2013 Fiscal Year Research-status Report
In-cell NMRによるリアノジン受容体のカルシウム放出制御機構の解明
Project/Area Number |
25650024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
真板 綾子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (60415106)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カルシウム恒常性 / リアノジン受容体 / In-cell NMR / サルコペニア |
Research Abstract |
本研究では、生細胞における蛋白質-蛋白質間の相互作用を原子レベルで解析できるIn-cell NMR法と従来の構造生物学的手法を相補的に用いて、FKBP12によるリアノジン受容体(RyR1)のチャネルの安定化機構を解明することを目的としている。RyR1は、筋小胞体膜上に存在するカルシウム放出チャネルで、加齢による活性酸素増加によって損傷し、安定化タンパクであるFKBP12が受容体から解離することによりカルシウムの漏出がおこると考えられている。さらに、近年、薬剤S107が、障害を受けた受容体とFKBP12の再結合を促し、カルシウムの漏出を防ぐことが明らかにされた。しかし、FKBP12が、如何にして、RyR1受容体を安定化し、細胞質へのカルシウム漏出を防いでいるのかに関する知見は未だに得られていない。そこで、まず初年度は筋芽細胞へ安定同位体標識したFKBP12を導入して、FKBP12とリアノジン受容体(RyR1)の細胞内での相互作用をIn-cell NMR法で検出することを目指した。しかし、細胞透過ペプチドを融合したタンパク質を筋芽細胞へ導入する方法の確立が難航し、平成26年度中に確立することができなかった。さらに、この研究課題を推進する上で必要な薬剤であるS107が、特許及び創薬開発研究のために入手不可能であった。そこで、当初の研究計画を変更し、リアノジン受容体と同様に、加齢によりカルシウム漏出がおこり、サルコペニアの原因となるミトコンドリアのカルシウム漏出に着目し、このカルシウムの取り込み制御に関わる複合体(カルシウム単輸送体UCP3とその制御因子HAX-1)の相互作用解析を行った。この結果、制御因子HAX-1のカルシウム結合と誘起される大きな構造変化を見出した。この構造変化によりUCP3と結合が可能となり、この結合を介してカルシウム取り込みが制御されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、細胞透過ペプチドを融合したタンパク質を筋芽細胞(C2C12)細胞へ導入する方法を確立し、In-cell NMR測定により、リアノジン受容体との相互作用を検出する計画であった。筋芽細胞への導入効果を評価するために、細胞透過ペプチドとGFP(蛍光タンパク質)の融合タンパク質が必要であったため、この試料の大量発現・精製を行った。この試料を用いて、筋芽細胞への効率のよい導入法の確立を目指したが、細胞の性質上の問題により期間内に確立することができなかった。また、この研究を行う上で重要な薬剤S107に関しても、開発者の薬剤開発の関係により入手することができなかった。これらの理由により、研究計画を変更せざるおえなくなり、筋小胞体と同じカルシウム漏出が老化によりおこるミトコンドリア内のカルシウム取り込みに関わる因子群の構造生物学的研究を行った。このように当初の計画どおりに研究を展開することができなかったが、変更した研究計画においては、研究を進めることができたため、「やや遅れている。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、筋芽細胞へ標的タンパク質を導入する方法の確立を目指す。初年度に使用した細胞透過ペプチドとは異なる細胞透過ペプチドを用いて、再度、筋芽細胞への導入効率の検討を行う。また、研究変更後に行ったミトコンドリア内へのカルシウム制御に関する複合体(HAX-1とUCP3複合体)に着目した構造生物学的研究に関しては、今年度、さらに詳細な相互作用の解析と細胞内での相互作用の検出を目指す。具体的には、前者に関しては、制御因子HAX-1のカルシウム単輸送体UCP3の相互作用面の同定を行う。また、この制御因子は、SERCA(カルシウムATPase)とその調節因子(ホスホランバン:PLN)と結合することにより、筋小胞体でのカルシウムの取り込みも制御することがわかっている。このSERCA-PLN複合体は、リアノジン受容体と共に筋小胞体内のカルシウムの恒常性に深く関与している。これより、HAX-1とSERCA-PLN複合体の相互作用にも着目し、NMR法による相互作用解析を行う。後者に関しては、細胞透過ペプチドとユビキチンとHAX-1のUCP3結合領域の融合タンパク質の発現系構築・大量精製系の確立を行い、In-cell NMR法による細胞内相互作用検出を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の研究進行の遅れや研究計画の変更に伴い、出張測定(NMR測定)・研究打ち合わせの回数が予定よりも少なくなってしまったため、88,252円が繰り越しとなった。 今年度も、消耗品として、細胞培養用関連、タンパク質の発現・精製関連、NMR測定のための安定同位体、DNA合成の購入に使用する。また、高磁場NMR装置の利用及び研究打ち合わせのために、京都大学工学研究科や医薬基盤研究所での測定のための出張費に使用する。さらに、研究成果を発表するために、国内・外の学会への参加費・出張費に使用する。また、繰越金に関しては、次年度のNMR測定にかかる費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)