2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25660041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
仲井 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60302907)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メチル化カテキン / 茶 / 天敵微生物 / 生体防御機構 / チャノコカクモンハマキ / リンゴコカクモンハマキ / 国際研究者交流 / スペイン |
Research Abstract |
茶葉には、メチル化カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate : EGCG)が乾燥重量の約5-8%含まれている。メチル化カテキンは、ポリフェノールの一種で酸化防止作用があり、特にチロシナーゼ阻害剤として働くことが知られている。チロシナーゼは、昆虫の生体防御機構を担っているフェノール酸化酵素(Phenol Oxidase: PO)の活性化カスケードにおいて重要な役割を果たす酵素であり、茶葉に含まれるメチル化カテキン(チロシナーゼ阻害剤)を摂取した昆虫は、ウイルスなどの天敵微生物に対する感受性が増大することが予想される。本研究は、茶がEGCGを獲得し天敵微生物に対する感受性を高めることで昆虫からの食害を防いでいる、という仮説を検証した。 本研究では、茶を常食するチャノコカクモンハマキと、近縁種であるが茶を宿主植物としないリンゴコカクモンハマキの2種の昆虫を用い、EGCGを加えた条件で両種の重要な天敵である核多角体病ウイルス(NPV)に対する感受性を調査した。その結果、チャノコカクモンハマキではEGCGを添加してもNPVに対する感染致死率に差はなかったが、リンゴコカクモンハマキでは、EGCGの添加濃度に依存して感染致死率が増大した。一方、両種ともEGCG添加の有無による幼虫期間や蛹重に有意差はなかった。このことから、EGCGが昆虫のウイルス感受性を増大することが示された。チャノコカクモンハマキは、EGCGによる感受性増大を回避する何らかの機構を持つため、宿主植物として茶に適応している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チャノコカクモンハマキとリンゴコカクモンハマキ幼虫を用いた生物検定により、メチル化カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCG)と核多角体病ウイルスを同時に接種する実験系を確立することができた。その結果、リンゴコカクモンハマキ幼虫ではEGCGの添加濃度に依存して感受性が増大する事が示されたが、チャノコカクモンハマキではその傾向は見られなかった。すなわち、本研究における仮説を支持する結果が得られた。一方、EGCGの添加によって両種とも幼虫期間や蛹重に有意差はなかった。このことから、EGCGの摂取は、両種の適応度に影響しないことが示された。また、海外研究協力者であるバレンシア大学のSalva Herrero博士を招聘し、生体防御関連酵素活性の測定方法について技術的な情報交換ができた。そのため、平成25年度に計画していた生物検定を行うことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、材料となる昆虫種の飼育法も安定し、実験手法についても確立できたため、今後はさらに反復を重ね、さらにEGCGの接種濃度等も検討して生物検定を繰り返し実験データの完成を目指す。また、この結果を踏まえて、EGCG感染増大のメカニズムについての研究を進めるとともに、茶葉とリンゴ葉を用いて両種を飼育する実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も継続する課題であるため次年度使用額を残した。次年度の研究計画にある茶葉を用いた試験において、茶粉末を購入する予定であったが、茶の収穫が5月頃であるため、茶粉末購入に必要な金額を確保する必要があった。 次年度使用額を用いて、茶粉末等を購入する計画である。
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