2013 Fiscal Year Research-status Report
ダイズの二次通気組織形成を誘導する葉由来の長距離シグナルの探索
Project/Area Number |
25660003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ダイズ / 二次通気組織 / 葉由来シグナル / スクロース |
Research Abstract |
ダイズの二次通気組織の形成誘導には、胚軸部分が湛水状態になることと光存在下で葉由来のシグナルが胚軸に輸送されることの両方が必要であることが明らかになってきた。本課題では、葉由来シグナルを同定し、二次通気組織形成の誘導調節機構を解明することを目的としている。平成25年度は、「葉による二次通気組織形成の制御に関する品種間差を用いた評価」と「葉由来のシグナルの探索」を実施した。 これまでの解析からダイズの品種アソアオガリは品種エンレイと比べ、二次通気組織を早く発達させることを明らかにしている。アソアオガリとエンレイを用いた接木実験を行うことで、アソアオガリの形質が葉と胚軸のどちらに由来するのかを調査した。その結果、アソアオガリの二次通気組織の形成は胚軸に制御されることが示唆された。 二次通気組織の形成誘導には、光存在下で葉由来のシグナルが胚軸に輸送されることが必要であることから、光合成産物であるスクロースなどの糖がシグナルである可能性が考えられた。そこで、密閉したコンテナ内の二酸化炭素を除去して、光存在下でダイズ幼植物体を湛水処理したところ、二次通気組織の形成は阻害されたことから、光合成が重要であるという可能性が高まった。続いて、ダイズの胚軸を切断して、切断面よりスクロースなどの数種類の糖を処理した結果、スクロースを与えたときに二次通気組織の形成が回復することが明らかになった。これらの結果より、葉由来のシグナルの少なくとも1つは光合成産物であるスクロースであることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「葉による二次通気組織形成の制御に関する品種間差を用いた評価」については、計画通り進めることができた。アソアオガリとエンレイを用いた接木実験の結果、アソアオガリがエンレイと比べて二次通気組織を早く発達させるという形質を制御しているのは、胚軸そのものであり、葉由来シグナルが関与していないことが示唆された。 「葉由来のシグナルの探索」については、当初、葉の網羅的遺伝子発現解析による葉由来シグナル生成関連遺伝子を探索する予定であったが、二酸化炭素除去実験や切断した胚軸へのスクロース投与実験によって葉由来のシグナルの一つは光合成産物であるスクロースであることが明らかになったことから、葉の網羅的遺伝子発現解析は中断した。その代わりに、スクロースが葉由来のシグナルであることを確認するための実験を実施した。この発見により本研究課題は概ね計画通り進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
スクロースが葉由来のシグナルであることを確認するために、二次通気組織が形成される条件である湛水・明条件下で、胚軸におけるスクロース濃度が上がるのかどうかを調査する。さらに、湛水処理を行ったダイズの胚軸を水面の上下で回収して、スクロース濃度を測定することで、スクロース濃度の上昇が湛水した胚軸に特異的であるかどうかも調査する。また、スクロース以外に葉由来シグナルが存在するのかどうかを明らかにするために、他のシグナル物質の探索も進める。二次通気組織は、湛水条件下の胚軸の柔細胞が分化することにより形成される。そのため、葉から輸送されたスクロースが二次通気組織形成に関与するためには、湛水条件下特異的にスクロースが篩部から柔細胞へ輸送される、または篩部で他のシグナルを誘導するという可能性が考えられる。そこでこれらの可能性を検証するために、胚軸の師部における遺伝子発現解析を進める。これらの解析から、葉由来シグナルを同定することによって、ダイズの二次通気組織形成の誘導調節機構が解明できると期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施予定であった遺伝子発現解析の一部を、平成26年度に行う予定である。そのために、遺伝子発現解析に使用する消耗品を購入する経費を次年度使用額として残すことにした。 胚軸の切断面からスクロースを投与することによって、胚軸の師部において発現が変動する遺伝子を明らかにするために、レーザーマイクロダイセクションで師部を単離して、遺伝子発現解析を行う。これらの遺伝子発現解析に次年度使用額によって購入した試薬を用いる。また、ダイズの胚軸において湛水・明条件(二次通気組織の形成条件)特異的にスクロース濃度が上がるのかどうかを調査する。さらに、スクロース以外の葉由来シグナルの探索も進める。これらの実験に次年度の経費を使用する計画である。
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Research Products
(1 results)