2015 Fiscal Year Annual Research Report
酵母のアセチル化酵素Mpr1による細胞内抗酸化系の新しい制御機構
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25660058
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 博史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50275088)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | N-アセチルトランスフェラーゼMpr1 / 酵母 / アルギニン合成 / 酸化ストレス耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、Mpr1の細胞内における基質と生成物の同定、及び触媒反応を含め、Mpr1依存的なArg合成経路を明らかにすることを試みた。Argは、酵母細胞内ではグルタミン酸(Glu)を出発物質としてArg2(N-Ac Gluシンターゼ)、Arg6(N-Ac Gluキナーゼ)、Arg5(N-Ac GluPレダクターゼ)とその後数段階の酵素反応により合成される。Mpr1のArg合成経路における生成物がN-Ac GluもしくはN-Ac GluPのどちらであるかを明らかにするため、Arg6活性が野生型株の1/1,000に低下したarg6株に、Mpr1の過剰発現プラスミドを導入し、Arg非含有培地における生育を評価した。その結果、arg6株はArg非含有培地において著しく生育が悪化したが、Mpr1を過剰発現させてもこの生育悪化は改善されなかった。Mpr1がArg6の生成物であるN-Ac GluPを供給する場合、Mpr1の過剰発現によってarg6株の生育悪化は改善されると考えられる。従って、Mpr1はN-Ac Gluの供給によりArg合成に寄与することが示唆された。しかし、Mpr1のGluに対するN-アセチル化活性の測定を行ったところ、活性は検出できなかった。そこで、Arg代謝に関連するアミノ酸や、既知の基質であるAZCと構造の類似するアミノ酸を用いて基質のスクリーニングを行った。その結果、興味深いことにpH8.0-9.0の条件においてMpr1のプロリン(Pro)に対するN-アセチル化活性を検出した。また、LC-MSを用いた解析により、Mpr1はin vitroにおいてProをN-アセチル化することによりN-アセチルプロリン(N-Ac Pro)を合成することが明らかになった。以上の結果から、Mpr1依存的に合成されたN-Ac ProがArg合成の中間代謝物質となる可能性、Arg代謝酵素の制御分子として機能する可能性が考えられた。現在、N-Ac ProのArg代謝経路における機能の解析を含め、Mpr1依存的なArg合成経路の全容解明に取り組んでいる。
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Research Products
(6 results)