2013 Fiscal Year Research-status Report
種子繁殖型イチゴ育種に向けた種子発芽制御因子のマッピングとマーカー開発
Project/Area Number |
25660024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
掛田 克行 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (50221867)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 種子繁殖型イチゴ / 発芽 / QTL / DNAマーカー |
Research Abstract |
イチゴの種苗生産において、ランナーを利用した栄養繁殖法は親株のウイルスフリー化や子株の増殖に多大な労力を必要とする。一方、イチゴに感染する主要なウイルスや病原菌は種子伝染しないため、種子繁殖型品種を利用した新たな生産システムの開発が期待されている。種子繁殖型イチゴ品種の実用化には、種子発芽率の高さや安定性、発芽揃いが重要であるが、このようなイチゴの種子発芽特性に関する遺伝的な研究は進んでいない。本研究では、イチゴの種子発芽に関する遺伝要因の解明を目的として、自殖分離集団を用いた種子発芽諸形質の分離パターンの解析ならびにQTL(量的形質遺伝子座)解析を行った。 育種中間母本「0212921」の自殖第一代(S1)分離集団(C系統)の自殖種子を用いて、播種1~5週間後までの種子発芽率、発芽所要日数、発芽速度指標などの個体頻度分布を調査した。その結果、これらの形質値にはいずれも分離集団内の個体間で連続的な変異が認められ、イチゴの種子発芽形質は量的形質であることが示された。つぎに、これらの分離個体の形質値とSSRマーカーデータを用いて、イチゴの種子発芽形質に関するQTL解析を行った。その結果、複数の種子発芽指標に共通して、連鎖群LG7Aにおいて有意なQTLが検出された。このことから、染色体7A上にイチゴの種子発芽に関わる主要な遺伝因子の存在が予測された。また、検出されたQTL近傍のDNAマーカー配列を、近縁二倍体野生種(Fragaria vesca)のゲノム配列上に位置づけることで、さらに詳細なQTLマッピングを行う上で有用な情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究目的」は、「イチゴの種子発芽を制御する遺伝因子を同定し、種子繁殖型品種の育種に有用なDNAマーカーを開発すること」である。この目的達成のため、(1)イチゴのマーカー情報が整備された分離集団(C系統)約150個体から自家交配により自殖種子を獲得し、(2)各個体の種子発芽率、発芽所要日数などの種子発芽諸形質の調査を行い、(3)これらの形質値とマーカーの分離データからQTLマッピングを実施した。以上、平成25年度に計画した実験はすべて実行することができた。 イチゴはヘテロ性が高いため、当初、分離集団を用いたQTL解析から再現性のあるマッピングデータが得られるかどうかが一つの課題と考えていた。この点に関して、2回の反復実験において、予想以上に再現性の高い有意なQTLが検出されたことは、期待以上の成果が達成されたと評価している。また、種々の種子発芽形質の解析の結果、「発芽速度指標」が発芽率と発芽所要日数の双方をよく反映し、種子繁殖型イチゴ品種の種子発芽特性の選抜に最も有用な指標であることを示した点も育種的に重要な成果と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでいるため、当初の計画に沿って以下の実験を行う。 (1)種子発芽形質の分子遺伝学的解剖:有意なQTLの座乗領域の近傍に新たなDNAマーカーを作成し、当該QTL領域の絞り込みを行う。これらのマッピングを通じて、とくに効果の大きいQTLに密接に連鎖するDNAマーカーを開発する。 (2)発芽生理解析:種子発芽形質に関連するQTLの生理的作用を明らかにするため、C系統から早発芽性および晩発芽性を示す個体を選抜し、それらの自殖種子を用いて、種子休眠性、環境反応性、植物ホルモン反応性、種子の形態・内部構造などに関する比較・検討を行う。 (3)新規分離集団の調査、自殖固定系統の育成:当初計画したもう一つの分離集団(品種間F1系統)については、個体の遺伝的背景が不揃いであること、マーカー型が未調査であること等の理由から、計画を変更してQTL解析は行わないこととする。一方、上記(2)の選抜個体の自殖種子から後代系統を育成し、それらの個体の自殖種子の種子発芽形質を調査する。これらの選抜後代個体のマーカー型を決定し、種子発芽関連QTLの詳細な絞り込みを行うとともに、新たな自殖固定親系統の育成に利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に研究補助(人件費)や受託解析費(その他)を使用しなかったため、当初予算の8割程度の執行額となった。これにより、H25年度の計画に支障が生じたことはない。 H26年度は、新たにDNAマーカーの開発や発芽生理解析などで使用する試薬代が増えることが見込まれるので、これらに繰り越した経費を充てる予定である。
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