2015 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ線虫が巨木を枯らすのか―遺伝学的手法を用いたマツ材線虫病病原メカニズムの解明
Project/Area Number |
25660121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 祐子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80452283)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マツノザイセンチュウ / 組み換え近交系 / RADシークエンス / 連鎖解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、流行性森林病害であるマツ材線虫病の病原機構解明を目指して、病原体マツノザイセンチュウの病原性規定因子に古典遺伝学的アプローチで迫ったものである。表現型の大きく異なる近交系2株から構築した17株のマツノザイセンチュウの組換え近交系(RIL)セットを実験材料として、病原性関連形質の表現型分離試験を行った。その結果、増殖力(菌叢上での個体群成長率)及び病原力(宿主樹木を枯死させる能力)はRILにおいて連続的に変化しており、多数の遺伝子群によって制御される量的形質であることが示唆された。一方、便乗昆虫への便乗力は離散的な分布を示し、一つもしくは少数の遺伝子支配をうける量的形質であることが示唆された。増殖力をさらに細分化し、産卵数、孵化率、世代時間を評価したところ、産卵数の寄与が最も大きいことが明らかになった。 続いて、上記19株より抽出したゲノムDNAをRADシークエンスに供し、ゲノムワイドな遺伝子型解析を行った結果、全株で計約3,000万リード(各株からの平均約150万リード)、1,066の遺伝子領域が特定された。検出された25,813座位の一塩基多系(SNP)のうち全株でdepthが25以上あり、かつヘテロを含まない2,428座位のSNPの分離パターンは81あった。上記3形質との連鎖解析及び遺伝子アノテーションの結果、病原力及び増殖力と相関の認められたパターン11からシグナルペプチダーゼ遺伝子、便乗力と相関の認められたパターン35からDaf-1遺伝子、病原力と相関の認められたパターン2からは外皮形成関連遺伝子及び抗酸化機能をもつ遺伝子等が候補として検出された。 また、マツノザイセンチュウが病原性を発揮する上で、宿主防御反応に耐えるための酸化ストレス耐性は重要であると考えられる。その決定因子を精査したところ、過酸化水素分解能(カタラーゼ活性等)よりも物理的防壁としての角皮微細構造(中間層の厚さ)に病原力との相関が認められた。
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Research Products
(6 results)