2013 Fiscal Year Research-status Report
光学顕微鏡の照射・結像システムを空間光位相変調器により自在に操る
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25650046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船津 高志 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00190124)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 空間光位相変調 / 光学顕微鏡 / バイオイメージング |
Research Abstract |
本年度は、照射系に空間光位相変調器を組み込み、試料面に照明したいパターンのフーリエ変換像を空間光位相変調器に送り、所定の照明パターンを得ることができるか確認した。まず、空間光位相変調器に生成するパターンに関わらず、0次光(反射光)が試料面で焦点を結ぶことが問題となった。これを解決するために、空間光位相変調器に送るパターンにフレネルレンズのパターンを重ね合わせることにより結像面の高さをずらした。これにより0次光が試料面で焦点を結ぶことを回避した。 超解像蛍光顕微鏡法としてSTED顕微鏡法がある。この方式では、共焦点顕微鏡の光学系に観察用励起光のレーザー光と誘導放出用のレーザー光(STED ビーム)を同時に照射する。STEDビームは通常ドーナツ状になっていて蛍光の発生を抑制して真ん中の蛍光だけが検出されるためスポットは小さくなる。最適なSTEDビームの形状を検討した。ラゲールガウスビーム生成用の位相分布のパターン(円の中心から時計回りに回転するに従って位相が進み、一周すると位相が2πずれるパターン)とフレネルレンズのパターンを重ね合わせたパターンを空間光位相変調器で発生させた。このパターンは原点から渦巻き状に位相が変化するパターンとなった。 別の超解像法として構造化照明顕微鏡法(SIM)がある。これは縞状のパターンで試料を照明してモアレ縞を得る。この縞の角度を変えて複数枚撮影し、画像処理により超解像を得る。空間光位相変調器には機械的な作動は無いので振動無しで照明縞の切り替えが可能である。1秒ごとにパターンを変化させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず照射系に空間光位相変調器を組み込み、試料面に照明したいパターンのフーリエ変換像を空間光位相変調器に送り、所定の照明パターンを得ることを試みた。しかし、研究を開始した時点では、空間光位相変調器の製造元である浜松ホトニクスが提供するソフトウエアは、計算機合成ホログラム(CGH)の機能を備えておらず、フリーウエアーのソフトウエアを試したがうまく行かなかった。本年度の後半になって、浜松ホトニクスよりCGHのソフトウエア(βバージョンで非売品)を提供していただき、所定の照明パターンを得られるようになり、ようやく実験を開始することが出来た。また、このプログラムは、任意の焦点距離のフレネルレンズのパターンを生成することができるという長所を有していた。そのため、0次光(反射光)が焦点面で集光しないようにしたり、機械的な部品を加えることなく任意の倍率に変化させることが出来るという利点を有していた。このように研究の開始は遅れたが、STED顕微鏡法に必要なラゲールガウスビームを生成したり、構造化照明顕微鏡法のためのパターンの切り替えも出来たので、研究計画どおりに進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、結像系に空間光位相変調器を組み込み、以下の実証試験を行う。 2-1. 空間光位相変調器を用いて焦点位置を上下したり、倍率を変えられることを実証する。 空間光位相変調器を光路に組み込むことにより、機械的な移動を行うこと無く画像の焦点面を変えられるようにする。この光学顕微鏡システムを用いて、細胞の一部を加熱した場合に細胞内の温度分布がどのように変化し、ヒートショックに対する細胞応答(例えばmRNAのストレスグラニュールへの集積など)が起こるか検討する。IR-LEGOの光学システムを組み合わせ、細胞内の一点を赤外レーザーで照射しながら周囲の温度分布を3次元的にイメージングすることにより、細胞の局所加熱時の細胞内温度分布と細胞応答の関係を明らかにする。また、観察倍率を空間光位相変調器により変化させる方法についても検討する。 2-2. 生体試料の厚みに応じて最適なコントラストを得る位相差顕微鏡システムの開発。 位相差顕微鏡は、生体試料を通過した光と背景光を干渉させ、生体試料の屈折率を光の強度変化(コントラスト)に変換できる顕微鏡である。細胞のように通常の照明法(明視野照明)ではコントラストが得られない場合でも、標本を無染色・非侵襲的にコントラスト良く観察することができる。位相差顕微鏡の問題点は、背景と試料との境界部分にはハロと呼ばれるオーラ状の光が発生することである。対物レンズの位相リングを無くし、空間光位相変調器によって最適な位相リングのパターンを自在に作製することにより、通常の蛍光観察用の対物レンズでも最適なコントラストで位相差顕微鏡観察ができるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は照射用の光学系を組み立てたので部品が単純であり、予想よりも経費を削減することが出来た。次年度は結像系を組み立てるので光学フィルターや電動ステージなど高額な部品を必要とするので160万円以上の経費がかかると予想された。そのため、約22万円を留保した。 次年度に繰り越した約22万円を活用して、結像系に空間光位相変調器を組み込むために必要な光学部品を購入する。具体的には、空間光位相変調器を用いて焦点位置を上下したり、倍率を変える実験を行うために必要な光学部品(光学フィルターなど)を購入する。
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