2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25650057
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 俊彦 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 上級主任研究員 (70371028)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査電子顕微鏡 / レクチン / 窒化シリコン / バクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞やバクテリア、ウィルス、タンパク質の表面は、多種・多様な糖鎖により覆われている。こうした糖鎖は、異物の認識や排除、結合や感染等の、生物の本質的な機能発現に大きな役割を担っている。そのため、生物表面の糖鎖の状況を把握することは、生物学的にも重要な意味がある。 こうした目的のため本年度は、窒化シリコン薄膜上にレクチン溶液をスポット状に滴下し乾燥させた後に、溶液中の生物試料を封入し観察を行った。レクチン溶液としては、前年度に購入した8種類を使用し、生物試料には光合成細菌を用いた。液中の生物試料は、2枚の窒化シリコン薄膜の間に封入し、ホルダー内に密閉した後に走査電子顕微鏡内部に設置した。観察方法としては、低加速の走査電子線を上部の窒化シリコン薄膜に積層したタングステン層に入射させ、入射電子をタングステン層で吸収し電位変化を生じさせる。この電位変化を液中の試料を透過させ、下部の検出端子で検出し画像化する。これにより、液中の生物試料を染色処理や固定化なしに高いコントラストで観察することが可能となり、さらに電子線ダメージも完全に防ぐことが出来る。本年度は、タングステン層にバイアス電圧を加えることで以前よりも100倍の感度向上を達成し、より高コントラストの画像を得ることが可能となった。実験の結果、非染色・非固定の水溶液中のバクテリアを電子線ダメージ無く観察を行い、さらに表面構造も詳細に観察することが出来た。また、レクチンとバクテリア糖鎖とのインターラクションに関しても解析を進めており、より高分解能化のための検出システムと窒化シリコン薄膜の構成に関しても検討を進めている。これにより当初の目標である、バクテリアと糖鎖構造、さらにはレクチンとの相互作用の解析に極めて近づいたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、窒化シリコン薄膜上に複数のレクチンスポットを形成し、水溶液中のバクテリアサンプルを封入する専用の大気圧ホルダーを開発した。これにより、水溶液中の非染色・非固定の生物サンプルを生きたまま観察することが可能となった。さらに、金属薄膜層へのバイアス電圧の付加により、検出感度を大幅に引き上げ、高コントラスト化と高感度化を達成した。さらに、検出システムの高感度化や高速化により分解能は8nmへと向上し、細胞膜上のタンパク質複合体やレクチンと細胞膜との結合状況を分析可能なレベルに達している。こうした成果は、国際誌に2本の論文として掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、レクチンタンパク質とバクテリアや細胞の糖鎖とのインターラクションを水溶液中で直接観察し、その相互作用を解析する予定である。そのためには、分解能をより向上させる必要がある。その方法として、窒化シリコン薄膜を現在の50nm厚から20nm厚へと薄層化し、この上にレクチンをスポット状に塗布する。さらに、2層の窒化シリコン薄膜層の隙間を出来るだけ狭める目的で、薄膜層間にブリッジとなる支柱を形成し、この隙間を1μmで固定化する。これにより、信号強度の増強と分解能の向上を図る。さらに、水溶液中での観察では、ブラウン運動による観察サンプルの移動が問題となるため、撮像時間をこれまでの80秒から10秒程度に高速化する。これを達成するため、検出のアンプの高速化を図る。
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Research Products
(3 results)