2013 Fiscal Year Research-status Report
野外高照度環境下における携帯型近赤外分光法を用いた前頭前野計測法の確立
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25650155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宮崎 良文 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 教授 (40126256)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 携帯型近赤外分光法 / 野外測定 / 前頭前野活動 |
Research Abstract |
中枢神経系活動の指標としては、室内実験において近赤外分光法(NIRS)がよく用いられるが、フィールド実験では使用法が確立されていない。本研究では、近年開発された持ち運びが可能な携帯型NIRSを用いて、野外における前頭前野活動計測条件を確立し、さらに森林セラピーが前頭前野活動に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。 成人男性12名(21.4±1.7歳)を対象に、森林環境と都市環境においてそれぞれ10分間座って景色を眺めた時の左右前頭前野における酸素化および脱酸素化ヘモグロビン濃度を測定した。測定に用いた携帯型NIRS(Pocket NIRS、株式会社ダイナセンス)は、前額部表面にプローブを貼り、LED光源から3つの異なる波長の近赤外光を照射し、体内部を透過・散乱し減衰した光を、フォトダイオード検出器で検出することにより、前頭前野における酸素化ヘモグロビン濃度、脱酸素化ヘモグロビン濃度の変化を非侵襲的に計測する装置である。プローブの装着位置は眉毛上部約2cmとし、プローブ装着後、内部に遮光用布を貼り付けた帽子を着用した。 その結果、森林部と都市部における各被験者の周波数とパワー値の関係について調べると、低周波帯域(0.030Hz以下)においてパワー値に差があることがわかった。高周波帯域(0.03Hz以上)では差は認められなかった。 低周波領域における森林部・都市部におけるパワー値に関して、総ヘモグロビン濃度においては、12名すべての被験者において、森林部の方が都市部と比較して低いことが明らかとなった。酸素化ヘモグロビン濃度においても、12名中11名で森林部の方が都市部よりも低い値を示した。森林部における酸素化ヘモグロビン濃度は都市部と比較し、42%となり有意に低いことが認められた。また、高周波帯域(0.03Hz以上)のパワー値については差異がなかった。脳酸素動態の周波数解析において、0.03Hz以下の低周波帯域が特に環境変化に反応すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画として、以下の計画を予定した。 a. 測定は7月~9月の好天時に実施する。野外高照度環境としては、都市部、直射日光下とし、比較実験としての野外低照度環境として、森林部内とする。b. 携帯型近赤外分光装置は、PocketNIRS Duo((株)ダイナセンス、浜松ホトニクス(株))、4台を用いる。c. 1泊2日の実験デザインとし、1日目、2日目の森林部ならびに都市部滞在時において、30分間の座観ならびに30分間の歩行(午後)を実施し、そのときの前頭前野活動を毎秒計測する。被験者を2群に分けて森林部、都市部にて同時計測し、被験者は1日目、2日目と別の実験地にて測定する。d. 被験者は20代、男性、10名とし、計4箇所、40名とする。e. 前額部センサー部位の遮光に関しては、遮光用の布地による受光センサーの直接のカバーと帽子による遮光を行っているが、今後は、①遮光用布地ならびに布地と前額部との高度密着性の検討、ならびに②帽子サイズの検討行い、外部照度との関係を定量的に明らかにする。さらに、本機器の装着による測定ストレス状態の把握も重要な課題として実施する。f. 眼球を介した脳内への外部光の侵入に関しては、脳内侵入光と外部照度との関係について、個人差を含め定量的に調べる。g. 脳内測定部位へのトータル外部侵入光と脳内への近赤外入光量との関係、ならびにトータル外部侵入光と受光センサー感度の関係に関する定量的なデータ蓄積を行う。 平成25年度の計画に関しては、予定通りの研究を実施し、さらに、森林部と都市部における各被験者の周波数とパワー値の関係について調べ、低周波帯域(0.030Hz以下)においてパワー値に差があることを明らかにした。本データは、これまでにない新たな知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、 (1)平成25年度に実施した実験を踏襲して、サンプル数を増やす。a. 測定は7月~9月の好天時に実施し、野外高照度環境としては、都市部、直射日光下とし、比較実験としての野外低照度環境として、森林部内とする。b. 携帯型近赤外分光装置は、PocketNIRS Duo((株)ダイナセンス、浜松ホトニクス(株))、4台を用いる。c. 1泊2日の実験デザインとし、1日目、2日目の森林部ならびに都市部滞在時において、30分間の座観ならびに30分間の歩行(午後)を実施し、そのときの前頭前野活動を毎秒計測する。被験者を2群に分けて森林部、都市部にて同時計測し、被験者は1日目、2日目と別の実験地にて測定する。d. 被験者は20代、男性、10名とし、計4箇所、40名とする。 (2)眼球を介した脳内への外部光の侵入に関して、侵入光と外部照度との関係について、個人差を含め定量的に調べる。眼球を介した外部光の侵入は個人毎に異なることがこれまでの予備実験から明らかになっているため、各実験地、実験時刻毎に異なる外部環境照度の連続計測を行い、脳内への侵入光との関係を明らかにすることに主眼を置く。さらに、平成25年度内の研究において、夏季高温環境下におけるフィールド実験においては、前額部の皮膚血流量が脳前頭前野に及ぼす影響を明らかにする必要があることが分かった。そこで、本携帯型近赤外分光法による前頭前野計測と前額部皮膚血流量計測を同時に実施し、本手法における前頭前野計測に前額部皮膚血流量計測がもたらす影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の使用分を若干多めに見積もったため、1869円の次年度使用額が生じた。 追加的に行う皮膚血流量が前頭前野活動計測に及ぼす影響を評価する経費として使用する。
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