のccOを得るまでには至っていないが,系統的な条件検討により,実験に支障のない量の試料が得られる発現精製系の目途を立てることができた. CcO-Cytc電子伝達複合体における相互作用の同定 これまでの本申請者らの結果を元に,CcO-Cytc電子伝達複合体における相互作用について,特に,電子伝達複合体の形成においてその安定化に寄与すると想定されるヘム近傍の相互作用に絞って研究を進めた.その結果,ヘム近傍のLys13の変異により,その相互作用部位が大きく変化することが確認され,このことはCcO側においては負電荷のアミノ酸が,電子伝達複合体の形成に大きな寄与をしていると想定された.以上の結果は,来年度に本格的に検討を開始するCcO側の変異体作成の上で,重要な知見となり,部位特異的アミノ酸置換を施す部位の絞り込みが可能となった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画項目に対する達成度は以下のとおりである. バクテリア由来シトクロム酸化酵素(CcO)の発現精製系の構築 R. sphaeroidesのCcOの単離,精製系の確立については,十分量の試料が供給できる状態ではないが,その改良の目途を立てることができ,来年度の本格的なアミノ酸置換による変異体CcOの作成は十分可能であることから,当初の目的はほぼ達成できたと考えられる.一方,サブユニット特異的安定同位体ラベルについては,さらに予備実験が必要である. CcO-Cytc電子伝達複合体における相互作用の同定 本年度の結果から,CcO側で電子伝達反応に重要な機能を果たしているアミノ酸残基の絞り込みが可能になったことから,当初の目的はほぼ達成できたと考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の実験を通して,バクテリア由来シトクロム酸化酵素(CcO)の発現精製系の構築についてはある程度の目途が立ったことから,平成26年度の実験計画において最も重点を置くべき点はサブユニット特異的安定同位体ラベル化であると考えられる.平成25年度の予備実験からは,平成26年度の本格的な実験開始に対して,まだ十分目途が立っているとは言い難い状況である.平成25年度に得られた実験結果を再検討し,新たな安定同位体導入法を検討することなどが必要と考えられる.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では紅色細菌由来のCcOを大量培養する予定であったが,より高い発現効率と精製度を目指して,当初予定したよりは条件検討に時間を十分かけて実験を遂行したため,培地が大量に必要な大量培養の実験が当初予定した回数よりも大幅に少なくなり,培地の購入量が当初見込みを大きく下回った.また,サブユニットラベル化の予備実験についても,安定同位体を使用しない「コールド」実験でその検討を行ったため,高価な安定同位体の購入が当初予定よりも少なかった.そのため,次年度使用額が生じた. 平成26年度は平成25年度で予定していた紅色細菌由来CcOの大量培養実験と,安定同位体を用いたサブユニットラベルの実験を本格的に開始するため,当初予定していたより大量の培地用試薬と安定同位体導入試薬が必要となる.これらの試薬の購入に充てる予定である.
|