2014 Fiscal Year Research-status Report
生涯の中で体制が大きく変化する動物にも個性はあるか
Project/Area Number |
25650149
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
粕谷 英一 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00161050)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 動物の個性 / 変態 / 行動シンドローム / 体制の変化 / 複雑な生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
生涯のうちに体制の大きな変化を経験する生物における、体制変化前後での個体の個性の変化や安定性を、変態という形での体制変化が起こる、トンボ類、カエル類、アシナガバチにおいて検討した。データの取得は動画による記録によって行なった。トンボ類では、シオカラトンボおよびアオモンイトトンボにおいて、幼虫および成虫での行動の記録とそれに基づく個性の特定を行なった。このうち、アオモンイトトンボにおいては、幼虫時の活発さと成虫羽化後の活発さとの間に統計的に有意な相関が認められた。フタモンアシナガバチにおいては幼虫時および成虫時の行動の記録を行なった。カエル類においては、ツチガエルとトノサマガエルで幼生期の動画記録を行ない、ツチガエルでは少数の個体について成体期の動画記録を行なった。過去の個性の研究で、”大胆さ”(boldness)と呼ばれている指標と単純な活動量の大小との関係を検討するため、複数の動きの指標を算出して検討するとともに、環境中に新奇な物体を登場させてそれへの反応を見る予備的実験を行い実験条件を検討した。移動量や移動時間の割合のような単純な活動性の指標とともに、活動量の差分など活動量の時間的変化の指標や循環統計の統計量を使った動きの方向性の特徴も検討した。単純な活動性の指標と活動量の時間的変化の指標の間には相関関係が認められないケースも見られた。 アオモンイトトンボでの結果を中心として日本生態学会大会において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象としている動物種の大部分で、体制変化前だけでなく体制変化後も動画に基づく行動の記録を行なうことができるようになった。動画記録からデータを抽出して、単純な活動性以外の、活動性の時間的な変化や運動の方向性の特徴等も、データの形式整備の一部を除いて、自動化して行えるようになった。 そして、アオモンイトトンボにおいては、成虫期と幼虫期の活発さのあいだに有意な相関があることを明らかにした。これにより本研究の目的の一部を達成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
アオモンイトトンボにおいて成虫期と幼虫期の行動の特徴間に有意な相関を見つけているので、この種に実験・調査の努力を集中していく。アオモンイトトンボについてはさらに計測個体を増やしてデータを補強するとともに、体制変化後の時間経過と行動の特徴の関係を、成虫期のデータを複数回とることにより、検討する。他種についても、体制変化前後の行動の特徴の関係のデータの取得と解析をすすめる。また、室内条件では行動の動画記録により自動化したデータの取得がほぼ可能になっているが、室内条件での行動の特徴が野外条件での特徴を反映していることを明らかにするため、野外での行動の特徴の測定を、複数のカメラでの動画記録により行なうことを試みる。
|