2013 Fiscal Year Research-status Report
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25650044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子個性 / 非平衡定常状態反応ネットワーク / 自由エネルギー地形 / 一分子計測 / システム生物学 |
Research Abstract |
分子の状態をネットワークという表現を用いて表し、分子の時系列データから、ネットワークを構成するノードがどれくらいの数存在し、どのノードとどのノードが強くつながっているかを客観的に評価する数学的な手法を開発した。時系列データは一次元の、非常に限定された情報であるため、それらの評価には恣意性が入り込む余地が高いことが知られている。我々は、考え得るすべてのネットワークにおいて、観測されたデータが保証していない情報がどれくらい組み込まれているかを定量化する新しい指標を考案し、その指標を最小化する(データに忠実、かつ最も客観的な)ネットワークを時系列データから抽出するアルゴリズムを開発することに成功した。この手法を一分子酵素反応の一分子計測データ(Englishら Nature Chem. Bio. 2006)の解析に適用した。その結果、反応する相手の基質分子の濃度に依存してネットワークが動的に変化し、分子個性の是非が基質濃度に依存すること、最小限の過剰情報量をもつネットワークを導入することによって、どのようなデータを取得すると正しいネットワークに最も近い答えを導き得るかに関する知見が得られることを新規に明らかにした。このほか、細胞膜上の上皮成長因子受容体(EGFR) )とアダプタータンパク質であるAsh/Grb2 (Morimatsuら PNAS, 2007)の分子認識過程のin vitro 再構成系の二値化された一分子時系列データから背後に存在する階層的な状態遷移ネットワークを抽出し、ネットワークの状態、経路に依存して自己相関の時間スケールが不均一であること、EGFRとAsh/Grb2が解離すると、辿ってきた経路の情報が“消去”されること、などを新規に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は離散的1分子時系列情報から抽出する反応ネットワーク理論の探求を掲げて、客観性の尺度を新たに導入し、観測されたデータ(統計分布)が保証しない過剰情報量を定義し、その情報量を最小にする反応ネットワークを導出するアルゴリズムを開発することに成功した(PRL2013)。また、当初、予定していた次年度の計画の一部である、分子記憶を保持する経路と忘れる経路の同定可能性の検討も細胞のシグナル伝達系であるEGFRとGrb2の結合過程のネットワークに対して検証することに成功した(JCP2013)。
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Strategy for Future Research Activity |
分子個性を論じるうえで必要となるのは構造間遷移に要する時間スケールの定量化である。そのため、反応ネットワークに内在する時間スケールを考慮に入れた自由エネルギー地形の階層構造を抽出するアルゴリズムを開発する。また、実データに基づいた、データ駆動型数理モデリングを行うために、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動1分子計測の光子列のデータに内在する実験誤差や有限個のデータ点から生じる数揺らぎの誤差を考慮にいれたネットワーク構築のアルゴリズムを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
任期が切れるポスドクおよび院生に対する謝金・人件費250,000円を予定していたが、ポスドクが転出できたこと、しかしながら、情報収集・研究成果発表のため、研究代表者、院生の旅費が予定した以上に掛かった。結果として、112,685円が次年度使用額として生じた。 次年度使用額112,685円は旅費に組み込むことを予定している。
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Research Products
(35 results)