2014 Fiscal Year Research-status Report
津波による移動・分散が生物多様性を促進する可能性の検証
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25650135
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
小林 憲生 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00400036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 昌宏 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50221833)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 巨大津波 / 移動 / 分散 / 受動的 / 昆虫 / 大陸間 / 生物多様性 / バーコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】東日本大震災に伴う津波は千年に一度の大型の津波で、多量の漂着物が北米西海岸の各所にまで到達した。加えて、この漂着物に生物が付着し、生きたまま海を渡った可能性が充分にある。このことは、生物の大陸間移動(長距離移動)を促進させる重要な「生物地理的要因」の一つとして大型津波を捉える必要が有ることを意味する。しかし、津波が生物の移動・分散を促進させる可能性の検証研究は充分には行われていない。本研究課題では、海浜性昆虫を材料とし、今回の大型津波による、大陸を跨いだ「生物の長距離移動・分散」の具体例を探索することにある。 【実施内容】北米大陸、バンクーバー島の南部の海岸線で主に昆虫を対象とした生物相調査を行った(バンクーバー島南部太平洋側7地点、同島南部大陸側16地点、内陸部2地点、北米大陸バンクーバー市1地点、計26地点)。調査の結果、ガムシ4種類ゾウムシ1種類が確認されたが、日本で生息が確認されている種とは異なっていた。 【意義と重要性】生物の移動・分散は、生物多様性を促進する重要な要因である。この移動・分散を考えるとき、生物の通常の分散能力に依存する能動的な移動と、偶発的に生じる受動的な移動に分割することが可能である。これまで、生物が能動的に移動する現象を解明する研究が多く行われてきた。一方、受動的な移動・分散においては、渡り鳥に随伴する場合や、人的攪乱による分散が報告されている。また、津波などによる分散に関して、植物の繻子分散等に関しての報告は有るが、能動的に移動可能な生物における受動分散の意義や役割について一石を投じることにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カナダ バンクーバー島の23地点で海浜性の甲虫の採集を試み、ガムシやゾウムシの採集を行った。結果、ガムシ4種とゾウムシ1種を採集した。これらの種は、現在日本で確認されている種とは異なっており、大陸の生物相の基本的な情報を得た。津波による侵入種の個体数は、その初期段階では極めて少数であることが予想される為、検出できなかったことは予想の範囲内である。現時点で北米大陸側の生物相の情報を得たことは、順調に研究が進行していることの証と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
津波の影響による漂着物が大量に打ち上げられている地域の中で、平成25年、26年に調査できなかった地点の生物相調査を行う。同時に、採集した個体のDNA情報を得て、日本産種との比較を行う。現在の予定では、アメリカ合衆国アラスカ州の海岸付近の調査を行う予定だが、現地の状況等を勘案し、再度、カナダ バンクーバー島に赴き、昨年調査できなかったバンクーバー島北部に変更することも検討中である。
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Causes of Carryover |
購入した消耗品の割引等により、予定額と僅かな差異が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の追加購入等により、より詳細なデータ収集のために有効活用する。
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