2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞競合に関わる代謝ステータスとその制御因子の網羅的同定
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25650084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松田 七美 早稲田大学, ナノ理工学研究機構, 准教授 (70360641)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞競合 / エネルギー代謝 / Myc / p53 |
Research Abstract |
本研究では、多細胞生物の発生、再生、発がんなどの過程に関わる普遍的な生命現象として注目される新しい概念である、細胞競合に着目する。細胞競合とは、器官・組織において、増殖が速く生存能の高い細胞群(勝ち組)が、増殖が遅く細胞死によって排除される細胞群(負け組)に競合し、細胞の増殖、細胞死、周期、分化などが統合的に制御されることにより、一定の大きさと機能をもつ器官・組織が形成される現象である。これまでに申請者らは、ショウジョウバエの翅原基、及び培養細胞株を用いた独自の細胞競合のin vivo、及びin vitroモデルを確立し細胞競合関連因子として、癌遺伝子c-MycのショウジョウバエホモログdMycが報告してきた(松田 & Johnston, Proc Natl Acad Sci USA 104, 2007)。 申請者は、これらのモデルを用いた予備的解析から、勝ち組、あるいは負け組となるそれぞれの細胞群の運命決定に、dMycとp53が協調的に制御するエネルギー代謝変化が関わることを見いだした。しかしながら、その分子機構は殆ど不明である。 そこで本研究課題では、エネルギー代謝制御に関わり、勝ち組と負け組が互いを感知する際の分子実体とその分子機構とは何か?という疑問を解決するため、上記のモデルを応用し、遺伝学的手法とメタボローム、ATP動態可視化プローブ(ATeam)による解析を組み合わせ、勝ち組と負け組の細胞運命を逆転させる表現型を指標とした細胞競合制御因子の大規模な機能的スクリーニングを行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書の研究ステップ(1)「新規細胞競合制御因子の遺伝学的スクリーニング」に関しては、当初の計画と比較してやや遅れている。これまでに、小規模スケールのスクリーニングを行い、Mycに協調してエネルギー代謝制御を介し競合する細胞の特性を決定する候補因子として、がん抑制因子p53を見いだした。ひきつづき、スクリーニングを遂行する。 交付申請書の研究ステップ(2)「候補因子に対する評価: メタボローム解析、及びATP動態ライブイメージングによる代謝を介する新規細胞競合因子の同定」に関して、以下に報告する。 メタボローム解析については、概ね順調に研究が進展している。これまでに、細胞競合のin vitroモデル(間接共培養系モデル)において、勝ち組、あるいは負け組となる細胞として、高dMyc細胞、及び低dMyc細胞において、小規模スケールでメタボローム解析を行い、エネルギー代謝変化と細胞特性決定機構との関係を明らかにするための解析系を構築し、予備的な解析結果を得た。そこで、この解析系を用いて、競合する勝ち組、及び負け組細胞、及び非競合条件下における様々なコントロール細胞において、スケールアップしたメタボローム解析による細胞内の代謝中間体動態の網羅的解析を進めている。研究ステップ(1)で候補因子として見いだされたp53に関して、Mycとの協調制御により代謝を介して競合する細胞の特性が決定される仕組みについて解明することを目的として、メタボローム解析を行う。 ATP動態ライブイメージングに関しては、当初の計画と比較してやや遅れている。申請者は、連携研究者の京都大学・今村博臣博士との共同研究により、ショウジョウバエなど、体温が室温付近にあるモデル生物におけるATP動態解析のための低温作動性の高いプローブの開発を進めている。 全体の評価として、<区分>3を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究プロジェクト(1)「新規細胞競合制御因子の遺伝学的スクリーニング」に関しては、平成25年度に確立した解析系を用いて、平成26年度にひきつづき解析を進める。 研究プロジェクト(2)「候補因子に対する評価: メタボローム解析、及びATP動態ライブイメージングによる代謝を介する新規細胞競合因子の同定」に関しては、以下に述べるように遂行する。平成25年度に確立したメタボローム解析系を用いて、平成26年度にメタボローム解析による細胞内の代謝中間体動態の網羅的解析を進める。ATP動態ライブイメージング解析に関しては、平成25年度にひきつづき、平成26年度は、ショウジョウバエモデルのための低温作動性の改良型ATeamの開発に挑戦的に取り組み、代謝ステータスの可視化解析系を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金は、平成25年度において、研究プロジェクト(1)、及び(2)の予備検討を中心に遂行し、かかる費用を計上した結果として生じ、翌年度分として請求した。次年度(平成26年度)は、各プロジェクトをスケールアップし解析をひきつづき行うため、主として当該助成金は消耗品費として計上する。 次年度(平成26年度)は、研究プロジェクト(1)「新規細胞競合制御因子の遺伝学的スクリーニング」に関しては、ひきつづき解析を進める。研究プロジェクト(2)「候補因子に対する評価: メタボローム解析、及びATP動態ライブイメージングによる代謝を介する新規細胞競合因子の同定」に関しては、大規模なサンプル調製とメタボローム解析を進める。また、ATP動態ライブイメージング解析に関しては、低温作動性の改良型ATeamの開発に挑戦的に取り組み、ショウジョウバエの個体を用いたin vivo、及び培養細胞株を用いたin vitroの細胞競合解析系において、ATP動態をライブイメージングできる解析系を確立する。 研究計画(1)、及び(2)を遂行するため、平成25年度に繰越した次年度使用予定の研究費が平成26年度に請求する研究費に加算される必要がある。
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