ミジンコ類の有性生殖と個体群の多様性維持に関する研究

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25650123
• Research Institution: Asia University
• Principal Investigator: 大森 克徳 亜細亜大学, 経済学部, 教授 (20358534)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: タマミジンコ / オオミジンコ / 単為生殖 / 休眠卵

Outline of Annual Research Achievements

水道水の汚染事故が発生したために、飼育していたミジンコ類の全ての個体群が死滅した。そのため実験動物をオオミジンコから世代交代の速いタマミジンコに切り替えた。
本年度はタマミジンコの飼育条件および休眠卵の孵化条件を決定した。また単為生殖で継代したタマミジンコの産仔数および生残日数を世代間で比較し、世代間に顕著な差がないことを確認した。
５個体の単為生殖雌（第０世代：A0～E0）からそれぞれ同腹の仔を取って個別飼育し、それを第１世代（A1～E1）とした。それぞれの系列について１個体を選び、そこから同腹仔を取って第２世代とし、以下同様に単為生殖で第６世代まで、さらに２系列（AおよびC）では第１１世代まで継代した。そのうち第１、６、１１世代は、全個体について産仔数と生残日数を記録した。
第１世代の５つの系列の１回あたりの産仔数は13.3～17.9個体/回、標準偏差は1.94であった。これは同一系列の同一世代内の標準偏差と同程度であり、系列間に有意な差はなかった。この標準偏差は第６世代でも1.68であり、系列間で産仔能力に差は生じていないと結論した。産仔数の世代間の差についても、例えばA系列では、第１世代16.4個体/回、第６世代13.9個体/回、第１１世代13.8個体/回と大きな変動はなく、全ての系列の世代間で有意差がなかった。よって産仔能力については系列間、世代間ともに差は生じていないと結論した。
生残日数については、第１世代が3.4～4.3日、標準偏差0.37であったものが第６世代では1.7～4.6日、標準偏差1.23になり、世代を重ねることで系列間の差が拡大した。これはE系列において第６世代の生残日数が急減したためである。E系列のみが世代間で生残日数に有意な差があり、その他は有意差がなかった。生残日数については世代間で少数ながら差が生じる例があることがわかった。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

５月から６月にかけて維持していたミジンコが全て死亡する事故が発生した。原因究明に１ヶ月程度かかり、水道水の汚染が原因と判明した。水道水汚染は実験とは無関係の土木工事に起因すると疑われる。これにより個体群が絶えてしまい、全ての作業を１からやり直すこととなったが、スケジュールの遅れを考えるとオオミジンコより世代交代が速いタマミジンコに実験材料を切り替えることが必要と判断した。
当初予定では本年度中に単為生殖継代による産仔能力の変化と休眠卵孵化個体の産仔能力の比較の実験を終える予定であったが、後者については予備実験が終了したところで年度が終わった。実験材料をタマミジンコに変更したため、この遅れは致命的ではないと考えられる。
なお、幼弱ホルモンagonist反応性に関しては既に予備実験を済ませており、同系統でも個体ごとの反応性が大きく異なり、詳細に系統ごとの比較をするためには非常に多くの個体について実験を行う必要があることが判明した。今回の研究では不適とし、産仔数・生残日数の解析とゲノム多型性の解析に注力することとした。

Strategy for Future Research Activity

今後は休眠卵孵化個体を使って、産仔数と生残日数にどれだけの多様性があるかを飼育実験により確認し、並行して休眠卵から抽出したゲノムの解析を行う。
休眠卵ゲノムの多型性解析はSSR解析を予定しているが、本研究では多型性が生じる頻度が小さいことが予想される中で多型性を発見するのが目的であることを考えると、同じ研究費でより多くのサンプルを解析する方法が有利である。解析方法を再検討しつつ研究を進める予定である。

Causes of Carryover

ゲノム多型性解析の方法について再検討中である。場合によっては一部を業者に委託する方が安価に多くのサンプルを解析できる可能性がある。そのため、本年度購入予定であった機器の購入を後ろ倒しした。現在、業者に作業内容の調査を依頼し、見積もりを作成してもらっている。

Expenditure Plan for Carryover Budget

業者による見積もりが出たところで解析方法を決定し、迅速に解析を始める。