2013 Fiscal Year Research-status Report
出芽ホヤ体細胞の加齢とそのリセットにおける核ミトコンドリア相互作用
Project/Area Number |
25650081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
川村 和夫 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (30136361)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 加齢 / 出芽 / ホヤ / ミトコンドリア / TFAM / Prohibitin2 / 呼吸鎖遺伝子群 / クロマチン免疫沈降 |
Research Abstract |
平成25年度は、ミサキマメイタボヤcDNAプールからミトコンドリア転写因子TFAMとミトコンドリア機能維持因子PHN2のホモログを単離し(PmTFAMとPmPHN2)、まず、ミトコンドリア遺伝子群(MRC)の発現調節との相関を調べた。 その結果、1. PmTFAMは、加齢によって発現量が低下し、出芽に伴い発現が増強した。2. PmPHN2はハウスキーピング遺伝子で、その発現量は常に高く、加齢個体で若干減少した。3. PmTFAMをノックダウンすると、MRCの発現が低下した。4. PmTFAM mRNAを細胞に導入すると、MRCの発現が増強した。5. 出芽特異的cytostatic factor TC14-3は、PmTFAM, PmPHN2およびMRCの発現を上昇させた。 次に、加齢と出芽、TC14-3、およびPmTFAMがミトコンドリアの呼吸機能に影響を与えるか否かを、蛍光色素Mitotrackerの取り込みによって調べた。その結果、1. 加齢に伴って、表皮の蛍光が著しく低下した。2. TC14-3は、Mitotrackerによる蛍光強度を上昇させた。3. PmTFAM mRNAは、Mitotrackerによる蛍光強度を上昇させた。 最後に、PmTFAMとPmPHN2のクロマチンヒストン修飾に対するTC14-3の効果を調べた。TC14-3は、PmTFAMのヒストンH3K27トリメチル化を弱く、PmPHN2のヒストン修飾を著しく減少させた。 これらの結果は、PmTFAMが加齢と出芽におけるMRCの発現を調節する主要な転写因子の一つであること、TC14-3はPmTFAM を介してMRCの遺伝子発現と呼吸機能を正に調節していることを示した。また、ヒストン修飾がMRCの発現調節に関与していることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はミサキマメイタボヤを用いて、1. ミトコンドリア遺伝子機能が加齢とともに低下し、出芽により再活性化する仕組みを明らかにすること、2. ヒストン修飾が、核やミトコンドリアの遺伝子機能に及ぼす効果を明らかにすること、3. 1と2より、加齢と「若返り」をめぐるミトコンドリアゲノムと核ゲノムの相関を統合的に解明することを最終目標としている。 平成25年度は、上記1を解明することを達成目標としていたが、幸い、核遺伝子のノックダウンとmRNA導入によるノックインにより、PmTFAMとMRCの正の遺伝子相関を証明することができた。Mitotrackerを用いることにより、当初の計画を超えて、MRC機能とTC14-3やPmTFAMの正の相関を証明することに成功した。上記2については、26年度の計画であったが、25年度中にクロマチン免疫沈降法(ChIP)に着手し、TC14-3がPmTFAMのヒストンH3K27トリメチル化を弱く、PmPHN2のヒストン修飾を強く抑制していることが判明した。これは、ミトコンドリアの遺伝子発現にエピジェネティックスが関与していることを強く示唆しており、当初の予想を超える成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
Cytostatic factor TC14-3は、Polycomb groupのPmEEDの発現を促進することが分かっている。PmEEDとPmTFAMを繋ぐ未知の因子Xがあるはずで、factor Xを発見することで、TC14-3―PmEED―Factor X―PmTFAM―MRC の図式を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に使用を予定していた消耗品費を、別途使い切り予算で支払ったため。 未使用額は、抗体購入など、26年度消耗品費の補助として、利用する。
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