2013 Fiscal Year Research-status Report
篩管内高分子を基盤とする全身性シグナル伝達機構の研究
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25650095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野田口 理孝 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (00647927)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 篩管 / 長距離移行 / 長距離シグナル伝達 / 接木 / 高速シークエンサー |
Research Abstract |
植物は篩管を介してmRNAやタンパク質などの高分子を長距離輸送し、それら高分子のもつ働きによって、離れた器官間で情報伝達を行い、周囲の環境に適応した個体発生を果たしている可能性がある。本研究は、この仮説にアプローチするため、長距離輸送される高分子の網羅同定と、輸送経路の可視化を実現することを目指す。 平成25年度は、申請書で記した計画にのっとり、植物の長距離移行性高分子の網羅的同定を目的に、実験系の確率と同定を行った。mRNAの同定には、モデル植物シロイヌナズナとタバコの異種間接木法と高速シークエンサーを利用した。高速シークエンサーによる解析では、はじめに組織のサンプリング方法を最適化した。cDNAライブラリーの解析の際は、今回接木に用いた異種植物に由来するmRNAを区別するために、リード長を100塩基以上の長さとすると良いことが分かった。以上を踏まえて、100分子種を超える長距離移行性のmRNAを同定した。タンパク質の同定には、ウリ科植物の異種間接木法を利用し、質量分析機を用いて篩管液を対象に解析を行い、これまでに篩管中に存在することが示唆されている複数のタンパク質を同定することに成功した。いずれの場合も、接木法を適用したことで、長距離移行性高分子についてはじめて疑いない情報を網羅的に得ることができた。得られた結果は、植物における全身性の情報伝達に関する今後の研究の基盤情報となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度における研究目標は、植物の長距離移行性高分子の網羅解析法を確立し、同定することと、それら高分子の可視化システムを構築することであった。 現在までに、移行性高分子、具体的にはmRNAとタンパク質について、それぞれ網羅同定を可能とする実験系を確率した。mRNAについては、モデル植物シロイヌナズナとタバコの異種間接木法を適用し、次世代シークエンサーによる解析の最適化を通して、長距離移行性のmRNAを網羅同定することに成功した。タンパク質については、ウリ科植物の異種間接木法を適用し、篩管液サンプルをMS解析することが有効であることを確認した。しかし、既知の代表的な篩管タンパク質の同定には成功したものの、網羅同定には多大な人的・物的コストが必要であることが判明し、本格的な解析には別に準備が必要と判断した。 高分子の可視化システムについては、予定していたmRNA、タンパク質それぞれの可視化システムの構築が終了し、近く植物に形質導入する予定である。 このように、平成25年度に計画していた一連の研究について、そのほとんどを達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、1年目で用意した長距離移行性高分子の網羅同定の解析手順に従って、様々な環境要因ごとにプロファイルを得る。緊急性を要する課題を優先し、高温, 乾燥, 高塩など地球温暖化に伴う一連のストレスと、それに関連してストレス応答時に働く植物ホルモン・アブシジン酸の投与の影響について調べる。一方、土壌栄養が貧しい地域の農業苦難を鑑み、窒素やリンなどの主要栄養素について欠乏時の応答様式を調べ、将来の技術革新へ繋げる。 長距離移行性高分子の可視化システムについては、1年目で作製したコンストラクトを植物に形質転換し、得られた形質転換体について胚軸接木法 (Notaguchi et al., 2009) と顕微技術を併活用して解析する。構成的な発色条件で対象高分子の移行経路を検討し、くわえて FRAP 蛍光回復法を用いてライブイメージング解析を行い、通過する組織ごとに対象高分子の移行速度を調べる。特に、1年目で同定したうちの一部の長距離移行性高分子に着目して解析を行い、長距離移行性高分子に関する生物学的な意義を問う。以上をモデル研究とし、1年目であるいは今後新たに同定される移行性高分子の円滑な解析を促進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一部の物品について、見積額よりも実際の購入額が安かったため。 次年度の物品費に含めて、有効に使用します。
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Research Products
(2 results)