2013 Fiscal Year Research-status Report
セレノシステイン導入によるレドックス制御関連酵素の反応性の向上と応用
Project/Area Number |
25650040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
金森 審子 東海大学, 工学部, 教授 (00261173)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 品質管理機構 / フォールディング / ジスルフィド結合 / セレノシステイン / レドックス / 酵素 / 酸化ストレス / グルタチオン |
Research Abstract |
細胞には、新たに生合成されたタンパク質が生理的機能を発揮できるような正しい立体構造(折り畳まれ方)を獲得するための制御システムとして「品質管理機構」がある。小胞体では、酸化還元酵素が関与するレドックス制御システムにより、ジスルフィド結合の形成を介してタンパク質のフォールディングが行われている。そのため、酸化還元酵素の活性部位と基質タンパク質に存在するシステイン残基間の反応性が制御の効率に大きく影響する。 本研究では、品質管理機構に寄与する酵素として、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ( Protein disulfide isomerase:PDI )、UDP-glucose:glycoprotein glucosyltransferase( UGGT )、Sep15に着目し、各酵素の反応機構や活性部位のアミノ酸配列について解析を進めている。PDIはタンパク質の、UGGTは糖タンパク質のフォールディングに携わる酵素であり、どちらも基質の立体構造の識別が機能に必須である。Sep15はUGGTとの特異的な複合体形成が報告されているセレノタンパク質であり、セレノシステインを含むよく保存された配列を有する。変異体を用いた解析によって、同配列中のセレノシステインがUGGTのフォールディングセンサー機能を促進させる上で重要なことが明らかになった。セレノシステインはシステインよりも反応性に富み、Sep15中のセレノシステインをシステインに変換するとUGGT活性の明確な低下が認められた。そこで、PDIの活性部位中に存在するシステインをセレノシステインに変換することにより、PDIの反応性・活性の上昇が期待できると考えた。現在、1分子中に2箇所存在する活性部位中のシステイン4残基を種々の組み合わせでセレノシステインに変換した変異体を調製し、変異がPDI活性に及ぼす影響の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年4月に理化学研究所から東海大学工学部へと異動になり、大きく環境が変化した。そのため、研究機器、試薬の購入等を含めたセットアップに一定の時間を要することを余儀なくされ、当初の計画目標に照らし合わせると現時点での達成度はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 現在調製中のセレノシステイン導入PDI変異体について、野生型のPDIと酵素活性を比較し、引き続き変異導入の効果を検討する。ところで、細胞が酸化ストレスを受けた際に小胞体のレドックス制御関連酵素が失活し、タンパク質のフォールディングに支障をきたすことがアルツハイマー病などの弧発性神経変性疾患の一因であると報告されている。本研究では、in vitro での反応性の検討に並行して、酸化ストレスに対する抵抗性に的を絞り、培養細胞へのセレノシステイン導入PDI変異体の遺伝子導入が細胞の生存率に及ぼす影響を解析する。 (2) 小胞体内でのレドックス酵素の活性化に不可欠なグルタチオン(L-γ-グルタミル-L-システニル-グリシン)のシステインをセレノシステインに変換した際の反応性の変化の解析と応用を以下のように進める。 (i) セレノグルタチオンの調製: まず、グルタチオンの生合成に携わるγ-グルタミルシステイン合成酵素(重鎖と軽鎖)とグルタチオン合成酵素を分泌型リコンビナントタンパク質として調製し、市販のセレノ-L-シスチンを出発物質としてセレノグルタチオンの合成を試みる。 (ii) グルタチオンへのセレノシステイン導入の影響の解析: グルタチオンとセレノグルタチオンの反応性を in vitro 及び in vivo で比較する。 (iii) PDIとグルタチオンへのセレノシステイン導入の相乗効果の解析: セレノシステイン導入PDI変異体とセレノグルタチオンを併用して、単独の場合よりも高い酸化ストレス抵抗性が得られるのかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画より経費の節約ができ、2,484円という小額でもあったために次年度に使用することとした。 当初の予定のとおり、主として試薬等の購入を目的とした物品費として使用する。
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