2013 Fiscal Year Research-status Report
血栓形成と止血剤の研究を支援する血液凝固酵素の高反応性基質ペプチド
Project/Area Number |
25660078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
人見 清隆 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (00202276)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酵素 / 血液凝固 / 基質ペプチド |
Research Abstract |
血液凝固は様々なステップを踏んで最終的にフィブリンが共有結合レベルでの架橋化重合を行うことで達成される。この最終段階を担うのが酵素反応であるトランスグルタミナーゼによる架橋化で、因子はFactor XIIIと称される。研究代表者はこれまで、この酵素の高反応で特異的な基質配列様ペプチドを確立しており、本研究課題ではこの配列を活用した血液凝固の調節により、血栓形成等の血液凝固研究の支援に有用な分子・物質の作出を試みようとしている。平成25年度は、このペプチドの反応性(特異性)についての解析をさらに進めると共に、Factor XIIIの体内発現パターン(マウス)を明らかにすることに加えて、モデル生物(メダカ)についての相当する酵素についても解析した。 高反応性基質ペプチドはその特性から本酵素の阻害剤として、血栓形成の抑制効果を期待しており、そのためまず体内に存在するほかの架橋化酵素との特異性を明らかにする必要があった。酵素の体内発現パターンについては、血液凝固が生じる際に血管以外のところでの酵素反応があるかどうかの知見が必要で、in situ hybridizationを行ったところ、特に高い発現は見られないことがわかった。 モデル生物については、この酵素の性質を生化学的な解析で明らかにした上で、この酵素活性が抑制された生物を作出することをめざしたものである。平成25年度は生化学的解析を完了し、遺伝子変異個体を作製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は主に、血液凝固を担う酵素であるFactor XIIIの組織分布を明らかにすることに加え、高反応性基質ペプチドを用いた活用法を模索した。前者については特に明確な組織的な偏在は見られないことを確認した。後者についてはペプチドの活性測定での利用が新規な他のアイソザイムとの反応性がないことを調べたが、活性測定以外に新たな活用法を見出せなかった。 さらに、後に述べるように血液凝固酵素のモデル生物(メダカ)の該当する酵素の生化学的解析を進めつつ、欠損個体の作製もすすめており変異個体を作製中である。動物内に血液凝固調節としてペプチドを導入する試みについては、投与後のペプチドの安定化のための修飾反応を模索している状態にとどまっていることもあり、上のとおり評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、血液凝固酵素の基質ペプチドの活用についてこれまで行えなかった凝固反応に対する効果の検討を試験管レベル、動物レベルで行いたい。また当初の26年度計画にあげた、高反応性基質配列を用いた材料の開発にも挑戦したい。また酵素活性測定系を用いての細胞外マトリクスや血液成分、血液凝固に影響を与える物質の検索を行う。 研究での新たな方策として、本年度、マウス以外のモデル生物を対象にした研究も考案している。研究計画には当初なかったものの、近年創薬研究分野で用いられ始めたメダカを対象にする。メダカには、ヒトの血液凝固に関わる酵素ときわめて類似した酵素があることを見出しており、本年度はその組換え蛋白質を作製して生化学的な性質を明らかにしたうえで、遺伝子変異個体を作製することも試みている。すでに25年度より作製を開始しているが、こうした個体の確立により、血液凝固疾患モデルとしての有用性についても検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画内で、高反応性基質ペプチドを阻害剤として動物に投与する実験方法を検討していた。しかしペプチドが動物に投与すると不安定であることから、化学修飾を前もって行っていく必要が判明し、動物実験とその解析ができなかった。現在そのデザインを検討している段階であるが、そのため予定していた必要な経費が未使用であった。また高反応性基質ペプチドを用いた血液凝固をより促進する素材の開発のための予備実験を十分に行えなかったので、その分を次年度に行うこととした。 次年度は投与後の安定化のためのペプチドの修飾も検討すると共に、モデル動物への投与も含めて計画している。また、次年度はモデル生物(メダカ)の変異個体の作製が見込まれ、これをマウス実験と共に行うこととした。両方の生育維持には経費がかかる予定で、同様の目的で実験を遂行する予定である。 また、当初より予定していた高反応性基質ペプチドを活用した血液凝固を促進できる素材の開発を目指した予備実験(基質ペプチドの融合蛋白質の作製等)を、26年度に行うととした。
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